第407話 勇者達、「ハンター」になる
時を遡ること少し前。
それは、春風達が宿屋「白い風見鶏」を発つ前のことだった。
「さてと、みんな朝ごはんを食べ終わってだいぶ時間が経ったしぃ……」
と、キャロラインが手をパンッと叩きながらそう口を開いたので、それに春風達が「ん?」と反応すると、
「ハンターギルド総本部に行くわよぉ!」
と、キャロラインは明るい口調でそう言った。
その言葉を聞いて、
「あの、キャロライン皇妃様。『総本部に行く』って、一体何をしに……?」
と、春風がキャロラインに向かって恐る恐るそう尋ねると、
「決まってるでしょ。歩夢ちゃん達にも『ハンター』になってもらうのよ」
と、キャロラインは「何言ってるの?」と言わんばかりに首を傾げながらそう答えたので、その答えに春風だけでなく歩夢ら「勇者」達までもが、
『えええええっ!?』
と、驚きに満ちた叫びをあげた。
その後、
「あの、キャロライン皇妃様。それ、本気で言ってるのですか?」
と、ハッとなった春風が再びキャロラインに向かってそう尋ねると、
「勿論本気よ。春風ちゃんには来たる水音ちゃんとの決闘の為にも、強くなってもらわないといけないでしょ? それなら、『勇者』である歩夢ちゃん達も、一緒に強くなってもらわないとね」
と、キャロラインは笑顔でそう答え、その答えを聞いて、
「そ、その為に、私達もフーちゃんと同じ『ハンター』になってもらう、と?」
と、今度は歩夢が恐る恐るキャロラインに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「ええ、そうよ。歩夢ちゃん達だって、もう春風ちゃんから離れるつもりはないんでしょう?」
と、キャロラインが首を傾げながらそう尋ね返してきたので、
「「「「「ありません!」」」」」
と、歩夢だけでなく美羽らクラスメイト達までもがキッパリとそう即答した。
その答えを聞いて、
「そうでしょそうでしょう。それならさっきも言ったけどぉ、歩夢ちゃん達も春風ちゃんと同じように『ハンター』になってもらって、彼と一緒に強くなってもらわなくちゃ。ほらぁ、歩夢ちゃん達は世界を救う『勇者』なんだしぃ」
と、キャロラインは笑顔でそう言うと、
「あ、因みにウィルフレッド陛下にも許可は貰ってるし、なんだったら今帝国にいる水音ちゃん達も『ハンター』になってるからね」
と、最後にとんでもないことを付け加えたので、
「うわぁ、マジですか……って、え!? 水音達も『ハンター』になったんですか!?」
と、それを聞いた春風は目を大きく見開いて驚きながら、キャロラインに向かってそう尋ねた。
その質問に、キャロラインは「ん?」と反応すると、
「あらごめんなさい、言ってなかったわね」
と、「てへ」と舌を出しながらそう謝罪した後、
「ええそうよ。水音ちゃんは今ね、強くなる為に『ハンター』として帝都で活動しているの。勿論、進ちゃん達もね」
と、水音達の現状についてそう説明し、それを聞いた春風達は、
『ま、マジですか』
と、全員盛大に頬をヒクヒクとさせた。
まぁそれはさておき、そんなこんなで時は現在に戻って、ハンターギルド総本部。
ハンターの新規登録の受け付けで、必要な手続きを済ませてから少し時間が経つと、
「こちらが、皆さんの『ライセンス』になります」
と、受け付けにいた女性ギルド職員のジュリアが、歩夢達にハンターの証である「ライセンス」を渡した。
自分達の為に発行されたハンターの証である「ライセンス」を見て、
「「「「「わぁ……」」」」」
と、歩夢達が目をキラキラと輝かせながらそう声をもらすと、
「……ねぇ、レナ」
と、そんな歩夢達の様子を見た春風がそう口を開いたので、
「ん? なに、春風?」
と、春風の隣りに立っているレナがそう返事すると、
「俺がライセンスを手に入れた時、あんな顔してた?」
と、春風は目の前の歩夢達に視線を向けたままそう尋ねた。
その質問に対して、レナは「む?」と何とも微妙な表情を浮かべると、
「うーん。まぁ、マジマジとは見てたけど、あそこまで酷くはなかったかな。かなり落ち着いてたかも……」
と、唸りながらそう答えたので、
「……そっか」
と、春風は小さくそう呟いた。
その表情は暗く、何処か悲しそうな感じだったので、
「あ、兄貴、どうしたの?」
と、逆隣りに立っているディックが心配そうな表情で声をかけてきた。
そんなディックの言葉に、春風は「ん?」と反応すると、
「……何でもないよディック。俺はこの通り、元気だからさ」
と、ディックに向かってニコッと穏やかな笑みを浮かべながらそう返事した。
そんな春風を、
「……」
キャロラインが無言で見つめていると、
「おうおう、あんなに喜んじゃって……」
と、ヴァレリーが歩夢達を見て茶化すようにそう口を開いたので、
「……まぁ、俺達は元々『ハンター』っていう職業がない世界の住人ですから」
と、彼女の言葉に「ん?」と反応した春風は、「あはは」と苦笑いしながらそう答えた。
すると、
「それにしてもキャロライン皇妃様、よく『勇者達をハンターにする』なんてことを思いつきましたね」
と、今度はタイラーがそう口を開いたので、
「必要なことだと思ってるからよタイちゃん。ああ勿論、ウィルフレッド陛下から許可は貰ってるからね」
と、その言葉にキャロラインはそう返事をした。
そんなキャロラインの言葉に、
「は、はは……」
と、春風が乾いた笑い声をこぼすと、
「フーちゃん」
と、歩夢が春風に駆け寄りながらそう声をかけてきた。
そんな歩夢に対して、
「ん? どうしたのユメちゃん?」
と、春風が首を傾げながらそう尋ねると、歩夢は自分のライセンスを春風に向けて、
「これで、私達もフーちゃんと同じだね」
と、「ふふん!」と胸を張りながらそう言い、そんな歩夢に続くように、
「ふふ」
「ふんす!」
「えへへ」
「……」
美羽、鉄雄、野守、夕下も胸を張りながら、春風に自分のライセンスを見せつけてきたので、それを見た春風は目をパチクリとさせると、
「……はは」
と、小さく笑って、
「うん。俺もユメちゃん達と同じだよ」
と、腰ベルトにつけた革製のポーチから自分のライセンスを取り出して、それを歩夢達に見せた。
その後、お互い自分のライセンスを見せ合った春風達は、すぐにそのライセンスをしまうと、
「それじゃあ、これからどうしますか?」
と、春風はキャロラインに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「うーん、そうねぇ……」
と、キャロラインが考え込む仕草をすると……。
「うん、取り敢えずまずは……」
と、これからやることについての説明を始めた。




