第364話 再会、「勇者」達
本日2本目の投稿です。
そして、今回はいつもより短めの話になります。
「ゆ……ユメちゃん?」
と、目の前でかぶっていたフードを外し、素顔を晒した黒のショートヘアの少女のことをそう呼んだ春風。
(え? 本当にユメちゃん? どうして……いや、でも……)
その内心はかなり戸惑いに満ちていて、春風は目の前の少女に対してどう対応すればいいのかわからずにいた。
すると、
「フーちゃん!」
と、春風のことをそう呼んだ黒いショートヘアの少女が、目に涙を浮かべながらガバッと春風に抱き付いてきた。
ただ、その勢いが強すぎたのか、抱き付かれた春風の体が後ろへと仰け反り出して、このままだと床に倒れてしまうのではないかと思われたのか、
『あ!』
と、周囲からそんな声があがった。
そして、春風自身も、
(ま、まずいぞ! このままいけば、間違いなく俺、後頭部を床にぶつけてしまうかも!)
と、この後のことを考えて不安になっていると、
「フン!」
と、春風はそう叫びながら、右足を後ろに出してどうにかその場に踏ん張った。
そして、危うく倒れる寸前で体を止めると、自身に抱き付いてきた黒いショートヘアの少女の両肩を優しく掴んで、
「男は……ど根性ぉおおおおお!」
と、春風はそう叫びながら、少女の両肩を掴んだまま上体を起こした。
それを見て、
『おおーっ!』
と、周囲がパチパチと拍手しながらそう歓声をあげていると、
「ユメちゃん!? 本当にユメちゃんなの!?」
と、春風は黒いショートヘアの少女に向かってそう尋ねた。
その質問を聞いた時、「ユメちゃん」と呼ばれた黒いショートヘアの少女は、
「うう……」
と、目からボロボロと大粒の涙を流すと、
「うわぁあああああん! フーちゃんだよぉ! ホントにフーちゃんだよぉおおおおお!」
と、春風の胸に顔を埋めながらそう泣き叫んだので、その叫びを聞いた春風は、
(あ……ああ。本当にユメちゃんなんだ)
と、黒いショートヘアの少女のことを思い出し始めた。
ユメちゃん、本名、海神歩夢。
「ルールを無視した勇者召喚」によって、「勇者」としてエルードに召喚されたクラスメイトの1人であると同時に、春風の大切な存在の1人だ。
教室で「勇者召喚」の光に飲み込まれ、ルーセンティア王国王城内で再会したはいいが、その後すぐに彼女とクラスメイト達や担任教師の爽子のもとを離れることになってしまった。
そして、それから時が流れた現在、そのユメちゃん……海神歩夢……以下、歩夢が春風の胸に顔を埋めながらわんわんと泣いているので、
「ユメちゃん……どうしてここに……?」
と、春風が歩夢に向かってそう尋ねると、
「……『どうして?』」
と、聞き覚えのある別の少女の声がしたので、その声に「え?」と反応した春風が、すぐに声がした方へと視線を向けると、そこにはまだフードを深々とかぶっているマント姿の人物が4人いたので、
「あ……え、えっと……?」
と、春風が「わけがわからん!」と言わんばかりにキョトンとしていると、その中の1人が1歩前に出て、歩夢と同じようにかぶっていたフードを外した。
それを見て、
「あ……」
と、春風がそう声をもらしたように、フードの下から現れたのは、長い茶髪をポニーテールにした眼鏡をかけた少女の顔で、それを見た春風は、
「美羽……さん」
と、その少女の名を呼ぶと、歩夢の時と同じように彼女のことも思い出し始めた。
彼女の名は、天上美羽。
歩夢と同じく「勇者」として召喚されたクラスメイトの1人であり、歩夢と同じく春風の大切な存在の1人だ。
そんな彼女に向かって、
「み、美羽さん……」
と、春風が再び彼女の名を呼ぶと、天上美羽……以下、美羽は歯をギリッと鳴らしながら「怒り」に満ちた表情になって、ズンズンと音を立てながら春風と歩夢に近づいた。
そして、「え? え?」と戸惑う春風のすぐ目の前に立つと、
「今まで何してたのよ!? 私達のもとを去ってから、全然音沙汰なしで!」
と、美羽は春風に向かって怒鳴りながらそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「え、あ、いやぁその、何と言いますか……」
と、春風は何か言おうとしたが、
(や、やばい! 何も言葉が浮かばない! いや、浮かんでもきっと全部言い訳になってしまう!)
と、春風はそう考えてしまって何も言うことが出来ずにいた。
すると、
「……っ」
と、美羽も歩夢と同じようにガバッと春風に抱き付いてきたので、その瞬間、周囲から再び「おお!」と歓声があがる中、
「ちょ、ちょ、ちょっとぉ美羽さん!」
と、驚いた春風はすぐに美羽を自身から離そうとしたが、
「く……」
と、美羽はそう声に出しながら、春風に抱き付く力を更に強くしたので、
「いや美羽さん! 本当に離れて……!」
と、春風が美羽に向かってそうお願いしようとしたが、それを遮るかのように、
「心配……したんだからね」
と、美羽は震えた声でそう言い、
「……馬鹿」
と、最後にそう付け加えた。
そんな美羽の言葉を聞いて、春風は一瞬泣き出しそうな表情になったが、すぐに首をブンブンと左右に振ると、歩夢と美羽に手を回して、ソッと彼女達を優しく抱き寄せると、
「……そうだね、美羽さん」
と、今も春風に抱き付いている美羽に向かってそう呟き、
「2人とも、心配かけてごめんなさい」
と、歩夢と美羽を交互に見ながら、優しい声でそう謝罪した。




