第360話 皇妃と別れて……
「それでは、宿泊施設はこちらで手配させてもらいます」
「私はタイラーさんに、このことを報告させてもらいます」
「ええ、わかったわ。それじゃあ、私は色々と準備してから行くわねぇ」
と、オードリー、アデレード、そしてキャロラインはそう言い合うと、その場は解散となり、オードリーとアデレードはフロントラルへ、キャロラインは魔導飛空船の中へと戻った。
キャロラインが船内に入ると、
「あ、あの……」
という声が聞こえたので、その声にキャロラインが「ん?」と反応すると、そこには5人の10代後半くらいの少年少女がいたので、キャロラインは彼らを見てニコッと笑うと、
「さぁ、みんな。オードリー市長の許可は貰ったから、降りる準備してね」
と、笑顔でそう言い、それを聞いた少年少女達は、
『は、はい!』
と、緊張した様子でそう返事した。
一方、フロントラルへと戻ったオードリーとアデレードはというと、
「終わったよ。さ、『白い風見鶏』に帰ろう」
と、門内部の壁に寄ってた春風、レナ、ディック、フィオナに向かってアデレードがそう話しかけると、
『あ、はい』
と、何故か全員、何処かげっそりした様子でそう返事したので、その様子に思わずオードリーとアデレードは「ん?」と首を傾げた。
門を通って都市内部に入ると、
「ふぅ……」
と、春風はひと息入れながら、自身にかけていた「偽装」を解除して元の姿へと戻った。
すると、
「春風さん、今『白い風見鶏』には誰がいますか?」
と、オードリーがそう尋ねてきたので、春風はそれに「え?」と首を傾げると、
「えーと、レベッカさんにデニスさん、ウェンディさんに、フレデリック総本部長さん、ヴァレリーさん、タイラーさん、エリックさんにイアンさんにステラさんにルーシーさん、ナンシーさん、バージルさんにミラさん、そして、俺の『師匠』と、『友人』のミネルヴァさんですが」
と、指折りで数えながら、オードリーに向かってそう答えた。
それを聞いて、オードリーは「そうですか」と返事すると、
「それでは、私も『白い風見鶏』に行きましょう」
ということになって、春風達はオードリーと共に「白い風見鶏」へと戻ることにした。
その道中、
「あの、オードリー市長さんにアーデさん」
と、春風がオードリーとアデレードに向かってそう話しかけると、
「ん? どうしたの春風?」
と、アデレードがそう返事したので、
(一応聞いておくか)
と、春風は心の中でそう呟くと、
「魔導飛空船から出てきた女の人なんですけど……」
と、アデレードに向かってそう尋ねた。
その質問にアデレードは「あー……」と気まずそうな表情になると、すぐに「うん」と頷いて、
「あの人が私のお母さんで、ストロザイア帝国皇妃のキャロラインよ」
と、アデレードは歩きながら春風に向かってそう答えた。
その答えを聞いて、
「その……離れた位置から見た感じですが、結構、個性的な方なんですね」
と、春風が「あはは」と笑いながら言うと、
「「はぁ」」
と、アデレードもオードリーも盛大に溜め息を吐いたので、
「あ、あのぉ……」
と、春風は「やべ。滑ったかも」と言わんばかりの表情を浮かべながらそう声をかけた。
すると、
「……まぁ、私にとっては『いいお母さん』って言えるのは確かかな」
と、アデレードは「はは」と弱々しく笑いながらそう返事して、そんなアデレードに続くように、
「そうですね。ちょっと癖の強い方ではありますが、根は悪い方じゃないんですよ」
と、オードリーも「はは」と弱々しく笑いながらそう言ったので、
(いや、『癖が強い』って……)
と、春風は心の中でそうツッコミを入れたが、
「春風……」
と、レナが突きながら声をかけてきたので、それに春風が「ん?」と反応すると、
「……」
レナは黙って首を左右に振り、それを見た春風は何かを察したのか、レナと同じように黙ってコクリと頷いた。
その後、一行は「白い風見鶏」に着いたので、
「ただいま戻りましたぁ」
と、中に入った春風がそう言うと、
「あ、みんなおかえりなさーい」
と、ウェンディがタタタッと春風達に駆け寄ってきた。
そんなウェンディに向かって、
「こんにちは」
と、オードリーがそう挨拶すると、
「あ、オードリー市長さん、いらっしゃいませ」
と、ウェンディはオードリーを見て「おや?」と首を傾げたが、すぐに丁寧な口調でそう挨拶を返した。
その後、
「ウェンディさん、まだフレデリック総本部長さん達はいますか?」
と、春風がウェンディにそう尋ねると、
「はい、皆さんでしたら、まだ食堂で楽しく語り合ってますよ」
と、ウェンディは笑顔でそうこたえたので、それを聞いた春風は、
「そうですか。ありがとうございます」
と、ウェンディに向かってそうお礼をいうと、レナやオードリー達と共に食堂に向かった。
食堂に入ると、そこにはウェンディの言う通り凛咲とミネルヴァ、レベッカにデニス、エリック達にバージルとミラ、ナンシー、そしてフレデリックの姿もあったので、
「皆さん、ただいま戻りました」
と、春風がそう言うと、
「ん? あ、おかえり春風ぁ!」
と、その声に気付いた凛咲がそう返事をして、それに続くように、ミネルヴァ達も「おかえりぃ」と言った。
そして、
「ああ、おかえりなさい春風さん達……って、おや? オードリー市長もご一緒でしたか」
と、フレデリックがオードリーを見てそう口を開くと、
「ええ。ちょっと報告したいことがあって、春風さん達と共にこちらに来たのです」
と、オードリーはニコッとしながらそう返事した。
その返事を聞いて、
「む? 報告したいことですか? それは一体……?」
と、フレデリックが若干警戒していると、オードリーとアデレードは顔を見合わせて、
「母様……キャロライン皇妃様が来ました」
と、アデレードがかなり真剣な表情でそう言ったので、それを聞いたフレデリックは「ほう……」と声をもらすと、フレデリック、凛咲、ミネルヴァを除いたその場にいる者達全員が、
『な、なんだってぇえええええええ!?』
と、驚きに満ちた叫びをあげた。




