第403話 爽やかな朝、からの……
ストロザイア帝国皇妃キャロラインとの出会い、地球から召喚された「勇者」こと歩夢らクラスメイト達と、ルーセンティア王国第2王女イヴリーヌとの再会、同じくルーセンティア王国騎士エヴァンとの再会と対決、そして和解というあまりにも濃厚な1日から翌朝、
「ん、ん〜……」
窓の外から聞こえる「ちゅん、ちゅん」という鳥達の鳴き声と共に、春風はゆっくりと上半身を起こした。
「ふぅ……」
(昨日は、本当に色々あったなぁ)
と、春風がひと息入れながらそんなことを考えていると、
「おはようございます、春風様」
と、ベッドの枕元に置いてたマジスマからグラシアがそう挨拶してきたので、
「あ、おはようございますグラシアさん」
と、春風は若干眠そうな表情をしているがそれでもニコッとしながらグラシアに向かってそう返事した。勿論、2人とも部屋の外にもれないように小声で言っている。
その後、春風はゆっくりとベッドから出ると、カチャリと窓を開けた。
爽やかな心地のいい風が、部屋の中に入ってくる。その風を受けて、
(ああ、なんだか気持ちいい)
と、春風は表情を緩ませると、すぐに両手で左右の頬をパンパンッと叩いて、
「よし」
と、気持ちを切り替えるのように表情をキリッとさせると、部屋の中にある洗面台で顔を洗って歯を磨き、衣服を寝巻きから普段着に着替えた。
ひと通りの準備を終えた春風に向かって、
「春風様、なんだか今日はいつになくスッキリとした感じがします」
と、マジスマ内のグラシアが「ふふ」と笑いながらそう言うと、
「ありがとうございますグラシアさん」
と、春風は再びニコッとしながら、グラシアに向かってそう返事した。勿論、先ほどと同じように部屋の外にもれないように小声で、だ。
その時。
ーーコン、コン。
と、部屋の扉の向こうからノックする音がしたので、
「はーい」
と、春風はすぐにマジスマを手に取ってズボンのポケットに突っ込むと、小走りで扉に駆け寄って、ガチャリとその扉を開けた。
「どちら様ですか……?」
と、春風が扉の向こうにいるかもしれない者達に向かってそう言いながら開けると、
「お、おはようフーちゃん」
そこには、春風の「大切な人」の1人である少女、歩夢がいたので、
「あ、おはようユメちゃん……」
と、春風は若干戸惑いつつも、歩夢に向かって笑顔でそう挨拶を返すと、
「私もいるわよ、春風君」
と、歩夢の後ろから眼鏡をかけたもう1人の少女がひょっこりと顔を出したので、
「あ、お、おはよう美羽さん」
と、春風は驚きながらその少女……そう、歩夢と同じく春風の「大切な人」の1人である美羽に向かってそう挨拶した。
すると、
「俺達だっているぜ」
と、2人の少女の傍で、今度は聞き覚えのある少年の声がしたので、その声に春風が「ん?」と反応すると、
「あ。暁君に野守君、それに夕下さんまで」
「よう!」
「ヤッホー!」
「おはよう雪村君」
そこには、春風のクラスメイトである2人の少年、鉄雄と野守、そして少女、夕下がいた。
更に、
「あらぁ、私達だっているわよ」
「やぁ、春風。おはよう」
と、鉄雄達の近くで聞き覚えのある2人の女性の声がしたので、
(え?)
と、春風はすぐにその声がした方へと視線を向けた。
「あ、師匠にミネルヴァさん」
そこには、「春風を助ける」という目的で地球から来た2人の女性、凛咲とミネルヴァがいたので、春風はその姿を確認すると、
「お、おはようございます」
と、春風は恐縮した様子で2人に向かってそう挨拶した。
歩夢達に挨拶すると、
「え、えっとぉ、どうしたのみんな……?」
と、春風が恐る恐るといった感じでそう尋ねると、
「決まってるでしょ、『朝ごはん』に誘いに来たの」
「フーちゃん、まだ食べてないかなって思って……」
と、美羽と歩夢がそう答え、彼女達に続くように鉄雄達も「うんうん!」と頷いてきたので、
「……」
その答えを聞いた春風は目をパチクリとさせると、
「そっか。俺も今から朝ごはんにするところだったんだ」
と、ニコッとしながら歩夢達に向かってそう言ったので、そんな春風の言葉に歩夢達は表情を明るくした。
その後、春風は部屋を出て戸締りをしっかりとした後、歩夢達と共に食堂に向かった。その途中、
「あれ? そういえばルイーズさんは?」
と、春風がハッと気付いたかのようにそう尋ねると、
「朝起きて着替えた後、イヴリーヌ様達のところに向かった」
と、夕下は少し寂しそうな感じでそう答えた。確認の為にここに記すが、ルイーズとは歩夢達と共にフロントラルに来たルーセンティア王国の騎士の1人で、昨日春風が戦った騎士エヴァンの姉でもある。戦いが終わった後、ここ、「白い風見鶏」で夕下と一緒の部屋で過ごしていた。
夕下の話を聞いて、春風は「そっか……」と呟いたが、
(あれ? そういえばイヴリーヌ様とキャロライン様、この後どうするつもりなんだろう? やっぱりそれぞれの国に帰るのかな?)
と、すぐにその疑問が脳裏に浮かんだが、
(ま、俺が気にしても仕方ないか……)
と、春風はすぐに首を左右に振りながらそう考えることにした。
まぁそれはさておき、そうこうしているうちに食堂の前に着いたので、
「おはようございま……」
と、先頭に立つ春風がそう言いながら、ゆっくりと食堂に入ろうとすると、
「あら、おはよう春風ちゃん達ぃ!」
「お、おはようございます、皆様」
そこには、春風達とは別の宿屋に泊まっている筈の、ストロザイア帝国皇妃キャロラインと、ルーセンティア王国第2王女イヴリーヌ、そして彼女に仕える騎士であるヘクターとエヴァン、更にはイヴリーヌのもとへと向かった筈のルイーズの姿もあったので、
「……」
食堂に入ろうとした春風はすぐに無言で回れ右して、
「あれぇ? 俺、朝から幻覚でも見てるのかなぁ?」
と、右腕で自身の両目を擦りながらそう言ったが、
「あらあらぁ、いやぁねぇ。『幻覚』じゃなくて『本人』よぉ」
と、キャロラインが「オホホ」と笑いながらそう否定してきたので、
「……はぁ」
と、春風は観念したかのようにそう溜め息を吐くと、歩夢達と共に食堂に入った。
そして、
「あの、皆さん何でここにいるのですか?」
と、春風がキャロライン達に向かって恐る恐るそう尋ねると、
「ん? 決まってるじゃない、朝食よ朝食。デニスちゃんの作ったご飯美味しいんだもの」
と、キャロラインは「何言ってるの?」と言わんばかりに首を傾げながらそう答えたので、
「は、はぁ。そうですか……」
と、春風がそう返事すると、
「あ、そうそう、それでね……」
と、キャロラインが更にそう口うぃ開いたので、それに春風達が「ん?」と反応すると、
「私達ぃ、暫くこっちで暮らすから!」
と、キャロラインが満面の笑みを浮かべながらそう言ったので、その言葉を聞いて、
『……は?』
と、春風達がそう声をもらすと、
『はぁあああああああっ!?』
と、一斉に驚きに満ちた叫びをあげた。




