第390話 「カミングアウト」、からの……
本日2本目の投稿です。
レベッカやフレデリックをはじめとしたフロントラルで出会った人達。そして、フロントラルで再会したルーセンティア王国の第2王女と3人の騎士、そしてクラスメイト達と2人の大切な少女達に向かって、ついに、自身が「固有職保持者」であることを告げた春風。
そのあまりの衝撃的な事実に、
『……』
と、誰もが何も言えないでいる中、
「春風……」
と、レナが声をかけてきたので、その声に春風は返事をする代わりに無言でレナの方へと視線を向けた。
「大丈夫?」
と、心配そうな表情でそう尋ねてきたレナに、
「……いつか、言わなきゃいけないって思ってたから」
と、春風は気の弱そうな笑みを浮かべながらそう返事した。
実際のところ、春風は自身の正体を明かすことに「恐怖」はあった。明かすことによって、相手がどんな反応するのか怖かったからだ。ましてやその相手がクラスメイト達で、特に歩夢と美羽という春風にとって大切な存在である2人の少女達にいたっては、最悪の場合嫌われてしまうのではないかと内心では「恐怖」でいっぱいだったのだ。
しかし、だからといってこのまま黙ってるわけにもいかないということも春風はわかっていた。
おまけに昨日のギデオン・シンクレアとの戦いで、春風は彼に自身が固有職保持者であることを明かし、それをきっかけに、「3人の悪魔の1人」だということも知られてしまったので、
(きっとあの人は、ウィルフレッド陛下に俺のことを話すだろうな)
と、春風はそう考えた。
そして今日、春風は再会した人達と新たに知り合ってきた人達に、自身のことを明かした。
そのことについて「恐怖」はあるが、それとは別に、周りがどんな反応をしても目を背けないという「覚悟」もあったので、春風は彼・彼女達からの反応をジッと待った。
すると、
「は、春風ちゃんが、固有職保持者……」
と、ストロザイア帝国の皇妃であるキャロラインが、声を震わせながらそう呟いたので、
(く、来るか)
と、春風はグッと拳を握り締めながら覚悟を決めると、
「なんて……なんて素晴らしいのぉおおおおお!」
と、キャロラインはパァッと表情を明るくしながら、まさに感動したかのようにそう叫んだので、
『……はい?』
と、春風だけでなくレナや周囲の人達がそう声をもらした。
しかし、キャロラインはそれに構わず、
「いやーん、もう春風ちゃんったら! 可愛いだけじゃなく強いうえに固有職保持者! それも、『最初の固有職保持者』と同じ『賢者』だなんて! もう、素晴らしすぎてキャロライン困っちゃう!」
と、顔を真っ赤にして「いやんいやん」と体をクネクネとさせながらそう言ったので、春風はそれに目をパチクリとさせると、
「……いえ、正確には『賢者』ではなく『見習い賢者』です。力に目覚めたばかりの、未熟な『見習い賢者』ですが……」
と、「何言ってんだ俺?」と疑問に思いつつもキャロラインに向かってそう訂正したが、
「でも『賢者』だってことに変わりはないでしょ?」
と、真っ直ぐな眼差しを向けてきたキャロラインにそう返されてしまったので、
「……まぁ、そうですが」
と、春風はそう返事した。
そんな春風を前に、
「それに、『見習い』ってことは、いずれは『真の賢者』に成長するってことでしょ? なら、何にも問題なんてないわ」
と、キャロラインはそう話を続けたので、
「『問題ない』って……あ、あのですね、俺はユメちゃんや美羽さん、それに『勇者』達とは違って、俺はこの世界の人達が、『悪魔』と呼んでいる固有職保持者ですよ? それ聞いて、キャロライン皇妃様はなんとも思わないのですか?」
と、そんなキャロラインの言葉を聞いて、春風は恐る恐るキャロラインに向かってそう尋ねると、
「思わない」
と、あっさりと即答されてしまったので、
「うっそぉ」
と、春風は思わず後ろに倒れそうになった。
しかし、そんな春風に構わず、
「そ、れ、に。こんなもの凄い情報、夫が聞いたら目をキラキラとさせるわぁきっと」
と、キャロラインが笑顔で更にそう話を続けたので、
「あぁ。確かに父様なら、こんな話聞いたら……」
ーー何ぃ!? 『賢者』の固有職保持者だとぉ!? 欲しい! 是非ともうちに欲しい!
「……なんてこと言いそうで、怖いですね」
と、それまで黙って話を聞いていたアデレードが、「はは」と盛大に頬を引き攣らせながらそう言った。
そんなアデレードの言葉に、
「そうでしょそうでしょアーデちゃん!」
と、キャロラインは明るい表情で何度もコクリと頷きながらそう言ったが、
「ていうか……」
と、何故か急に口調が静かになったので、それにアデレードだけでなく春風達までもが「ん?」と首を傾げると、
「アーデちゃんにレナちゃん、ヴァレちゃんにタイちゃん、そしてヴァレちゃんとこのメンバーちゃん。あなた達、春風ちゃんが固有職保持者だってこと知ってたでしょ?」
と、キャロラインは真剣な表情でそう尋ねてきたので、その質問を聞いて、
『うっ!』
と、名前を呼ばれた人達は思わずそう呻きながらプイッと顔を背けたので、
「そう反応するってことは、知ってたってことでいいのよね?」
と、キャロラインが何処か邪悪な笑みを浮かべながらそう尋ねたが、
『いや、その……』
と、アデレードやレナ達はダラダラと汗を流した。
その時だ。
「……ふむ、いい機会かもしれませんね」
と、今度はそれまで黙ってたフレデリックがそう口を開いたので、
「え? 総本部長……さん?」
と、春風が恐る恐るそう反応すると、
「春風さん。それに、レナさん達もよろしいですか?」
と、フレデリックがそう尋ねてきたので、
「な、何でしょうか?」
と、今度はレナが恐る恐るそう返事すると、
「ひょっとすると皆さん、昨夜『断罪官』と何かありましたか?」
と、フレデリックが真剣な表情でそう尋ねてきたので、
『うぅ!』
と、春風だけでなくレナやアデレード、ヴァレリー、タイラー、そしてディックとフィオナまでもが、思わず胸を押さえながらそう呻いた。




