第400話 宿屋に戻って……
それから春風達は、暫くの間職員食堂で談笑した後、ハンターギルド総本部を出て宿屋「白い風見鶏」に戻った。
その道中、
「じゃあ春風、また明日」
と、レナが春風に向かってそう言ったので、それに春風が、
「うん。また明日……」
と、返事すると、
「あれ? レナさんって違う宿屋に泊まってるの?」
と、野守が首を傾げながらそう尋ねてきたので、
「いや、レナは近くに家を借りてそこで暮らしてるんだ」
と、春風がそう答え、それにレナが「うん、そうだよ」と頷くと、
『え!? マイホーム持ってたの!?』
と、野守だけでなく歩夢や美羽らクラスメイト達の他に、凛咲とミネルヴァまでもが目を大きく見開きながら驚き、そんな彼・彼女達を見て、
「フッフーン! 凄いでしょ私!」
と、レナは自身の左右の腰に手を当てながら、渾身のドヤ顔でそう言うと、
「ん? おい、雪村……」
と、今度は鉄雄が「おや?」と疑問に満ちた表情でそう話かけてきたので、
「な、何、暁君?」
と、春風が恐る恐るそう返事すると、
「まさかとは思うけどよぉ……お前、レナさんの家に行ったか?」
と、鉄雄が鋭い目付きで睨みながらそう尋ねてきたので、その質問に歩夢と美羽がハッとする中、
「あー、うん……」
と、春風がもの凄く気まずそうに答えると、
「テメェ! まさかレナさんの家に泊まって大人の……!?」
と、鉄雄が目をクワッと見開きながらそう尋ねてきたが、
「んなこするかぁあああああ!」
と、鉄雄が言い終わる前に春風がそう叫びながら……。
ーーズガン!
もの凄い勢いで鉄雄の脳天に強烈なチョップをお見舞いしたので、
「ぐぎゃあああああ!」
と、鉄雄は悲鳴をあげたが、
「するわけねぇだろ、そんな『男』としてアウトなことを! そんなことしたら、俺がレナのご両親に地獄に落とされるわぁ!」
そんな彼を無視して春風はそう怒鳴ったので、それを聞いた歩夢と美羽はホッと胸を撫で下ろした。
ただ、レナは何故か「むぅ」と頬を膨らませていたが。
まぁとにかく、その後、レナと別れた春風達は、それから特に問題なく宿屋に着いた。
「ああ、みんなおかえり」
と、出迎えに来たレベッカがそう言ったので、
「レベッカさん、ただいま戻りました」
と、春風がそう返事すると、
「あの、それで空いてる部屋、ありましたでしょうか?」
と、レベッカに部屋の空きについて恐る恐る尋ねた。
その質問に対して、
「ああ、問題ないよ。空きはまだまだあるから」
と、レベッカはニコッとしながらそう答えたので、その答えに春風は先ほどの歩夢と美羽と同じようにホッと胸を撫で下ろした。
レベッカ曰く、現在春風が寝泊まりしている部屋の上の階に2人部屋の空きが幾つかあるそうで、春風達はどの部屋にするか話し合った末に、歩夢と美羽、鉄雄と野守、夕下とルイーズ、そして凛咲とミネルヴァという形になった。
因みに、イヴリーヌとキャロラインは近くにオードリーが手配した宿に泊まることになり、その護衛をする為にヘクターとエヴァンが一緒に泊まるそうだ。
そんな感じで部屋割りが決まると、
「じゃ、案内するよ」
と、レベッカが部屋まで案内することになり、
「じゃあみんな、おやすみぃ」
「おやすみなさい」
と、キャロライン、イヴリーヌ、ヘクター、エヴァンの4人も自分達が泊まる宿へと向かった。
中に入って歩夢達と別れると、春風は1人自分の部屋へと戻った。
そして、装備を外して眠る準備をすると、
「あー、疲れたぁ」
と、そう言いながらベッドにダイブした。
枕に顔を埋めた後、春風はすぐに顔を横に向けて、
「ふぅ……」
と、ひと息入れると、
「春風様」
と、予め枕元に置いてたマジスマからグラシアがそう声をかけてきたので、
「ん? 何ですかグラシアさん?」
と、春風がお疲れ気味の表情でそう返事すると、
「本日もお疲れ様でした。昨日のギデオンとの戦いから疲れが取れてないのに……」
と、マジスマ内のグラシアが、本気で心配そうな表情でそう言ってきたので、
「あはは、そうなんですけどね」
と、春風は弱々しく笑いながらそう返事したが、
「でも、少なくとも今日はとてもいい日だったと思います」
と、最後にグラシアに向かって「ははは」と笑ったので、それを聞いたグラシアは、
「うふふ、そうでしたね……」
と、笑いながらそう返事すると、
「……あ、しまった」
と、春風は何かに気付いたかのようにハッとなったので、
「ど、どうかなさいました春風様?」
と、グラシアが恐る恐るそう尋ねると、
「師匠にオヤジのこととか、クラスのみんなの『家族』のこと、聞くの忘れてた」
と、春風は「ヤッベェ!」と言わんばかりに目を大きく見開きながらそう言ったので、
「あらあら、春風様ったら……」
と、グラシアは呆れながらも、「ふふふ」と笑いながらそう返事した後、
「でしたら、今日はもう遅いですので、明日聞いてみたらいいのではないですか?」
と、穏やかな笑みを浮かべながらそう尋ねてきたので、
「……そうですね、そうします」
と、春風も穏やかな笑みを浮かべながらそう返事した。
その後、春風はベッドの上でゴロンと仰向けになると、
「ふあああ……」
と、大きく欠伸をして、
「今日はなんだか、『いい夢』を見れそうな気がする」
と、ボソリとそう呟くと、
「ふふ、そうですね春風様……」
と、グラシアはそう返事したが、
「すー……すー……」
そのすぐ後、春風は眠りについてしまったので、
「あらあら」
と、グラシアは再び呆れながらも「ふふふ」と笑うと、スーッとマジスマから出てきて、
「大丈夫です。春風様なら、きっと『いい夢』を見れると思いますよ」
と、「幽霊」である為触れることは出来ないとは知ってはいるが、それでも春風の頭を優しく撫でながらそう言うと、
「ですから、おやすみなさい春風様」
と、最後に春風に向かってそう呟いて、春風の額にチュッと口付けをした。
一応予定ですが、次回で今章は終了です。




