第365話 再会、「勇者」達と……
(ユメちゃん。美羽さん……)
宿屋「白い風見鶏」で起きた、まさかの出来事。
それは、エルードに降り立ったあの日、ルーセンティア王国で別れたクラスメイトにして、春風の「大切な存在」でもある2人の少女、「ユメちゃん」こと海神歩夢……以下、歩夢と、「美羽さん」こと天上美羽……以下、美羽との再会だった。
この出来事は、ストロザイア帝国のキャロライン皇妃との邂逅以上に春風に衝撃を与え、
(まさか、ここでユメちゃんと美羽さんと再会なんて……)
と、春風は内心戸惑いに満ちていたが、
(……でも、またこうして2人の顔を見れて、嬉しい)
それと同時に、「大切な存在」との再会に、春風は何処かホッとしたかのような感じになっていた。
その時だ。
「おうおう、見せつけてくれるじゃねぇか」
「……え?」
不意に聞き覚えのある少年の声がしたので、春風が思わずその声がした方へと視線を向けると、そこには歩夢と美羽と同じ、深々とフードをかぶって顔を隠している3人のマント姿の人物がいて、
「そ、その声は……」
と、春風は大きく目を見開きながらそう呟くと、3人の人物も歩夢、美羽と同じようにかぶっていたフードとった。
その正体は春風と同じ年頃くらいの3人の少年少女で、1人は漫画とかに登場するような「熱血漢」を思わせる雰囲気をした短い茶髪の少年、1人は同じく漫画とかに登場するような「お調子者」を思わせる雰囲気をした眼鏡をかけた少年、そして最後は長い髪を三つ編みにした何処か暗い雰囲気をした少女だ。
そんな特徴的な雰囲気をした3人の少年少女を前に、
「え……あ……嘘……」
と、春風が大きく目を見開きながら口をパクパクさせていると、
「よーう雪村、久しぶりだなぁ」
と、まずは熱血漢風の少年が春風に向かってそう言ったので、
「あ、暁君……」
と、春風はダラダラと汗を流しながらその少年の名を呼ぶと、
「再会早々女の子を2人も泣かせるなんて……」
と、次にお調子者風の眼鏡をかけた少年がそう言ったので、
「の、野守君……」
と、春風は「暁君」と呼んだ少年の時と同じくダラダラと汗を流しながら、眼鏡をかけた少年の名を呼ぶと、
「男の風上にも置けない」
と、最後に暗い雰囲気をした三つ編みの少女が、春風に向かってそう言ったので、
「ゆ、夕下さん……」
と、春風は最後までダラダラと汗を流しながら、三つ編みの少女の名を呼んだ。
そう、彼らもまた歩夢と美羽と同じく、「勇者」としてこの世界に召喚された春風のクラスメイト達だ。
3人とも春風を前にニコッとしているが、同時に何やら「ゴゴゴ」とプレッシャーのようなものを放っていたので、
(う、うわぁ。ユメちゃんといい美羽さんといい、なんでクラスメイト達がここに……!?)
と、春風は戸惑いの表情を浮かべたが、
(は! ちょっと待てよ……!)
と、すぐに何かに気付いたかのようにハッとなると、
「まさか、水音……桜庭君や先生もここに!?」
と、周囲をキョロキョロしながらそう口を開いたが、
「だ、大丈夫、ここには私と美羽ちゃん、それに暁君に野守君に夕下さんだけだよ」
と、春風の言葉に歩夢がそう答えたので、
「え、本当に!?」
と、その答えに春風がそう返事すると、歩夢だけでなく美羽までもがコクリと頷いたので、
(そ、そっか。よかったぁ、これ以上の再会は勘弁して……)
と、春風がホッとしながら心の中でそう呟いていると、
「それよりも雪村君……」
と、「野守君」と呼ばれた眼鏡の少年がそう口を開いたので、
「な、何でしょうか、野守君?」
と、春風がややおかしな口調でそう返事すると、
「君ぃ、随分と2人のこと大事に想ってたんだねぇ」
と、「野守君」はニヤッとしながらそう言ったので、彼の言葉に春風が「は?」と首を傾げると、改めて自身の腕の中にいる歩夢と美羽を見て、
「……はっ!」
と、目を大きく見開くと、その後すぐに再び周囲を見まわした。
そう、今自身がいるのは宿屋「白い風見鶏」の食堂で、周りにはレナをはじめとした春風がこの世界で出会った人達と、「師匠」である凛咲、「友人」であるミネルヴァがいる。
皆、春風の今の状態を見て、いやらしそうにニヤニヤしたり恥ずかしそうに顔を赤くしたり、更には「むぅ」と頬を膨らませていたので、
「わぁあああああああっ!」
と、そんなレナ達を見た春風は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらそう叫ぶと、すぐに歩夢と美羽を自身から離そうとしたが、
「「いや!」」
と、歩夢も美羽も春風から離れようとしなかったので、
「ちょ、ちょっと2人とも……!」
と、それに春風が驚いていると、
「ちょおっとぉ! 春風から離れなよ!」
と、それまで黙って春風と歩夢達のやり取り(?)を見ていたレナがそう怒鳴ってきたので、それに春風だけでなく歩夢達までもが「ん?」と反応すると、
「あ! フーちゃん拐った人!」
「春風君連れ去った人!」
「「「雪村(君)を拐った人!」」」
と、歩夢達はビシッとレナを指差しながらそう言ったので、
「人を誘拐犯みたいに言うなぁあああああ!」
と、レナは歩夢達に向かって叫ぶように怒鳴った。
その時だ。
「(クスクス)……」
と、食堂の出入り口付近で何やら笑い声のようなものが聞こえたので、それに春風達が「え?」と反応すると、
「あ、そうそう! 実は、もう1人春風ちゃんに会いたいって人がいるのよぉ」
と、それまで黙っていたキャロラインが、今更になって気付いたかのようにポンッと相槌を打ちながらそう言うと、
「いいわよぉ、いらっしゃーい!」
と、出入り口に向かってそう叫んだ。
すると、
「それでは、失礼します」
という声と共に、食堂の出入り口の向こうから、派手さはないが動きやすそうなドレスに身を包んだ1人の少女が入ってきた。
見たところ、春風より歳下のように見える雰囲気をしているが、同時に何処かで見たかのような感じもしていたので、
(あれ? この子は確か……)
と、春風がその少女のことを思い出そうとしていると、それよりも先に、
「お久しぶりです、雪村春風様」
と、少女は春風に向かって丁寧にお辞儀しながらそう言ったので、その言葉に春風は「え?」と声をもらした次の瞬間、
「……あ」
春風は目の前の少女が何者かを思い出して、
「あなたは……ルーセンティア王国第2王女の、イヴリーヌ・ヘレナ・ルーセンティア様」
と、その少女の名を呼んだ。




