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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第9章 「勇者」達との新生活

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第415話 勇者達と「お仕事」・8

 今回は、いつもより長めの話になります。


 先制攻撃と言わんばかりに、春風、レナ、ディック、フィオナに向かって突撃したベルセルク・ビートル。


 凄まじい勢いで突き進む大きな甲虫型の魔物に対して、まず動いたのは、春風の強化魔術を受けたレナとフィオナだった。


 2人は突撃してきたベルセルク・ビートルの前まで近づくと、持っている棒と片刃剣を振るって動きを止めようとした。


 ガキィンと音を鳴らしながらぶつかる2人の少女の武器と、ベルセルク・ビートルの大きな角。


 そこで動きが止まるのかと、見守っていたキャロラインと5人の勇者達はそう思ったのだが、止まったのはほんの数秒だけで、ベルセルク・ビートルが角を力いっぱい上に持ち上げると、


 「うあ!」


 「きゃあ!」


 レナとフィオナも一緒に上に飛ばされてしまい、それを見逃さなかったベルセルク・ビートルが、2人が地面に落ちてきた瞬間を狙おうと身構えたが、


 「『ウィンドスピア』!」


 「『ウォーターエッジ』!」


 そこへ、春風とディックが攻撃魔術を放った。


 春風が放った風の槍と、ディックが放った水の刃が、ベルセルク・ビートルの体に当たったが、


 「そ、そんな」


 2人の魔術を以てしても、ベルセルク・ビートルの体に傷をつけることはなかったので、その事実にディックはショックを受けたが、


 「ディック! 攻撃を止めちゃ駄目だ!」


 と、春風にそう怒鳴られて、それにディックはハッとなると、


 「『ウィンドスピア』!」


 「『ウォーターエッジ』!」


 と、春風と共に再び攻撃魔術を放った。それも、1度だけじゃなく、何度もである。


 幾ら頑丈とはいえ、数多くの攻撃魔術を受けて、少しずつ後ろへと下がるベルセルク・ビートル。


 春風とディックが攻撃を続ける一方、空中に投げ飛ばされたレナとフィオナは体を動かして体勢を整えると、持っている武器を振り上げて、すぐ近くにあった木、そこから出ている枝を蹴って、


 「「はぁあああああ!」」


 と、2人同時に空中からベルセルク・ビートルに突撃し、振り上げた武器を思いっきり振り下ろした。


 次の瞬間、ベルセルク・ビートルの角から出ている棘が、グググと音を立てながら形を変えた。


 それを見て、


 「「「「「へ、変形したぁ!?」」」」」


 と、歩夢ら5人の勇者達はギョッと目を大きく見開きながら驚いたが、そんな彼女達を無視するかのように、ベルセルク・ビートルは変形した棘を使って、レナとフィオナの攻撃を受け止めた。


 「「な!?」」


 攻撃を止められたことに驚くレナとフィオナ。


 しかし、そんな彼女達にかまわず、ベルセルク・ビートルはその状態でブンッと角を大きく振るった。その勢いで、


 「くぅ!」


 「あぁ!」


 2人の少女は再び空中に飛ばされたが、すぐに体をくるくると回転させると、2人同時にスタッと春風とディックの傍の地面に着地した。


 「2人とも、大丈夫!?」


 と、春風がレナとフィオナに向かってそう尋ねると、


 「うーん。ちょっと痺れたけど、大丈夫」


 「わ、私も、です」


 と、2人は弱々しくそう返事した。よく見ると、2人の武器を握る手が小さく震えてたので、相当な衝撃だったのだろうと春風は考えた。


 しかし、そんな春風達を、ベルセルク・ビートルがギロリと睨みつける。


 その視線に気付いたのか、春風達も「くっ」とベルセルク・ビートルを睨み付けた次の瞬間……。


 ーーパカッ!


 なんと、ベルセルク・ビートルの背中が割れて大きく左右に広がった。


 その後、そこから現れたのは普通のカブトムシと同じ大きな虫の羽根だったので、


 「ま、まさか……」


 と、春風がタラリと汗を流しながらそう呟くと、その羽根がブーンと音を鳴らしながら素早く動き、それに併せて、ベルセルク・ビートルの体が宙に浮いた。


 それを見て、


 「飛ぶ気なのぉ!?」


 と、恵樹がそう叫んだ瞬間、ベルセルク・ビートルは春風達目掛けて猛スピードで飛んだ。それも、角をより鋭いものへと変形させながら、だ。


 そんなベルセルク・ビートルを見て、


 「危ない!」


 と、春風はそう叫びながら、レナ達とともにその突撃を避けた。


 攻撃を回避されたベルセルク・ビートルは、そのまま春風達を通り過ぎて彼らの後ろにあった森の木々へとぶつかったが、勢いにのった鋭い角が、木々を何本もバキバキと音を立てながらへし折ったので、それを見た歩夢達は、


 「そ、そんな……」


 と、皆、無惨に倒された木々を見て顔を真っ青にした。


 当然、


 「や、やばいよ、兄貴……」


 と、ディックも歩夢達のように顔を真っ青にしたが、


 「……」


 反対に、春風はベルセルク・ビートルが通り過ぎた跡を見つめると、


 「ディック、レナとフィオナさんに回復魔術をかけて」


 と、ディックに向かって涼しげな口調でそうお願いをし、それを聞いたディックは、


 「あ、兄貴、何をする気なの……?」


 と、春風に向かって恐る恐る尋ねたが、春風はそれを無視してスッと立ち上がると、今にもベルセルク・ビートルがこちらに向かってるんじゃないかと思われる位置に立つと、スッと目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をし、最後に腰のベルトに下げた愛用の刀である翼丸の鞘を左手でグッと掴み、右手はいつでも翼丸を抜けるようにスッと柄に近づけた。


 それを見て、


 「え? あの()()……」


 と、美羽がそう呟くと、


 「「……まさか!」」


 その瞬間、美羽だけでなく歩夢までもが、春風が何をしようとしているのか理解して、


 「フーちゃん! 逃げてぇ!」


 「駄目よ! 春風君!」


 と、春風に向かってそう叫んだが、


 「……」


 その声が届いてないのか、もしくは届いてはいるけどそれを拒絶しているのか、どちらにせよ、春風はその場から1歩も動こうとしなかった。


 そんな春風に向かって、


 「あ、兄貴、何する気なの?」


 と、ディックが恐る恐るそう尋ねると、


 「……ディック、俺が合図したら……」


 と、春風はディックを見ずにそう返事したので、それを聞いたディックは「え?」と反応した後、戦闘前に春風が言ってたことを思い出して、


 「ま、待って、ぼ、僕……」


 と、レナとフィオナに回復魔術をかけていたディックは、不安そうな表情を浮かべながらそう言ったが、


 「大丈夫、ディックなら出来るさ。何故なら……」


 と、春風は静かにそう言うと、


 「君は俺の『弟子』で、フィオナの『お兄ちゃん』だろ?」


 と、優しい口調でそう付け加えたので、その言葉が効いたのか、ディックは「あ……」と声をもらすと、


 「……うん!」


 と、力強く頷いた。


 そんな春風達を他所に……。


 ーーブゥウウウウウン!


 と、大きな音を立てながら、ベルセルク・ビートルがもの凄いスピードで飛んできたので、


 「き、来たぁ!」


 と、恵樹がそう悲鳴をあげたが、


 「ふぅううううう……」


 と、春風は静かに、かつゆっくりと息を吐いて、グッと翼丸の柄を握り締めた。


 そして、ベルセルク・ビートルがもう少しで春風の間合いに入った次の瞬間、春風は閉じていた目をカッと見開き、


 「ふっ!」


 翼丸を、思いっきり鞘から引き抜いた。


 その瞬間、勢いよく抜かれた翼丸の刀身が……。


 ーースパッ! スパッ! スパァッ!


 ベルセルク・ビートルの、大きな角と羽根を、見事に斬り裂いた。


 角と羽根を失ったベルセルク・ビートルは、そのままズザザザッと地面に落ちたが、それでも戦いをやめないと言わんばかりに、ヨロヨロと立ちあがろうとしたが、


 「ディック!」


 と、春風はベルセルク・ビートルを見ずにそう叫ぶと、それを聞いたディックは、


 「はぁあ!」


 と、持っていた杖を力いっぱい地面に突き立てた。


 すると、杖を覆っていたオレンジ色の光が、杖を離れてベルセルク・ビートルの真下に移動し、その後、ボコッと音を立てながら、ベルセルク・ビートルの真下の地面が大きく盛り上がった。


 突然の事にジタバタともがくベルセルク・ビートル。


 しかしその行動も虚しく、ベルセルク・ビートルは背中から地面に落ちて仰向けの状態になったので、


 「あ、ひっくり返っちゃった……」


 と、それを見た詩織がボソリとそう呟く中、


 「さぁ、()()()()()()だよ……」


 と、春風もボソリとそう呟くと、


 「……レナ」


 と、小さな声でレナの名を呼んだ。


 それを聞いて、歩夢達が「え?」と首を傾げていると、


 「でやぁあああああ!」


 と、いつの間にか空中にいたレナが、振り上げていた棒に自身の魔力を纏わせると、それを無防備な状態になってるベルセルク・ビートルに叩き込んだ。


 ーーズゥン!


 とその衝撃に、ベルセルク・ビートルは最初ピクピクと脚を動かしたが、数秒後、ガクッと動かなくなったので、


 「「や、やったぁ!」」


 と、それを見たディックとフィオナはパァッと表情を明るくした。


 

 

 


 

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