第355話 「空飛ぶ船」がやって来た?
「その魔導飛空船が、どういう訳かこのフロントラルに向かっているとのことでして」
「「……そ、それを先に言えええええええ!」」
と、フレデリックに向かってそう怒鳴ったヴァレリーとタイラー。
そんな彼らのやり取りを見て、
(ええ、何それ『空飛ぶ船』? それって、この世界にも空を飛ぶ乗り物があるってことだよね!?)
と、春風が目をキラキラとさせていると、
「お待ちどうさん」
と、デニスが出来上がった料理を持って厨房から出て来たので、
「取り敢えず、まずは食事にしようよ春風」
と、凛咲が春風に向かってそう言うと、春風はハッとなって、
「あ、そ、そうですね! もうお腹空きましたよぉ!」
と、顔を赤くしながらそう返事した。
その後、春風達はデニスが用意した料理を食べ始めた。
(ああ、この味。何だろう、デニスさんの作った料理を食べると、『帰ってこれた』って感じがするなぁ……)
と、一口一口美味しく頬張りながら春風がそんなことを考えていると、
「しっかし、『断罪官』の次は『ストロザイア帝国』とか、一体何がどうなってんのかねぇ」
「そうですね。わざわざ『魔導飛空船』なんてものに乗ってここに来るとは……」
と、ヴァレリーがうんざりしたかのような表情で、タイラーが「うーん」と考え込むような表情でそう言ったので、2人の言葉を聞いた春風は口の中の料理をゴクリと飲み込んで、
「あの、そんなに珍しいことなんですか?」
と、ヴァレリーとタイラーに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、2人は「ん?」と春風の方へと振り向くと、
「ああ、ここはルーセンティア王国とストロザイア帝国の、丁度中間にあってな、どちらからでも普通に来るなら1ヶ月はかかる」
と、まずはヴァレリーがそう答えて、
「ですが、先ほど話した『魔導飛空船』を使えば、それよりも短い期間でここまで来ることが出来るんですよ」
と、その後すぐにタイラーがそう続いたので、
「おお、それは凄いですね!」
と、2人の説明に春風は再び目をキラキラと輝かせたが、
「……でも、あれは一度の飛行にかなりのエネルギーを消費するの。だから、動かした後は長い充電とメンテナンスをしないと呆気なく壊れてしまうんだ」
と、アデレードが暗い表情でそう言ったので、
「あ、そうなんですか。いいことだけじゃないんですね」
と、春風はアデレードの方へと振り向きながらそう返事した。
更に、
「それなのに、わざわざ魔導飛空船を動かしてまでここに来たにです。一体、あの皇帝は何を考えてるのか……」
と、フレデリックが「うーん」と考え込むような表情でそう言い、
「ちっ! あの強欲皇帝が」
「まったく……」
と、ヴァレリーとタイラーがそう悪態を吐いたので、
「え、何々? そんなに評判悪いの? その『皇帝』って人」
と、気になった凛咲がそう尋ねると、
「ああ、それにつきましては、私が説明させてもらいますね」
と、フレデリックがそう答えたので、それを聞いた凛咲は、
「あ、じゃあお願いします」
と、フレデリックに向かってペコリと頭を下げた。
その後、フレデリックは「コホン」と咳き込むと、
「まず、現在ストロザイア帝国を治めているのは、『皇帝』のヴィンセント・リアム・ストロザイアと、その妻である『皇妃』のキャロライン・ハンナ・ストロザイアです。一応言っておきますが、この2人の間には『皇子』のレオナルド・ヴァル・ストロザイアと……」
と、そこまで説明して、最後チラッとアデレードに視線を向けたので、アデレードはそれを受けると、
「私、『皇女』であるアデレード・ニコラ・ストロザイアと、末の妹である『第2皇女』のエレクトラ・リース・ストロザイアがいる」
と、真面目な表情でそう言った。
そんなアデレードの言葉に、
「へぇ、3人もお子さんがいるんだね」
と、ミネルヴァが目を見開きながらそう言うと、フレデリックは「ええ」と答えて、
「で、肝心のヴィンセント皇帝陛下なのですが、この皇帝、一度『欲しい!』と思ったものを見つけると、どんな手段を使ってでも手に入れようとするというなんとも困った一面を持っていまして、いつしか『強欲皇帝』などという悪名で呼ばれるようになったのです」
と、何処か遠いところを見るような目でそう付け加えたので、
(え、えぇマジですか?)
と、春風が若干ドン引きしていると、
「それだけでもタチ悪いのに、あの皇帝はそうして手に入れたもので自国を更に発展させていってな、そのおかげで国民からの人気も高いもんだから余計にタチが悪いったらないんだ。おかげで誰も奴に文句言えないんだよ」
と、ヴァレリーが忌々しげにそう言って最後に「ちぃ!」と大きく舌打ちをし、
「ええ、何それ? いい人なのか悪い人なのかよくわかんないだけど」
と、それを聞いた凛咲が「マジで?」と言わんばかりに顔を顰めていると、
「うちの父がすみません」
と、アデレードが申し訳なさそうにそう謝罪したので、
「ほっほっほ、あなたが気にすることはないですよ」
と、フレデリックが優しい口調でそう慰めた。
さて、一連の話を聞いて、
(うーん、『強欲皇帝』に『魔導飛空船』かぁ……)
と、春風はそう考え込むと、
「ところで、フレデリック総本部長さん」
と、フレデリックに声をかけたので、
「はい、何ですか春風さん?」
と、フレデリックがそう返事すると、
「今話してた魔導飛空船って、何処に行けば見えますか?」
と、春風はフレデリックに向かってそう尋ねた。
その質問を聞いて、レナ達が「え?」と首を傾げていると、フレデリックは「うーん」と考え込んで、
「そうですね。もしここに向かってるなら、停めるとすれば門の近くでしょうね。都市の中ですと、大勢の人が騒ぎ出すでしょうし……」
と、春風に向かってそう答えた。
その答えを聞いて、
「なるほど……」
と、春風はそう呟くと、すぐに自身の目の前に出された料理の残りを口の中にかき込み、その後同じく自身の目の前にあるグラスの中の水をグイッと飲み干して、
「ご馳走様でした!」
と、両手をパンッと合わせながら言った。
そして、
「それじゃあ……」
と、春風が椅子から立ち上がって食堂の外へと向かおうとしたので、
「は、春風、何処に行く気なの!?」
と、レナが驚きながらそう尋ねると、春風はレナの方へと振り向いて、
「魔導飛空船っての見に行ってくる!」
と、目をキラキラさせながらそう答えて、そのまま食堂どころか宿屋の外へと駆け出した。
その後、レナ達は皆ポカンとした表情になると、
「ちょ、ちょっとぉ! はぁるかぁあああああ!」
と、レナはハッとなってそう叫んだ。




