第392話 「カミングアウト」、からの……・3
「ぎ、ギデオン大隊長ですが……ぶちのめしちゃいました」
と、春風は気まずそうにそう言ってから数秒後、
『はぁあああああああ!?』
と、一部を除いた周囲の人達がそう驚きの声をあげた。
その後、
「……春風さん、説明をお願い出来ますか? 出来ればレナさんやヴァレリーさん、タイラーさんにアーデさんも」
と、フレデリックが疲れ切った表情で「ふぅ」とひと息入れながらそう言ったので、
『わ、わかりました』
と、春風達は昨夜フロントラルの外で起きた、ギデオンとの戦いについての説明を始めた。勿論、「女神ヘリアテス」のことや、レナの「本当の種族」、更には春風とレナが「神々を滅ぼす悪魔」だということは伏せて、ギデオンを相手にどのように戦ったとか、彼の正体についてを重点的に話した。今ここで全てを話しても、余計場を混乱させるだけだと、春風達はそう考えたからだ。
そして説明を終えて、
「……とまぁ、こんな感じですけど」
と、春風がそう話を締め括ると、
「雪村ぁ……」
と、鉄雄にガシッと両肩を掴まれた。彼の背後には歩夢と美羽、野守、夕下の姿もあって、しかもよく見ると皆、「ゴゴゴ……」とプレッシャーを放っていたので、
「な、何、みんな……?」
と、春風が恐る恐るそう尋ねようとすると、
「「馬っ鹿野郎ぉおおおおお!」」
「「「馬ぁ鹿ぁあああああ!」」」
と、鉄雄達に一斉に怒鳴られてしまった。
それを受けて、
「おおおおお! どどど、どうしたのみんなぁ!?」
と、春風が驚き、その傍ではレナ、ヴァレリー、タイラー、アデレード、ディック、フィオナも大きく目を見開いていたが、そんな彼・彼女らを無視するかのように、
「顔面踏ん付けて地面に埋めただと!? 丸太ぶん回して叩きつけたうえに、全身氷漬けにしただとぉ!? 思いっきりジャンプして地面に叩き落としただと!? 挙句の果てに『無限倉庫』とかいうチートスキルで敵の奥義収納してそれを返してやっつけただとぉ!? お前……お前ぇ、何とんでもなくぶっ飛んだことやってんだこらぁ!」
と、鉄雄が春風の両肩をゆっさゆっさと揺さぶりながらそう怒鳴ったので、
「え、えぇそうかな? 確かに、『ちょっとぶっ飛んだことしたな』って思ってはいるけど……」
と、春風が「ん?」と首を傾げながらそう返事すると、
「『ちょっと』の域超えてるわ馬鹿タレぇえええええ!」
と、鉄雄は更にそう怒鳴りながら……。
ーーズガン!
と、春風の脳天を、思いっきりチョップした。
「いってぇえええええ! ぼ、暴力反対ぃ!」
と悲鳴をあげた春風だが、
「自業自得だ!」
と、鉄雄に言い返され、
「「そーだそーだ!」」
と、野守と夕下に責められ、
「うえええん、馬鹿ぁ! フーちゃんの馬鹿ぁ!」
「何考えてるのよもう!」
と、歩夢と美羽に至っては2人とも「わんわん」と泣き喚きながらポカポカと春風を叩いていたので、
「あー、うん……ごめんなさい」
と、春風はチョップされた頭を摩りながら、バツの悪そうな表情でそう謝罪した。
そんな状況の春風達を前に、
「ま、まさか、あのギデオン大隊長に勝つなんて……」
「し、信じられない、なんということだ!」
と、イヴリーヌとヘクターは戦慄し、
「「……」」
ルイーズとエヴァンは絶句していて、
「うーむ、ギデオン大隊長を退けるとは……」
「これは、きっと向こうも大混乱するでしょうね」
と、フレデリックとオードリーが何やら難しそうな表情でそう話し合い、
「まさか、そんなことがあったとは……」
「酷いじゃないっすか、ヴァレリーさんにタイラーさん」
と、エリック、イアン、ステラ、ルーシーが、ヴァレリーとタイラーに向かって責めるような視線を送りながらそう言ったので、
「わ、悪かったよ」
「す、すみません」
と、その視線を受けたヴァレリーとタイラーは申し訳なさそうにそう謝罪し、
「かー! こいつはおったまげた話だねぇ!」
「ああ、まさかこんなとんでもねぇ話を聞くことになるなんてなぁ」
「ええ、そうね」
と、ナンシー、バージル、ミラは春風達の話を聞いて「信じられない!」と言わんばかりの驚きに満ちた表情になっていた。
すると、
「なぁ、春風……」
と、レベッカが春風に声をかけてきたので、
「な、何ですかレベッカさん?」
と、春風が恐る恐るそう返事すると、
「話はわかったけど、それじゃあ、あの子達はどうなっちまったんだい?」
と、レベッカはかなり真剣な表情でそう尋ねてきたので、
「ああ、すみません。アメリアさん達でしたら、俺はあの後眠ってしまったみたいで……」
と、春風は申し訳なさそうにそう返事して、
「大丈夫です。あの人達でしたら、今は安全な場所に避難してもらってます」
と、レナが真っ直ぐレベッカを見ながらそう答えたので、
「……そうかい」
と、レベッカは何処かホッとしたかのような笑みを浮かべながらそう言った。
すると、
「にしてもその『断罪官』を裏切ったっていうアメリアって女、一体何をしたっていうんだろうねぇ?」
と、ナンシーが腕を組みながらそう疑問を口にしたので、
「え? あ、あぁ、アメリアさんは……」
と、春風がそう反応すると、
「おや? もしや何か『事情』を知ってるのですか?」
と、フレデリックがそう尋ねてきたので、それに春風が「う……」と答え難そうにしていると、
「春風、もうここまで来たら言うしかないよ」
と、レナがポンと春風の肩に手を置きながらそう言ってきて、それに続くように、ヴァレリーとタイラー、アデレード、ディックにフィオナも無言でコクリと頷いてきたので、春風は少し考え込んだ後、
「……そうだね。信じてもらえるかわからないけど、何も言わないよりはマシかもしれない」
と、覚悟を決めたかのような表情でそう言い、その後、春風はナンシーの方へと向きながら、
「わかりました、その辺りについても、今からお話しします」
と、真剣な表情でそう言うと、アメリア達についての話を始めた。




