第421話 勇者達と「お仕事」・14
「さぁ、次はお前の番だ」
と、目の前にいるパープル・スライムに向かってそう言った春風。
目的討伐数は5匹だが、目の前にいるのはたった1匹。
しかし、先程まで戦っていたブルー・スライム10匹と比べると、明らかにそれ以上の強さを感じたのか、
「スキル、『神眼』。発動」
と、春風は自身の持つスキルの1つを発動した。
その結果……。
パープル・スライム……スライムの上位種の1つ。水属性の攻撃に加えて様々な「毒」を操る。他のスライムと同様に火に弱いが、実際に火に触れると猛毒の煙を出す。
(うわ、マジかよ)
「神眼」の結果を見て、春風は表情には出さずに心の中でそう呟いていると、
「……なら、これは駄目だな」
と、今度はそう口に出して呟き、翼丸と夜羽に纏わせていた炎属性の魔力を解除すると、代わりに風属性の魔力を纏わせた。
すると、両手に持った2つの武器が緑色の光に包まれ、翼丸の刀身が緑色に染まり、夜羽からは緑色に輝く光の刃が伸びて、周囲の風を纏い始めた。
それを見て、パープル・スライムは何か危険なものを感じたのか、ブルリと体を震わせた後、春風を睨みつけるかのように戦闘態勢に入った。
そして、その体を小刻みに震わせると……。
ーー先手必勝!
と言わんばかりに、春風目掛けて先程のブルー・スライム達と同じように水の刃を放ったので、それを見た春風は思わず両手に持った2つの武器を構えたが、よく見ると、その刃はパープル・スライムの体と同じように紫色をしていたので、
(……あ。これ、触れてはいけないやつかも!)
と、そう感じた春風はすぐにその場から飛び退いた。
そのおかげで、紫色の水の刃は春風が立っていたところを通り過ぎて地面にぶつかったが……。
ーージュワァ!
なんと、ぶつかった部分がそんな音を出しながら溶けていき、おまけによく見るとその部分だけが真っ黒に変色しただけでなく何やら変な匂いまでしたので、
「うぅ!」
と、春風は思わず顔を顰めながらそう呻いた。
そんな春風を見て、パープル・スライムはまるで「くっくっく……」と不敵に笑うかのように体を震わせたので、それを見た春風は、
(こんのぉ、なんかすんごいドヤ顔をされてる気がする!)
と、今にもプッツンとキレそうになりながらも、どうにか感情を抑えていると、目の前のパープル・スライムはまるで「ほーれほーれ……」と小馬鹿にするかのように、再び春風に向かって紫色の水の刃を飛ばした。しかも、1度ではなく何度も、だ。
それを見た春風は、
「ヤッベェだろおい!?」
と、ギョッと目を大きく見開きながらも、
「はっ! ひっ! ふっ! へっ! ほぉ!」
と、飛んできた攻撃を全て避けていった。
そして、避けた攻撃は全て地面に当たったが、その全てが黒く変色しながらジュワッと音を立てて溶けていき、なおかつそこから嫌な匂いが出ていたので、
(まずいな。このままだとこっちの体力がもたないし、この嫌な匂いもなんだか体に悪い気がする)
と、春風は顔を顰めたまま冷静にそう分析した。
その後、春風は「うーん」と考え込むと、
「……よし、これでいこう!」
と、小さな声で何かを決意したかのようにそう呟いて、翼丸と夜羽に纏わせた風属性の魔力を解いた。
それを見て、パープル・スライムが「むむ!」と警戒していると、
「……」
春風は無言で翼丸を鞘に納め、夜羽を両手でグッと握り締めた。
すると、夜羽が青い光を纏い始めて、次の瞬間、その青い光が長く伸びると、やがて剣の形へと姿を変えた。
突如現れたその青い光の剣に、パープル・スライムがズリッと後退りすると、春風は青い光の剣を構え直して、
「……さぁ、来いよ」
と、パープル・スライムに向かって挑発するかのようにそう言った。
それを聞いて、パープル・スライムはムカッとなったのか、春風に向かって再び紫色の水の刃を放った。
しかし、春風はそれを見ても避けることはなく、向かってくる攻撃を前にただジッとしながら、
「……林の型」
と、小さくそう呟いた。
そして、紫色の水の刃が春風のすぐ近くまで達すると、
「っ!」
ーーブオン!
なんと、春風はその青い光の剣を振るって、紫色の水の刃を打ち返したのだ。
戻ってきた紫色の水の刃が、パープル・スライムの近くの地面にあたった。その瞬間、地面がジュワッと音を立てて黒く染まりながら溶けてしまったので、それを見たパープル・スライムは、一瞬何が起きたわからず呆然としたが、すぐに「怒り」で体をブルブルと震わせると、また紫色の水の刃を何度も春風に向かって放った。
しかし、その攻撃を前にしても、
「……」
春風の表情はとても落ち着いていて、「ふぅ」とひと息入れると、
「っ!」
再び青い光の剣を振るって、飛んできた複数の刃を、全てパープル・スライムに向かって打ち返した。
それだけではない、春風が一度飛んできた紫色の水の刃を打ち返す度に、1歩、また1歩とパープル・スライムに向かって前進していったので、パープル・スライムは後退りしながら、打ち返された全ての攻撃を避けていった。
そんなパープル・スライムを見て、
(よし、これならいけるぞ!)
と、春風がそう感じた、まさにその時……。
ーーバシュン! バシュン!
「うっ!」
なんと、真横にある森の木々から、春風目掛けて何かが飛んできたので、驚いた春風はすぐにその場から後ろに飛び退くと、
「誰だ!」
と、攻撃が飛んできた方向に向かって怒鳴るようにそう叫んだ。
その叫びを聞いて、春風の前に現れたもの。
それは、4匹のパープル・スライムだった。
最初の1匹の傍に集まった4匹のパープル・スライム。
それを見て、
(もしや、仲間のピンチに駆けつけてきたのか?)
と、春風がそう考えた次の瞬間、
「「「「……!」」」」
「!?」
なんと、最初の1匹に覆い被さるように、新たに現れた4匹のパープル・スライムがくっつき始めたのだ。
突然のことに、今度は春風は呆然としていると、パープル・スライム達の体が光り始めて、やがて1つの大きなパープル・スライムとなったので、それを見た春風は、
「うっそぉん」
と、タラリと汗を流しながら、ポカンとした表情でそう声をもらした。




