第387話 春風vsエヴァン・決着
本日2本目の投稿です。
そして、今回もいつもより短めの話になります。
「奥義、『大地断裂剣』!」
そう叫びながら、春風に向かって長剣を振り下ろしたエヴァン。
それに対して、
「っ!」
春風も、エヴァンに向かって大刀を振り下ろした。
その瞬間、ガンッと音を立てて、2つの刃がぶつかる。
「……っ」
「おおおおお……!」
1歩も引かない様子の春風とエヴァン。そんな2人を、レナをはじめとした大勢の人達はゴクリと唾を飲みながら見守る。
そんな状況の中、2つの刃からギチギチと音が鳴り出して……。
ーーバキィイイイイイン!
やがて、どちらも真っ二つに折れた。
空中をクルクルと回転しながら舞う2つの刃を見て、
『ああ!』
と、周囲から驚きの声が上がる中、
(……駄目、だったか)
と、エヴァンは心の中でそう呟いた。
その表情には、既に春風に対する感情がないのか、何処か諦めにも似ていて、
(だが、奴の刃を折っただけでも、よしとするか……)
と、更に心の中でそう呟きながら、エヴァンは折れた長剣の柄部分を下に落とした。
カランという音が小闘技場内に響き渡り、
「あ……相打ち……か?」
と、ヘクターがボソリとそう呟くと、
「……いいや」
と、凛咲がニヤッとしながらそう否定してきたので、
『え?』
と、周囲からそんな声があがる一方、
(奴も、ショックを受けているだろうな……)
と、エヴァンがふと春風に視線を向けると、
「……え?」
目の前にいる春風は、何故か両膝を限界まで曲げて身を低くしていた。
そして、春風の両足が風を纏い始めて、
「……3度目のぉおおおおお」
と、春風の口からそんな言葉が出た瞬間、
「「「いっけぇえええええええっ!」」」
と、レナ、歩夢、美羽の3人が、春風に向かってそう叫び、そのすぐ後、
「男はぁ、ど根性ぉおおおおおおお!」
と、春風もそう叫びながら、思いっきりその場からジャンプした。
それを見て、
『と、跳んだぁあああああっ!』
と、周囲の人達と、
「な、何だってぇえええええええ!?」
エヴァンが大きく目を見開きながら、驚きに満ちた叫びをあげる中、春風が向かったのは、今も空中を舞う折れた大刀の刀身。
その刀身目掛けて、春風は左腕を伸ばす。
「届けぇえええええ!」
と、春風がそう叫んだ時、
「は!」
一瞬だけだが、エヴァンは確かに見た。
春風の背中から、1組の大きな赤い翼が現れたのを。
しかし、
「……あ」
その後すぐに、エヴァンが瞬きをすると、春風の背中には何もなかったので、
(き、気の所為……か?)
と、エヴァンはそう疑問に思った。
それはさておき、
「届けぇえええええ!」
と、春風が再びそう叫ぶと、その想いが届いたのか……。
ーーガシッ!
折れた刀身を、掴むことが出来たので、
「「「やったぁ!」」」
と、レナ、歩夢、美羽はパァッと表情を明るくした。
そんな3人を前に、
「よし」
と、刀身を掴んだ春風がそう呟くと、刀身が緑色に輝き、
「あ、夜羽!」
と、レナがそう叫んだように、折れた大刀の刀身は、春風のもう1つの武器である扇、夜羽の姿になったので、それを確認した後、春風は夜羽をバッと広げて、それを思いっきり振った。
因みに、右手に握ってた折れた大刀の柄部分は、刀身が夜羽に戻った瞬間、春風の武器である刀、翼丸に戻っていた。
それはさておき、先ほど振った夜羽から強い風が吹いて、その勢いで春風は後ろへと吹き飛ばされたが、
「ふんぬぅ!」
と、春風はそう叫びながら空中で体を回転させて、エヴァンの目の前にスタッと降りた。
それを見て、エヴァンは最初呆然としていたが、
「……ふふ」
と、目の前で春風が小さくそう笑ったので、
「はぁっ!」
と、我に返ったエヴァンはすぐに身を低くして落とした折れた剣を拾おうとしたが、それよりも早く、
「ふっ!」
春風はエヴァンのすぐ前まで移動していて、それと同時に夜羽を再び「風の魔剣」に変化させると、翼丸と一緒に大きく振り上げて、それらをエヴァン目掛けて振り下ろした。
それを見て、
(ま、間に合わない!)
と、そう感じたエヴァンは思わず目を瞑ると……。
「……ん?」
いつまで経っても攻撃が来なかったので、エヴァンが恐る恐る目を開けると、
「うぅ! こ、これは!?」
なんと、振り下ろされた2本の刃は、エヴァンの両肩ギリギリのところでピタッと止まっていたので、
「あ、ああ、う……」
と、エヴァンはタラリと汗を流しながらそう声をもらした。
因みに、エヴァンの手には何も持ってなくて、落とした長剣の柄部分までもう少しというところでピタッと動きを止めていた。
このあまりの状況に、周囲の人達が何も言えないでいる中、
「……お、教えてくれ、雪村春風」
と、エヴァンがそう口を開いたので、
「何ですか?」
と、春風がそう返事すると、
「お、お前は……何故そこまで、勝負を諦めずにいられるんだ?」
と、エヴァンは恐る恐るそう尋ねた。
その質問に対して、春風は答える。
「決まってじゃないですか。『男』なら、『大事な人』達にカッコ悪いところなんて、絶対に見られたくないでしょ?」
その答えを聞いた瞬間……。
ーーこんなところで、無様な姿など見せられるかぁ!
先ほど、エヴァンが自分で春風に向かって言った言葉が脳内に浮かびあがったので、
「……はは、そうだな。お前の言う通りだ」
と、エヴァンは納得の表情を浮かべた。
そして、その後すぐに、
「……で、まだやりますか?」
と、春風がそう尋ねてきたので、
「……いや、私の……俺の負けだ」
と、エヴァンは「ふふ」と笑いながらそう答えた。
そんな彼の言葉が聞こえたのか、
「……ふむふむ」
と、フレデリックはそう声をもらし、その後すぐにチラッと審判役の男性職員に視線を送った。
その視線を受けて、男性職員はコクリと頷くと、小闘技台に上がって春風とエヴァンに近づくと、
「勝者、春風!」
と、声高々にそう叫んだ。




