第353話 ミネルヴァとの「出会い」
「ま、まぁそんな感じで、俺は学生として学校に通いながら、オヤジと一緒に今の実家である『喫茶店』を経営して、師匠の弟子として色んな国を飛び回って、その最中にもう1人『弟子』が出来て、それから3人でまた色んな国を飛び回っていた時に……」
「私と出会った、という訳さ」
と、レナ達に向かってそう言った春風とミネルヴァ。
そんな2人の言葉を聞いて、レナ達が「ほうほう……」と返事する中、
「ちょっとよろしいでしょうか?」
と、フレデリックが「はい」と手を上げたので、
「ん? どうしたんですかフレデリック総本部長さん?」
と、春風が首を傾げると、
「ミネルヴァさんでしたね? 質問を承知でお尋ねしたいのですが、あなたも春風さんと同じ世界の住人なのですか? なんとなくですが、春風さんと凛咲さんとは雰囲気が違いように感じられるのですが……」
と、フレデリックがミネルヴァを見ながらそう尋ねてきたので、
「ああ、当然さ。私は確かに春風と同じ世界の住人だが、彼と凛咲とは違う国で生まれ育ったんだ」
と、その質問にミネルヴァがそう答えると、
「そうなんです。俺達の故郷『地球』に住んでいる種族は、一部の例外を除いて基本的には『人間』だけなのですが、生まれ育った国によって容姿や使う言語が異なるんです。と言っても、言語の方は後で学ことも出来ますが」
と、彼女に続くように春風もそう答えて、
「ああ、そうさ。そして、私は祖国の言語の他にも幾つかの違う国の言語を使うことが出来る。当然、その中には春風の祖国も含まれているんだ」
と、最後にミネルヴァがそう付け加えると、
「おお、なるほど。そういうことでしたか」
と、フレデリックは春風とミネルヴァの説明に納得の表情を浮かべた。
その後、
「で、話を戻すとして……」
と、ミネルヴァがそう口を開くと、
「私の祖国はお世辞にも『治安がいい』とは言えないところで、一見平和だが裏の社会では様々な組織が法に隠れて悪さしたり組織同士で互いに睨み合ったり、最悪の場合は組織同士で血生臭い抗争をしているなんてこともあるんだ。そして、私自身もそんな裏の社会に生きる組織の親玉をしているって訳さ」
と、レナ達に「はは」と笑いながら向かってそう説明した。
その説明を聞いて、
「ほええ、『裏社会の組織の親玉』ねぇ」
「その親玉が、春風君の為にこの世界に来たと……」
と、ヴァレリーとタイラーがそう呟くと、
「春風、お前って実は結構凄い奴なのか?」
と、ヴァレリーが春風に向かってそう尋ねたので、
「そんなことはありません! その頃の俺は、なんの力もないただの一般人でしたから!」
と、春風は「断じて違う!」と言わんばかりに声を張り上げながらそう答えた。
すると、
「はっはっは! そんなに謙遜することはないぞ春風。何せ君は、この私のハートを射止めた人間なのだから」
と、ミネルヴァは笑いながら、春風の言葉を否定するかのようにそう言ったので、
『え、何それどういう意味!?』
と、それを聞いたレナ達が一斉に春風とミネルヴァに向かってそう尋ねた。
彼女達に質問に対して、
「いや、それは……!」
と、春風は答えるのを躊躇ったが、ジーッと見つめてくるレナ達の視線に耐えられなかったのか、観念したかのように「はぁ」と溜め息を吐くと、
「その……レナ達は、俺のドレス姿、見たことありますよね?」
と、恥ずかしそうに顔を赤くしながら、レナ達に向かってそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「え、何それ春風……!?」
と、ショックを受けた凛咲を他所に、
「え? あーうん。知ってるけど……」
と、レナが「訳がわからん」と言わんばかりのポカンとした表情でそう答えると、
「その……俺、師匠と何度か旅をしている最中に、ああいう姿をしたことが何度かありまして、その時のことがどう伝わったのか、ミネルヴァさんの組織の耳に入ってしまったんです」
と、春風は「恥ずかしさ」と「気まずさ」が入り混じった表情でそう言い、それを聞いたレナ達が、
『え、マジで!?』
と、声をあげると、
「で、今から2年前、ある古代文明の謎を追っていた俺と師匠ともう1人の弟子が、ミネルヴァさんとミネルヴァさんの組織の面々と対峙することになってしまって、その時にミネルヴァさんにギャンブルによる勝負を申し込まれたんです」
と、春風は気まずそうな感じでそう話しを続けて、それを聞いたレナが、
「ぎゃ、ギャンブル?」
と、タラリと汗を流しながら春風に向かってそう尋ねると、春風は「うん」と頷いて、
「その際ミネルヴァさんに、『そちらが勝ったら、我々の持つこの古代文明が生み出した遺物をくれてやる。だがもしも我々が勝ったら、そちらの雪村春風をもらう』なんてことを言われまして……」
と、レナ達に向かって、「あはは……」と気まずそうに笑いながらそう答えた。
その答えを聞いて、レナ達は「はぁ……」と声をもらすと、
『な、なんだってぇえええええ!?』
と、皆、大きく目を見開きながら驚きに満ちた叫びをあげた。
そんなレナ達を見て、凛咲は露骨に嫌そうな顔を浮かべながら「ふん!」と鼻を鳴らすと、
「あの時は『何言ってんだこいつ?』と、私も本気でそう思ったわ」
と、露骨に不機嫌そうな表情と口調でそう呟いた。
その呟きが聞こえたのか、レナはハッと我に返ると、
「そ、それで、そのギャンブルはどうなったの?」
と、春風、凛咲、そしてミネルヴァを見回しながら、恐る恐るそう尋ねた。
その質問に、凛咲は「ん?」と反応すると、
「勿論私が勝ったわ。あの時は私も、『春風を取られてたまるのもか!』と本気で挑んだわよ。で、その想いのおかげで、私はなんとか勝利することが出来たの」
と、凛咲は真面目な表情でそう答えたので、それを聞いたレナは思わず「ほ……」と胸を撫で下ろした。
だが、
「そう、あの時は師匠が勝って本当によかったと思ったんですが、その後負けて落ち込んでたミネルヴァさんを見て、なんか放っておけないと感じてしまって、『もしよろしければ、うちに遊びに来てください』と言ってしまいまして……」
と、春風がまた気まずそうな表情でそう言ったので、それを聞いたレナ達は、
『ま、まさか……』
と、呟くと、
「はい、あの勝負以来、ミネルヴァさんと組織の方々がたまにうちに来るようになってしまいまして……」
と、春風は「あはは、参ったねぇ」と笑いながらそう言ったので、
『何やってんのぉおおおおお!?』
と、レナ達は一斉に春風に向かってそうツッコミを入れた。




