第428話 勇者達と「お仕事」・帰還
合体パープル・スライムとの戦いを終えて、その「後片付け」も終えた春風。
その後、
「兄貴ぃ……って、あれ!? グレッグさん!?」
「あ、本当だ!」
「やぁ、2人とも」
(おお、ディックとフィオナさんが凄い驚いている……)
再会した「紅蓮の猛牛」所属のハンターであるグレッグと、彼の仲間達と共にレナ達のもとに戻ったのはいいが、
「「馬っ鹿野郎ぉおおおおお!」」
「「「馬ぁ鹿ぁあああああ!」」」
歩夢と美羽、鉄雄、恵樹、詩織の5人のクラスメイト達からもの凄い勢いでそう怒鳴られてしまい、
「あれぇ!? なんで俺、戻って早々怒られてるの!?」
と、春風は思わずギョッと目を大きく見開いた。
それから暫くの間、春風は歩夢達に言われるままその場で正座させられて、彼女達からひたすらお説教されていた。
始めは、
(な、何でこんなことになってるんだ!?)
と、戸惑う春風だったが、冷静になって歩夢達の話を聞いてみると、どうやら最初からパープル・スライムを討伐する為に離れたことがバレていたようで、
(まぁ、怒られる覚悟はしてたけど……)
と、春風は納得の表情を浮かべた後、チラッと歩夢達を見ると、彼女達の表情には「心配」やら「怒り」やら「悲しみ」やら「悔しさ」といった感情がごちゃ混ぜになっていて、特に歩夢と美羽は目にジワッと涙を浮かべていたので、
(うん。これはもう、完全に俺が悪いよなぁ)
と、そう思った春風は、そのまま黙って歩夢達の説教を聞くことにした。
そんな状況の中、
「ああ、すまないディック、フィオナ」
と、グレッグが隣に立つディックとフィオナにそう声をかけ、
「何ですかグレッグさん?」
と、ディックがそう返事すると、
「彼は何故あんな状況になってるんだ?」
と、グレッグは恐る恐る目の前で歩夢達に叱られている春風を指差しながらそう尋ねてきたので、
「……色々と、複雑な事情があるんです。あの人には」
と、フィオナは呆れ顔で「はぁ」と溜め息を吐きながら答えた。当然、その答えにグレッグは「ん?」と首を傾げていた。
それから間もなくして、歩夢達のお説教が終わると、
「さぁさぁ皆さん!」
と、キャロラインが手をパンパンッと叩きながらそう口を開いたので、それを聞いた春風達が思わず「ん?」と反応すると、
「色々と思うところがあると思うけど、もうだいぶ時間も経ったことだし、フロントラルに戻りましょうね」
と、キャロラインは笑顔でそう提案してきたので、それに春風達は目をパチクリとさせると、
『わ、わかりました』
と、全員キャロラインの提案に従うことにして、その後すぐにフロントラルへと戻ることにした。
ただ、
「……」
レナはどうにも暗い表情をしていたので、
「レナ、どうかしたの?」
と、気になった春風がそう声をかけると、
「ん? あー、なんでもないよ。ちょっと疲れただけだから」
と、レナはニコッとしながらそう答えたが、その表情は何処か弱々しく、明らかに誤魔化されている感じがしたが、
(何でだろう。これ以上踏み込んではいけない気がする)
と、春風はそう考えて、
「……そっか」
と、レナに向かってそう言った。
ただ、そんな春風とレナ……というか春風を見て、
(うーん。春風ちゃんったら、罪な男の子ねぇ)
と、キャロラインはなんとも意地の悪そうな笑みを浮かべていたが。
それからは特に問題もなく、全員無事にフロントラルに帰還することが出来た。
その頃には時刻はもう夕方になっているのか、空はすっかりオレンジ色に染まっていて、都市内部にある建物には少しずつ明かりがつき始めていた。
そんな様子の中、春風達は仕事が終わった報告をする為にギルド総本部に向かっていた。通りは大勢の都市の住人やハンターなどで賑わっていて、
「「「「「うわぁ……」」」」」
と、それを見た歩夢ら5人のクラスメイト達は大きく目を見開きながらそう声をもらし、そんな歩夢達を、
「……」
春風は、生暖かい目で見ていた。
暫く歩くと、目的地のギルド総本部が見えたので、
(ああ、漸く戻ってこれた……)
と、春風はそう思いながら、仲間達とギルド総本部の中に入ったが、
『……』
何故か周囲から妙な視線を感じて、
(あれ? なんか、見られてる?)
と、春風は「おや?」と思いながら首を傾げたが、今は報告が先だと考え、そのまま受け付けへと向かった。
そして、受け付けで「仕事が終わった」と報告し、全員その証拠を受け付けの職員に提出した。ただ、春風が出したパープル・スライムの核5つを見て、受け付けの男性職員はタラリと汗を流しながらゴクリと唾を飲んでいたが、それ以外は特に大きな反応がなかったので、
(あ、あれ? もしかして信じてないのかな?)
と、春風は表情にこそ出さなかったが内心では不安に思っていた。
そんな心境の春風を前に、
「確認しました」
と、男性職員はそう言うと、
「おめでとうございます。あなたのハンターランクの昇格を認めます」
と、最後にそう付け加えたので、
(あ、そういえばそういう話だったな)
と、春風は今になって思い出したかのようにハッとなると、
「それでは、あなたのライセンスをこちらに出してください」
と、男性職員にそう言われたので、春風はそれに従って自分のライセンスを差し出した。
その後、男性職員がそのライセンスを受け取ると、近くの引き出しを開けて、そこから大きな印鑑のようなものを取り出した。
そして、男性職員がその大きな印鑑のようなものをグッと握り締めると、大きな印鑑のようなものが淡い光に包まれ出したので、
(あ、もしかしてあれ、何かの魔導具かな?)
と、春風がそう考えていると、男性職員はその淡い光に包まれた大きな印鑑のようなものをドンッと春風のライセンスに押し当てた。
その瞬間、ライセンスが眩い光に包まれたので、春風は思わず、
「うわ、眩しい!」
と、腕で顔を覆うと、
「お待たせしました」
と、男性職員はそう言って、先ほど眩い光に包まれたライセンスを差し出した。
それを聞いて、
「あ、ありがとうございます」
と、春風はそう言うと、男性職員からライセンスを受け取って、
(これで、やっと昇格か……)
と思いながら、受け取ったライセンスをジッと見つめると、春風の名前の隣には、
「……は? 銀の3級?」
と、記されていた。




