第362話 「皇妃」再び
本日2本目の投稿です。
時は遡ること少し前。
それは、皇妃キャロラインがフロントラルに来たことをフレデリック達に報告していた時のことだった。
ウェンディが受け付けの仕事をしていると、
(ん?)
宿屋の外で大勢の人の気配を感じたので、
(団体客でも来たのかな?)
と、ウェンディはそう考えると、宿屋の出入り口を開けて、
「いらっしゃいませぇ!」
と、笑顔で元気よくそう言うと、
『……』
そこには、フード付きにマントを羽織った数人の人達と、
「あら、ウェンディちゃん久しぶりー!」
1人の女性が立っていた。
マントを羽織った人達は、皆フードを深々とかぶっていた為、その素顔を見ることが出来なかったが、その人達の先頭に立つその女性は、ウェンディが知ってる人物だった為、
「あ……あぁ……」
と、ウェンディはダラダラと汗を流しながらそう声をもらした後、
「キャロラ……!」
と、目の前にいる女性の名を叫ぼうとしたが、
「おおーっと!」
それを遮るように、女性は素早い動きでウェンディの背後に回ると、彼女の口を両手で塞いだ。
「ふごー! ふごー!」
と、突然のことにウェンディは叫ぼうとしたが、口を塞ぐ女性の力がつよかったのか、「ふごふご」と言うだけで言葉を発することが出来なかった。
そんな状態のウェンディを見て、女性は「ふふふ……」と笑うと、
「それじゃあ、中に入りましょうねぇ」
と、そう言って、口を塞いだウェンディと一緒に宿屋の中へと入った。
そして現在。
「ヤッホー、みんなぁ!」
その女性、ストロザイア帝国皇妃キャロラインが、食堂内にいる者達全員に向かってそう言ったので、
『キャロライン皇妃様ぁ!?』
と、食堂内にいる者達は、一部の人を除いてそう驚きの声をあげた。
その後、
「ふぐぅ……」
と、キャロラインに口を塞がれたウェンディが、涙目でそう声をもらしたので、
「ウェンディ!」
と、その声を聞いてハッとなったレベッカがそう口を開くと、キャロラインは「ん?」とレベッカの方へと視線を向けて、
「あ、ベッキーちゃん!」
と、パァッと表情を明るくしながら、レベッカのことをそう呼んだ。
それを聞いて、
(べ、『ベッキーちゃん』?)
と、春風が首を傾げていると、
「はぁ。本当に相変わらずだねアンタは……」
と、キャロラインの言葉にレベッカは呆れ顔で溜め息を吐きながらそう言い、その後すぐに、
「いい加減ウェンディを解放しな!」
と、ビシッとウェンディを指差しながらそう怒鳴った。
その怒声にキャロラインは「ん?」と首を傾げていると、
「あ! ごめんねウェンディちゃん!」
と、そう謝罪しながらウェンディの口から手を離し、彼女を解放した。
そして自由になったウェンディは、
「うえええええん! お母ちゃあああああん!」
と、泣きながらレベッカに抱きついたので、
「よしよし、ここはお母ちゃん達に任せて、アンタはお父ちゃんを手伝ってきな」
と、レベッカはウェンディの頭を撫でながら、優しい口調でそう言い、その言葉にウェンディは「うん」と頷くと、タタタッとデニスのところへと駆け出した。
それを見て、レベッカが「やれやれ……」と呟くと、
「おお、ベッキーちゃん優しい! 流石は『お母さん』ね!」
と、キャロラインはわざとらしい感じ態度でそう言ったので、
「いや、アンタも母親だろうが! それも3児の!」
と、レベッカはギロリとキャロラインを睨みながらそうツッコミを入れたが、キャロラインは特に気にすることなく、
「あはは! フレディちゃんにヴァレちゃんにタイちゃんも久しぶりねぇ!」
と、フレデリック、ヴァレリー、タイラーに向かってニックネームっぽい呼び名でそう呼んだ。
そんなキャロラインに、フレデリック達は「はぁ」と一斉に溜め息を吐くと、
「お久しぶりです、キャロライン皇妃様」
と、フレデリックはニコッとしながらキャロラインに向かってそう返事したが、
「……どうも」
「……お久しぶりです」
と、ヴァレリーとタイラーは「まったくもう」と言わんばかりの呆れ顔でそう言った。
すると、
「母様」
「キャロライン皇妃様」
と、近くにいたアデレードとオードリーが、キャロラインに向かってそう声をかけてきたので、それを聞いたキャロラインは、
「あら、アーデちゃんにドリーちゃん! さっきぶりねぇ!」
と、笑顔でオードリーに向かってそう返事したが、反対にアデレードとオードリーの表情はかなり真面目なものになっていて、
「母様。まさかとは思いますが、私達の後、つけてきたの?」
と、アデレードが真面目な表情のまま、キャロラインに向かってそう尋ねると、
「あはは! やーねぇ、偶然よ、ぐ、う、ぜ、ん! 折角フロントラルに来たんだもの、久しぶりに友達のベッキーちゃんに挨拶しようと思っただけ!」
と、キャロラインは笑いながらそう否定したが……。
「いや嘘だろ」
「嘘ですね」
「嘘でしょうねぇ」
と、ヴァレリー、タイラー、そしてフレデリックはジト目でキャロラインを見ながらそう言ったので、
「ええー!? ヴァレちゃん達ひっどーい!」
と、キャロラインはショックを受けた。
そんなキャロライン達のやり取りに、春風をはじめ、誰もがポカンとしている中、
「ま、確かにそれだけじゃないんだけどねぇ」
と、キャロラインは「ふぅ」とひと息入れながらそう言うと、クルッと春風とレナに視線を向けてきたので、それに2人が思わずビクッとなると、
「雪村春風に、レナ・ヒューズさんね?」
と、キャロラインは先ほどまでの明るそうな感じの表情からスッと真面目なものへと変えながら、春風とレナに向かってそう尋ねてきたので、それを聞いた2人は、
「「は、はい」」
と、緊張した様子でそう返事した。
その返事を聞いて、キャロラインはゆっくりと顔だけでなく全身までも春風とレナに向けると、
「はじめまして。私の名は、キャロライン・ハンナ・ストロザイア。ストロザイア帝国皇帝、ヴィンセントの妻をしてるの」
と、2人に向かってそう自己紹介をして、
「よろしくね」
と、最後に笑顔を浮かべながらそう付け加えた。




