第402話 狼狽える「教主」と……
お待たせしました、本編新章の始まりです。
ルーセンティア王国王都、五神教会の総本部。
その最奥部にある部屋の中では、
「う、うぅ……」
と、教主のジェフリーはそう呻き声をあげながら、落ち着かない様子で部屋の中をぐるぐると歩き回っていた。
その理由はただ1つ。
「な、何故だ? 一体、彼らに……ギデオン・シンクレア大隊長達に何があったというんだ?」
そう、五神教会総本部に戻ってきた、ギデオン・シンクレア率いる「断罪官」達のことである。
断罪官が総本部に帰還する時は、必ず前もって総本部の方に「戻る」と連絡を入れて、戻る時は馬に乗って戻るということも決まりとなっていた。
しかし、今回ギデオン達はその連絡を入れておらず、しかも本来なら緊急の時以外は使わないようにしている転移用の魔導具を用いての帰還だったので、いきなり総本部に現れたギデオン達に教会の信者は勿論、教主であるジェフリーも、何が起きたのかわからず狼狽えていた。
それだけでも只事ではないのに、戻ってきたギデオン達はというと、副隊長であるルークをはじめ、隊員達の表情は暗く、何処か絶望に満ちた表情をしていて、おまけに大隊長であるギデオンも重症を負い、大隊長の証である「聖剣スパークル」も真っ二つにへし折られた状態となっていた。
そして現在、帰還したギデオン達は五神教会総本部内の治療室で治療を受けている最中で、あまりにも酷い状態なのか、信者や幹部だけでなく教主であるジェフリーでさえも、何故か面会謝絶となっていた。
というよりも、これは世間……いや、もっと言えば国王であるウィルフレッドすらも知らないことなのだが、元々「断罪官」という部隊は、五神教会に所属している部隊だというのに、どういうわけか教主であるジェフリーも彼らに干渉することが出来ず、彼らの普段の行動を咎めようにも、
「我々断罪官は、偉大なる5柱の神々の名の下に『正義』を行っている」
というひと言で突っぱねられてしまい、流石のジェフリーでも自身が崇める「神々」の名を出されてはどうにも出来ない状況だった。
そんな感じで、ジェフリーはギデオン、そして彼が率いる断罪官のことを陰では疎ましく思っていたのだが、そのギデオン本人が重症を負って五神教会総本部に帰還したという事態に対して、
「は! ザマァ見ろ!」
という感情はわかず、
「い、一体、何が起きたというんだ!? 彼らは大丈夫なのか!?」
という不安が勝ってしまっていて、彼らから事情を聞こうにも面会謝絶という状況に、ジェフリーはどうすればいいのかわからず、ただただ不安に陥るだけとなってしまったのだ。
そんなわけで、ギデオン達の状況がわからず、
「一体、私はこれからどうすればいいのだぁあああああ!」
と、オロオロした様子のジェフリーは頭を抱えてそう叫んだのだが、残念なことにそれに応える者は誰もいなかった。
さて、五神教会総本部でジェフリーがオロオロしていた丁度その頃、その五神教会総本部がある王都から遠く離れたとある地を、馬に乗った1つの集団が駆け抜けていた。
人数は10数人くらいで、特徴的な漆黒の鎧を身に纏っているその集団は、それぞれ真剣な表情をしながら真っ直ぐ前を見て馬を走らせていた。
暫くすると、集団はとある場所の前で馬を止めた。
そこはどうやら村のようだが、何か大きな争いでも起こったのか幾つかの家が無残に破壊されていて、おまけに中に人の気配が全くなくシーンと静まりかえっていたので、そこはまさに「ゴーストタウン」とも言える状態だった。
そんな不気味な雰囲気漂う村を、漆黒の鎧を纏った集団がジッと見つめる中、
「よっと」
と、1人の男性が馬から降りた。
「お前ら、すぐ終わるからちょっと待ってろ」
と、男性は馬に乗った人達に向かってそう言うと、1人村の中へと入っていった。
男性はまるで何かを探しているかのように、誰もいない村の中を暫くの間歩いていると、
「お!」
と、あるものが視界に入ったので、男性はすぐにそのあるものの所に向かって駆け出した。
そこは、村の裏手から出て少し離れた場所で、その場所には10数もの木の板が地面に突き刺さっていて、その全てに何やら文字が書かれていた。
よく見ると、それはどうやら人の名前のようで、男性はそれらをジッと見つめながら1歩1歩進んでいくと、
「……お、あった」
と、そう言いながら1つの板の前で止まった。
その板は他の板よりも若干大きく、同じように人の名前らしきものが書かれていて、そこには、
「断罪官第2小隊隊長ケネス・ランドルフ、ここに眠る」
と、記されていた。
その文字が記されていた板に向かって、
「よう、ケネス。俺が来たぜ」
と、男性がそう言うと、「よっこらせ」とその場にしゃがんだ。その表情は何処か「悲しみ」が含まれていて、
(お前、本当に殺されちまったんだな。自分の部下によぉ)
と、男性が心の中でそう呟くと、
「悪りぃな。今日は花とか酒持ってきてねぇんだわ」
と申し訳なさそうな表情でそう謝罪しながら、ソッと木の板に向かって手を伸ばした。
その時だ。
ーーボコッ!
という音と共に、木の板が突き立てられた場所の地面から、1本の腕が伸びてきて、男性の腕をガシッと掴んだのだ。
「どわぁあああああああっ!」
と、突然のことに思わず男性がそう悲鳴をあげて、その勢いで後に下がると、それに合わせて地面から美しい顔立ちをした長髪の男性が出てきた。
長髪の男性は男性の腕から手を離すと、その場で四つん這いになって、
「ぶはぁ! はぁ……はぁ……」
と、苦しそうに息を切らせた。
そんな苦しそうな様子の長髪の男性に向かって、
「はは、なんだよケネス! 随分と元気そうじゃねぇか!」
と、男性がパァッと表情を明るくしながらそう言うと、
「……全然元気じゃないわよ。こっちは死にかけたんだから」
と、「ケネス」と呼ばれた長髪の男性が、キッと目の前の男性を睨みながら、女性口調でそう返事した。
どうも、ハヤテです。
最後の投稿から暫くの間、執筆と投稿をお休みしていましたが、前書きにも書きましたように今日から本編新章の開始となりますので、読者の皆様、どうぞよろしくお願いします。




