第401話 王女と皇妃の「報告」
お待たせしました、今章最終話です。
春風が自室で眠ってから暫く経った頃。
宿屋「白い風見鶏」から少し離れたところに、凄く高級感溢れる宿屋がある。
そこは、フロントラル市長オードリーが手配した宿屋で、その宿屋の最上階に、ルーセンティア王国第2王女のイヴリーヌと、ストロザイア帝国皇妃のキャロラインの為に用意された部屋があり、彼女達の部屋の隣に、ルーセンティア王国の騎士であるヘクターとエヴァンの部屋がある。
そして、その部屋の中では、
「……ということがあったのよぉ」
と、現在の部屋の主であるキャロラインとイヴリーヌが、目の前に置かれた2枚の大鏡に向かってそう言っていた。
この大鏡はキャロラインの故郷であるストロザイア帝国で開発された通信用の魔導具で、ストロザイア帝国帝城にあるものと同じく魔力を流すことで遠くにいる別の鏡型魔導具を持つ者達と会話が出来るようになっている。
で、そんな魔導具が何故、イヴリーヌとキャロラインの目の前に2枚あるのかというと、1枚はイヴリーヌの故郷であるルーセンティア王国にいる、彼女の父親にして国王であるウィルフレッドとの通信用で、もう1枚はキャロラインの夫にしてストロザイア帝国皇帝であるヴィンセントとの通信用だからである。
その2枚の魔導具はというと、イヴリーヌの目の前に置かれたものには、彼女の両親である国王ウィルフレッドと王妃マーガレット、そして姉である王女クラリッサの姿が映し出され、キャロラインの目の前置かれたものには、夫である皇帝ヴィンセントと、息子である皇子レオナルド、その妹である第2皇女のエレクトラの姿が映し出されていて、そんな彼・彼女達に向かって、イヴリーヌとキャロラインはフロントラルに来てから起きた出来事について報告していたというわけである。
まぁそんなわけで、イヴリーヌとキャロラインの報告を聞いて、
「……」
映像のウィルフレッドは難しい表情をしていたので、
「お、お父様?」
と、イヴリーヌが恐る恐る声をかけると、
「……ふ」
と、同じく映像のヴィンセントがそう吹き出したので、
「あら、どうかしたの?」
と、キャロラインがそう反応すると、
「ふ、ふはは、ふははははははは! いいじゃねぇか! すっげぇいいじゃねぇえか! 雪村春風、『未熟』とはいえ異世界から来た『賢者』! 是非とも帝国に来てほしいじゃねぇか! いや、欲しい! 是非とも欲しいぞぉ!」
と、ヴィンセントは狂ったように声高々に笑いながらそう言い、最後に「ふははは……!」と再び笑いだしたので……。
ーーガシッ!
「落ち着いてください父上」
と、背後に現れたレオナルドがヴィンセントの頭部を掴みながら静かにそう言うと、最後にその頭を握り潰す勢いでギュウッと掴む力を強くし、頭を掴まれたヴィンセントは、
「ぐぎゃあああああ! 痛い痛い痛い! 離してくれレオン! お父さんの頭が柔らかい果実ように潰れちまう!」
と、ジタバタ踠きながらレオナルドに向かってそう悲鳴をあげて、
「はぁ。まったく父様ったら……」
と、エレクトラはそれを呆れ顔で溜め息を吐きながら見つめていた。
そんなヴィンセント達を見て、
「あらあら……」
と、キャロラインがそう声をもらしていると、
「……正直、『信じられない』という想いが強いな」
と、映像のウィルフレッドがそう呟いたので、
「お、お父様?」
と、気になったイヴリーヌが再び恐る恐るそう声をかけると、
「『見習い賢者』という固有職能についてもそうだが、『断罪官』の中で起きた不祥事や、『人間』を超えて『天使』となったギデオン大隊長、そしてその彼を春風殿が打ち破ったという話。どの事実も大きすぎて、とても受け入れられないと思ってる自分がいる」
と、ウィルフレッドはだんだん表情を沈ませながらそう言って、
「はは、すまないな。不甲斐ない父親で」
と、最後に自嘲気味にそう笑いながら謝罪した。
その謝罪を聞いて、
「あなた……」
「お父様……」
と、映像のマーガレットとクラリッサが心配そうな表情でウィルフレッドを見つめていると、
「ふむ。なぁ、ウィルフよぉ」
と、映像のレオナルドから解放された映像のヴィンセントが冷静な表情でそう声をかけてきたので、それに映像のウィルフレッドが「ん?」と反応すると、
「ギデオンのことどうする気だ? やっぱ、春風に何もしないように命令するのか?」
と、映像のヴィンセントが冷静な表情のままそう尋ねてきたので、
「そうだな。ギデオンには申し訳ないが、春風殿を殺されるわけにはいかないから……」
と、映像のウィルフレッドはそう答えたが、
「ですが、先ほど申しましたように、ギデオン大隊長はお父様どころかジェフリー教主様に対する忠誠心はありません。そのような方がお父様に従うでしょうか?」
と、イヴリーヌにそう尋ねられてしまい、
「ああ、そうだったな。すまない、すっかり頭から抜け落ちてた」
と、映像のウィルフレッドはシュンとしながら、またイヴリーヌに向かってそう言うと、
「困ったなこれは……」
と、映像のウィルフレッドは「はぁあ」と最後に大きく溜め息を吐いた。
そんなウィルフレッドに、
「気にすんなってウィルフ。お前はお前で、『家族』や『国民』、そして他の『勇者』達を守ることに専念すりゃあいいだろ」
と、映像のヴィンセントがそう言ってきたので、
「ああ、そうだな」
と、映像のウィルフレッドはコクリと頷きながらそう答えると、
「とはいえ、このまま五神教会の奴らが大人しくする筈もないが……」
と、最後にそう付け加えたので、それを聞いた者達は、
『……はぁ』
と、暗い表情で盛大に溜め息を吐いた。
すると、
「なぁ、キャリー」
と、映像のヴィンセントがそう口を開いたので、
「あら、何かしらぁ?」
と、キャロラインがそう返事すると、
「キャリーの方はこれからどうする気だ? 目的の雪村春風に会えたからよぉ」
と、映像のヴィンセントがそう尋ねてきたので、その質問にイヴリーヌや映像のウィルフレッドらが、
『あ、そういえば!』
と、言わんばかりに目を大きく見開くと、
「うふふ、考えたんだけどねぇ……」
と、キャロラインは何やら怪しげな笑みを浮かべながらそう口を開いて、イヴリーヌや映像のヴィンセント達に自身の「とある考え」を言った。
その瞬間、宿屋「白い風見鶏」で、
「ふがふ!?」
と、春風が変な声をあげながらガバッと上半身を起こしたので、
「ど、どうなさいました春風様!?」
と、グラシアが驚きながらそう尋ねると、
「……今、なんかもの凄い嫌な予感がしたんだけど……」
と、春風はタラリと汗を流したが、すぐにそれを拭うと、
「はは、多分、気の所為だと思いますけどね」
と、グラシアに向かってニコッとしながらそう言って、再び眠りについた。
翌日、その「嫌な予感」が現実のものになるとも知らずに……。
謝罪)
大変申し訳ありません。
前回投稿した話の後書きに、「次で今章は終了です」と書きましたが、正確に言いますとこの後にもう1本投稿があり、それで今章は本当の意味で終了となります。
誤解させてしまって本当にすみません。




