第416話 勇者達と「お仕事」・9
レナからの「トドメの一撃」を受けて、ピクリともしなくなったベルセルク・ビートル。
それを見て、
「「や、やったぁ!」」
と、ディックとフィオナは表情を明るくする中、
「ふぅ……」
(あ、危なかった。なんとか成功はしたけど……)
と、春風がひと息入れながら、翼丸を鞘に納めていると、
「フーちゃん!」
「春風君!」
と、歩夢と美羽の声が聞こえたので、それに春風が「ん?」と反応すると……。
ーーガバッ!
なんと、2人がいきなり抱きついてきたので、それに春風が思わず、
「うわ! な、何!?」
と驚いていると、
「馬鹿ぁ! フーちゃんの馬鹿ぁ!」
「もう! 何やってるのよぉ!」
と、歩夢と美羽がポカポカと春風を叩きながら怒鳴ってきた。
そんな2人に向かって、
「え、えぇ? どうしたの2人とも……?」
と、春風が困った顔をしながらそう尋ねると、
「お前の所為だろ! お前の!」
と、今度は鉄雄がそう怒鳴ってきたので、
「え、何、暁君?」
と、それに春風が戸惑いながらそう返事すると、
「そりゃ突撃してきた相手に『居合斬り』かますなんて……」
「1歩間違えたら死んでたかもしれない……」
と、恵樹と詩織が春風に向かってジト目でそう言ったので、それに春風が「えぇ?」と返事すると、
「い、いや、だってあれしか方法がなかったっていうか、確かに『ちょおっと無茶したかな?』とは思ってるけど……」
と、必死になって言い訳じみたセリフを言ったが、
「「全然ちょっとじゃなあい!」」
と、歩夢と美羽に再びそう怒鳴られてしまったので、
(えぇ? そんなこと言われても……)
と、春風は本気で困ったような顔を浮かべて「うーん」と考え込むと、
「あ、そうだ!」
と、何かを閃いたかのようにハッとなって、
「え、えっと、みんなはこれから、もっと強くなるわけでしょ!?」
と、歩夢達を見回しながらそう尋ねた。
その質問に対して、歩夢達は戸惑いながらもコクリと頷くと、
「じ、じゃあさ、こうしよう! 俺がユメちゃん達と一緒に戦うって状況になったらさ、その時はみんなに思いっきり頼るよ! 勿論、『力を合わせて』って意味でさ!」
と、春風は歩夢達に向かって自身の胸をバンッと叩きながらそう言った。
その言葉が届いたのか、
「「「「「……」」」」」
歩夢達は皆、ポカンとした表情になっていたので、
(だ、大丈夫かな?)
と、春風が不安になっていると、
「……うん、それならいい」
と、最初に歩夢が顔を赤くしてコクリと頷きながらそう言い、それに続くように、
「ま、まぁ頼ってくれるなら……」
と、美羽も歩夢と同じように顔を赤くしながらそう言った。
そして、よく見ると鉄雄、恵樹、詩織も顔を赤くしていたので、
(な、納得してくれたみたいだな)
と、春風はホッと胸を撫で下ろした。
すると、
「ちょおっとー、はーるかー」
と、春風の後ろでレナが呼んでいたので、
「な、何、レナ?」
と、春風がゆっくりとレナの方へと向きながらそう返事すると、
「イチャイチャしてないで、魔物の解体手伝ってよぉ」
と、レナはジト目で春風を見つめながらそう言った。よく見ると、彼女の隣でディックとフィオナがニヤニヤしながら春風を見つめていたので、そんなレナ達の様子に春風は「ん?」と首を傾げると、
「……はっ!」
と、自分は今、歩夢と美羽に抱きつかれている状態だということを思い出して、
「どわぁあああああ! ご、ごめんごめん! すぐに行くから!」
と、先ほどまでの歩夢達以上に恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらそう謝罪すると、大慌てで2人を自身から離して、レナ達のもとへと駆け出した。
そんな春風の背中を、
「「むぅ……」」
と、歩夢と美羽が頬を膨らませながら見つめていると、
「あらあらぁ、これはライバル登場の予感かしらぁ?」
と、それまで黙っていたキャロラインが、なんともいやらしい笑みを浮かべながらそう言ったので、
「「えぇ!?」」
と、その言葉に歩夢と美羽がショックを受けていると、
「おほほ、冗談よ冗談」
と、キャロラインは笑いながらそう言い、その後、
「ほらほら、春風ちゃん達が魔物を解体するから、今後の為に見に行きましょうねぇ」
と、最後にそう付け加えると、2人の横を通り過ぎて春風達のもとへと歩き出したので、
「「「「「ま、待ってください!」」」」」
と、歩夢達は大慌てでキャロラインの後を追った。
そんな状況の中、
「あ、そうだ」
と、春風が再び何かに気付いたようにハッとなったので、
「ん? 兄貴、どうしたの?」
と、ディックがそう尋ねると、
「ステータスオープン、レベルのみを表示」
と、春風はそう唱えて、自身のステータスウィンドウ、そのうちの1つであるレベルの項目を出したので、それにディックだけでなくレナとフィオナまでもが「え?」と声をもらすと、
「……あ、レベルが2つも上がってる」
と、春風がそう口を開いたので、それを聞いたレナ達が「え!?」とすぐに春風のステータスウィンドウを見ると、確かに春風のレベルが「30」から「32」になっていたので、
「「「おおぉ!」」」
と、レナ、ディック、フィオナは表情を明るくしながらそう感心した。
そんなレナ達を前に、
(おお、なんかレベルが上がったの久しぶりな気がする……)
と、春風本人も自分のレベルが上がったことに感動し、
(あ、そうだ! レベルが2つも上がったなら、入手出来るスキルも……!)
と、春風はそう考えたが、
「……いや、今は仕事中だから、やめとこ」
と、そう声に出しながら考えを改めると、
「それじゃあ、魔物の解体といきますか」
と、レナ達に向かってそう言い、それにレナ達がコクリと頷くと、倒したサーベル・ハウンドとベルセルク・ビートルの解体を始めた。
ただ、その最中、
「「「「「うっ」」」」」
「ん?」
「「「「「おろろろろろ……」」」」」
と、歩夢達が解体作業中に一斉に吐き出してしまったので、
「「「「わぁあああああ!」」」」
「ちょ、みんなぁ! 大丈夫ぅ!?」
と、春風達は大慌てで作業を中断し、歩夢達を介抱した。




