第351話 「地球」という世界と、春風との「出会い」
今回は、いつもより短めの話になります。
「まず、私、春風、ミネルヴァ、そして『勇者』達の故郷『地球』なんだけど、ざっくり言うと……」
と、レナ達に向かってそう話し始めた凛咲。
そんな彼女の言葉に、レナ達がゴクリと唾を飲むと、
「『職能』、『ステータス』、『スキル』の概念がない!」
と、凛咲は指を3本立てながらハッキリとそう言い、それに続くように、春風とミネルヴァは腕を組んで「うんうん!」と頷くと、
『な、何だってぇえええええ!?』
と、レナ達はギョッと大きく目を見開きながら叫んだので、
(まぁ、そりゃそうなるよなぁ)
と、春風は「はは……」と頬を引き攣らせながら、心の中でそう呟いた。
そんな春風を他所に、
「おいおいちょっとぉ! その3つの概念がないって本気で言ってるのか!?」
と、ヴァレリーが凛咲に詰め寄ってきたので、
「ええ、本気よ。まぁ、『完全にない』ってわけじゃないわ。この世界でいう『スキル』にあたる特別な能力を持った人間は確かにいて、多くは『国』によって保護されているか、その『国』に隠れて独自の文化を築いて、その中で生きてるって感じね」
と、凛咲は「どーどー……」とヴァレリーを宥めながらそう答え、
「因みに、私と春風、そしてもう1人の『弟子』も、そんな特別な能力を持った人間達に出会ったことがあります」
と、最後に「ふふん!」と胸を張りながらそう付け加えた。
その言葉を聞いて、レナ達が「おお!」と感心する中、
(……そう。特別な能力を持った人間は確かにいる)
と、春風は表情を暗くしながら、心の中でそう呟いていた。その際、頭の中に浮かんだのは、
(水音……)
もう1人の凛咲の弟子にして、「勇者」としてこの世界に召喚された少年の姿だった。
すると、
「なるほどそうでしたか。しかし、『ステータス』や『職能』の概念がないなら、どのようにしてその『地球』に住む人々は生きてきたのですか?」
と、フレデリックがそう尋ねてきたので、
「生きる為に何が出来るか、自分と周りにあるものをひたすら調べて、試して、時には他の人と力を合わせて、時にはその他の人を犠牲にして……そういったことを何千、何万と繰り返して、人は生きて、それを『未来』へと繋げて、最後に死ぬ。そうして、『世界』は今日まで存続してきたわ。そこに『神様』が割り込む要素は……まぁ、ないとは言えないけど、基本的には人々の『努力』の結果が現在に繋がったってことになるわね」
と、凛咲は真剣な表情でそう答え、その答えを聞いて、
「……そうですか」
と、フレデリックは納得の表情を浮かべた。
すると、凛咲は「はぁ」と溜め息を吐いて、
「まぁでも、人間全てがそれぞれ天寿をまっとう出来るわけでもないのよねぇ。不慮の事故で死ぬ者もいれば、不治の病で死ぬ者、もっと悪ければタチの悪い事件に巻き込まれて殺されるか、酷い殺し合いの末に死ぬってのもあるのが現状なのよ」
と、暗い表情でそう言ったので、その言葉にレナ達が「え、そうなの?」と反応すると、
「そう。そして、私と私の『家族』もそんな不慮の事故に巻き込まれて、私だけが生き残り……『家族』……両親と弟は死んじゃった」
と、凛咲は悲しそうな表情を浮かべながらそう言った。
それによって、食堂内がシーンと静かになる中、
「それは……辛すぎる話ですね」
と、タイラーがそう口を開いたので、それに凛咲が「そうね」と返事すると、
「その時の私は、『家族』を失った事実と、一人ぼっちになってしまったことに耐えられなくて、何度も自殺しようと考えたわ」
と、更に悲しそうな表情でそう言いったが、
「春風に出会ったのは、そんな時だったの」
と、すぐに少しだけ表情を明るくしながらそう付け加えて、その言葉にレナ達が「え?」と反応する中、
(あれ? なんか、嫌な予感がするんだけど……)
と、春風が首を傾げていると、
「そう、『家族』だけでなく『生きる希望』もなくし、死のうとした私に向かって春風は言ったわ」
と、凛咲は大袈裟に自身の体を動かしながらそう言い、
「『ごちゃごちゃうるさい! 黙って僕に救われろ!』とね!」
と、何故かかっこよさげなポーズを決めながらそう付け加えた。
その言葉を聞いて、
『なっ!』
と、レナ達は絶句し、
「ちょ! 師匠!?」
と、春風はギョッと目を大きく見開いて恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていると、
「あー。失礼を承知でお尋ねしますが、その時のあなたの年齢は……?」
とフレデリックが恐る恐るそう尋ねてきた。
その質問に対して、凛咲は答える。
「私? 14歳だけど」
その答えを聞いて、
『14!?』
と、レナ達はショックを受けたが、
「で、春風はその時7歳」
と、そこへ凛咲が更に爆弾発言を投げてきたので、
『7歳!?』
と、レナ達は更にショックを受けた。
そんなレナ達を前に、
「ええ、そうよ。その言葉を聞いた瞬間、私の中にあった『死にたい』という想いは吹っ飛んでしまった。そして、その時から私は決意したの。『この子の為に生きたい!』『この子と共に生きたい!』ってね」
と、声高々にそう言った凛咲。その表情はまるで「恋する乙女」のようにうっとりしていた。
そしてあまりの事実に、
『……』
と、レナ達は口をあんぐりと開けたままその場に固まり、
「師匠ぉおおおおお! 何てこと言ってんのぉおおおおお!」
と、春風は頭を抱えて絶叫した。
因みミネルヴァはというと、
「ふん!」
と、何故か露骨に不機嫌そうな表情になっていた。
すると、
「……春風さん」
と、フレデリックが春風に声をかけてきたので、
「は、はい。何でしょうか?」
と、春風が恐る恐るそう返事すると、
「あなた、幼い頃から『漢』だったのですね」
と、フレデリックはグッと親指を立てて、穏やかな笑みを浮かべながらそう言ったので、
「やっかましいわちくしょおおおおおおおっ!」
と、春風はフレデリックに向かって怒鳴るようにそう叫んだ。




