第429話 勇者達と「お仕事」・春風、昇格?
エルードで暮らす「ハンター」達には、それぞれ実力に応じた「階級」が与えられていて、様々な仕事をこなし、特定の条件を満たした時、はじめて上の階級へと上がっていく。
それは、一番下である「銅の3級」から始まって、そこから「銅の2級」「銅の1級」「銀の3級」「銀の2級」「銀の1級」「金の3級」「金の2級」「金の1級」の順に上がっていき、最終的には最高位の階級である「白金級」となっていく。
そして、多くのハンターはその「白金級」を目指して、日々努力しているのだ。
そして今、春風もギルド総本部からの指名依頼である「パープル・スライム5匹の討伐」を終えて、今の自身の階級である「銅の3級」からの昇格が認められたのだが、
「……は? 銀の3級?」
目の前の男性職員から受け取ったライセンスには、確かに「銀の3級」と記されていたので、春風は「訳がわからん!」と言わんばかりばかりに目をゴシゴシと擦ると、再びライセンスをジッと見つめたが、
(見間違いじゃ……ない!?)
そこにはやはり「銀の3級」と記されていたので、
「あの……すみません」
と、春風は戸惑う気持ちをどうにか落ち着かせながら、目の前の男性職員にそう声をかけた。
それを聞いて、
「は、はい、何でしょうか?」
と、男性職員がタラリと汗を流しながらそう返事すると、
「これ、間違ってます。昇格したのなら、自分は『銅の2級』だと思うのですが……」
と、春風はソッと自身のライセンスを見せながらそう言った。
そんな春風の言葉が聞こえたのか、
「春風、どうしたの……?」
と、気になったレナが春風に声をかけ、その際チラッと春風のライセンスを見ると、
「はぁ!?」
と、驚きの声をあげたので、
「え、兄貴にレナさん、どうしたの!?」
と、驚いたディック、そしてフィオナも春風とレナに近づき、レナと同じようにチラッと春風のライセンスを見ると、
「あ、ああそういうことか!」
と、ディックは大きく目を見開きながらも納得の表情を浮かべた。勿論、フィオナもである。
すると、
「何々、どうかしたのぉ?」
と、今度はキャロラインまでもが春風達に近づいて、
「……ん?」
と、レナ達と同じように春風のライセンスを見ると、
「あらぁ! 凄いじゃなぁい!」
と、パァッと表情を明るくしながらそう言い、そんなキャロラインに続くように、歩夢達が「何だ何だ?」と首を傾げ出したので、
「あ、あのぉ……えっと……間違いとかでは……」
と、目の前の状況に男性職員はどうにか春風の質問に答えようとした。
その時だ。
「いいえ、間違いではありませんよ」
と、聞き覚えのある男性の声がしたので、春風達がすぐにその声がした方へと振り向くと、
「……フレデリック総本部長さん」
そこにはギルド総本部長のフレデリックがいて、彼の隣にはヴァレリーとタイラー、そしてアデレードの姿もあった。
「皆様。本日もお仕事、お疲れ様でした」
と、フレデリックは穏やかな笑みを浮かべてそう言いながら、ヴァレリー達と共にゆっくりと春風達のもとへと歩き出した。
そして、春風の目の前に着いて、
「特に春風さん。パープル・スライムとの戦闘、お疲れ様でした。いやぁ、まさか融合体までも倒してしまうとは、流石ですね」
と、フレデリックは更に笑顔でそう言ったが、反対に春風はフレデリックに対して警戒するように、
「……その言い方ですと、まるで実際に見ていたみたいですね」
と、目を細くしながら、尋ねるようにそう言ったので、
『え? え?』
と、キャロライン1人を除いて、レナ達が戸惑いの表情を浮かべると、
「『みたい』も何も……最初から全て見ていましたから」
と、フレデリックは穏やかな笑みを浮かべながらそう答え、その後すぐにフレデリックはズボンのポケットから何かを取り出した。
それは、シンプルな装飾が施された手のひらサイズの水晶玉のようで、
「あら、それって……」
と、キャロラインが目を見開くと、フレデリックは「ふふ」と小さく笑って、その手のひらサイズの水晶玉をグッと握った。
次の瞬間、水晶玉はピカッと光り、春風達の目の前に大きなスクリーンが現れた。
突然現れたそのスクリーンに、
『な、何何何!?』
と、レナや歩夢達が驚く中、
(げ! こ、これは……)
と、春風が心の中でそう呟きながら、目の前に現れたスクリーンを見ると、そこには、春風が1人で合体パープル・スライムを相手に戦っている部分が映し出されていたので、
「はぁ……」
と、春風は諦めたかのように溜め息を吐くと、
「これ、撮ったのはあなたですか? グレッグさん」
と、チラッとグレッグを見ながらそう尋ねた。
その質問に対して、グレッグは「う……」と呻くと、先ほどの春風と同じように「ハァ」と溜め息を吐いて、
「ああ、その通りだよ春風君」
と、そういうと、グレッグもフレデリックと同じようにズボンのポケットに手を入れて、そこからフレデリックが持っているものと同じように、手のひらサイズの小さな水晶玉を取り出したので、それを見た歩夢達が、
『あ、それって……』
レナ達が大きく目を見開いていると、
「これは目の前で起きた出来事を映像として記録する為の魔導具だ。当然、記録したものはいつでも見ることが出来るし、映像したものを他の魔導具に送ることも出来る」
と、グレッグはその水晶玉についてそう説明した。
その説明を聞いて、
「なるほど。ということはフレデリック総本部長さん」
と、春風がフレデリックにそう話しかけたので、
「ん? どうかしましたか?」
と、フレデリックがそう返事すると、
「俺が合体したパープル・スライムを倒したの、知ってたんですね?」
と、春風がそう尋ねてきたので、その答えにフレデリックは「ええ」と頷くと、
「私達だけではありません。この場にいる全ての職員さんやハンターさん、そして都市の住人さん達も、この映像見てますからね」
と、胸を張りながらそう答えたので、
(は、はは。マジですか?)
と、春風は心の中で盛大に頬を引き攣らせたが、すぐに真面目な表情になると、
「……それでしたら、あなたに質問させてもらいます」
と、フレデリックに向かってそう言い、それを聞いたフレデリックが、
「何でしょうか?」
と、返事すると、
「これ、どういうおつもりですか?」
と、春風は自身のライセンスを、フレデリックに見せつけるように出しながらそう尋ねた。




