第382話 春風vsエヴァン・2
「……っ!」
「はぁ!」
と、同時に動いた春風とエヴァン。
春風は右手の翼丸を振り、エヴァンは左手の盾を突き出す。
その瞬間、ガンッという音を鳴らして、翼丸と盾がぶつかった。
「……」
「ぬぅ……」
1歩も引かない2人。刀と盾がギチギチと音を鳴らす中、
「は!」
と、エヴァンが右手の長剣の先を、春風に向かって突き出す。
それを見て、
「危ない!」
と、美羽が悲鳴をあげたが、
「……」
逆に春風は落ち着いた表情で、「風の魔剣」に変えた夜羽を順手から逆手に持ち替えた。
その瞬間、ガキンッと音を立てて、エヴァンの長剣による刺突が、逆手に持った夜羽の緑色の刀身によって防がれたので、
「何ぃ!?」
と、エヴァンは驚愕の声をあげると、春風は落ち着いた表情のまま、
「ふん!」
と鼻を鳴らしながら、全身を駆使してエヴァンを後ろへと押し出した。
「くあ!」
と、エヴァンは小さく悲鳴をあげたが、すぐにキッと春風を睨み付けると、体を回転させて、持っていた長剣で小闘技台を突き刺した。そのおかげで、エヴァンはそれ以上吹き飛ばされることはなく、その後はどうにか着地することが出来たが、
「……」
その時には、春風は既にエヴァンのすぐに傍まで近づいていたので、その姿にエヴァンは思わず、
「うっ!」
と呻いたが、春風はそれに構うことなく、振り上げていた翼丸と夜羽を一気に振り下ろした。
それを見て、
「え、エヴァン!」
と、今度はルイーズがそう悲鳴をあげると、
「まだまだぁ!」
と、エヴァンはそう叫びながら、力いっぱい盾を前へ、正確に言えば、振り下ろされた2つの刃目掛けて突き出した。
その瞬間、ガキィンと音を立てながら、エヴァンの盾が春風の斬撃を防ぎ、その勢いで、
「く……」
翼丸と夜羽が、春風の手から離れてしまったので、
「今だ!」
と、エヴァンはそう呟くと、
「はぁあ!」
と叫びながら、春風を小闘技台に押し倒した。
「ぐぅ……」
エヴァンの反撃を受けて倒れる春風。その両手に武器はなく、春風の手から離れた翼丸と夜羽は、春風から離れた位置に落ちた。
そんな春風に向かって、
「私の、勝ちだ!」
と、勝利を確信したエヴァンが、持っていた長剣を振り下ろしたので、
「ああ!」
「に、逃げろ雪村ぁあああああ!」
と、野守と鉄雄が大きく目を見開きながら春風に向かってそう叫んだ。
その時だ。
「男は……ど根性ぉ!」
と、春風はそう叫びながら、強引に自身の右足を動かして、エヴァンの左足を思いっきり蹴った。
「うぐ!」
突然の一撃にエヴァンがそう唸った次の瞬間、エヴァンはバランスを崩してしまい、そのおかげで春風目掛けて振り下ろされた長剣は僅かに春風からずれたので、
「2度目の、男はど根性!」
と、春風は再びそう叫ぶと、素早くその場から起き上がって、そのまま離れた位置に落ちた翼丸と夜羽を拾って、すぐにそれを構えた。
一連の春風の行動に、
「す、スゲエ」
「うん。雪村君、『根性』でどうにかピンチから逃れたね」
と、鉄雄と野守が「はは」と頬を引き攣らせながらそう呟くと、
「うーん、流石はハニー。いい根性してるわねぇ」
と、凛咲が「うふふ」と笑いながらそう呟いたので、
『ん?』
と、それを聞いた周囲の人達が、一斉に凛咲に視線を向けて、
「……マリーさん」
「今の……洒落?」
と、歩夢と美羽がタラリと汗を流しながら、恐る恐る凛咲に向かってそう尋ねた。
一方、
「くぅ……」
春風の反撃を受けてバランスを崩したエヴァンだったが、どうにか体勢を立て直すと、春風を睨みながら長剣と盾を構え直した。
周囲の人達に見守られる中、春風とエヴァンはジッと睨み合う。
小闘技場内がまた緊張に包まれる中、
「……このままでは埒があかないな」
と、エヴァンがボソリとそう呟いたので、その言葉に春風が「ん?」と反応すると、エヴァンは一瞬だけチラッとイヴリーヌに視線を向けた後、
「イヴリーヌ様、今から私は、騎士にあるまじき行いをします」
と、春風を睨みながらそう言ったので、その言葉にイヴリーヌだけでなく春風までもが、
「「え?」」
と、声をもらすと……。
ーーガシャン!
「な!?」
『ええ!?』
なんと、エヴァンはそれまで持っていた盾を捨てたのだ。その後、空いた左手でグッと長剣の柄を握ると、
「この一撃で、決める!」
と、エヴァンはそう言って、両手で握った長剣を春風に向けて構えた。
その瞬間、エヴァンの全身をオレンジ色の光が包み込んだので、
「え、エヴァン、あなたまさか……!」
「次で、決着をつける気か」
と、ルイーズとヘクターはエヴァンが何をするのかを察したかのようにそう口を開き、それを聞いた周囲の人達は「え!?」と目を大きく見開いた。
さて、ガラリと変わった雰囲気のエヴァンを前に、春風はというと、
「……そうですか。それが、あなたの『覚悟』というわけですね?」
と、春風はエヴァンに向かってそう尋ねたが、エヴァンはそれに応えず、ただ無言で長剣を構えていたので、
「わかりました。それなら、俺も『覚悟』を以て迎え撃つまでです」
と、春風は静かにそう言うと、両手に持った翼丸と夜羽の刀身を交差させた。
次の瞬間、2つの刀剣が緑色の光に包まれ、やがて1本の大きな刀へと変化したので、
「「ぶ、武器が合体したぁ!?」」
と、鉄雄と野守が興奮気味にそう叫び、
「兄貴、かっこいいいいい!」
と、ディックが更に興奮した様子でそう叫んだので、
「「何ぃ、『兄貴』だとぉ!?」」
と、その言葉に鉄雄と野守がそう反応したが、
「2人とも、気持ちはわかるけど、今は落ち着いてね」
と、凛咲にそう注意されてしまったので、
「「あ、はい」」
と、2人はしょんぼりしながら春風に視線を戻した。
さて、そんな彼らを他所に、
「……それが、お前の奥の手ということか?」
と、エヴァンが春風に向かってそう尋ねると、
「うーん。ちょっと違うと思いますけど、ま、似たようなものですね」
と、春風は不敵な笑みを浮かべながらそう応えた。
その後、春風は緑色の刀身を持つその大刀を両手でグッと握り締めると、「よいしょっと……」と言いながら、それを肩に担いで、
「いきます、山の型」
と、鋭い視線をエヴァンに向けながらそう言った。




