第349話 「みんな」への紹介
「えー。皆さん、紹介します。こちらは俺の『師匠』の凛咲さんと、友人のミネルヴァさんです」
と、食堂内でレベッカ達に向かって、凛咲とミネルヴァを紹介した春風。
何故そういう状況になったかというと、春風達が食堂に入ってすぐ後に、
「あー、ところで春風」
と、エリックがそう口を開いて、それに春風が「ん?」と反応すると、
「そちらの女性2人についてなんだが……」
と、エリックはチラッと春風の後ろに立つ凛咲とミネルヴァを見ながらそう言い、それに続くように、
「そうだな。タイラーさんは『お前の故郷から来た』って言ってたが……」
と、イアンも凛咲達に警戒するかのような視線を向けてきたので、
「ああー。そうですね……」
と、春風は微妙な表情を浮かべてそう返事して、食堂にいる者達全員に2人を紹介することにしたのだ。
そして今、春風が凛咲達のことを紹介すると、
「どうもはじめまして、陸島凛咲です。ああ、『凛咲』が名前ね」
「ミネルヴァ・レーガだ。『ミネルヴァ』で構わないよ」
と、凛咲とミネルヴァも笑顔でそう自己紹介した。
だが、
「ふーん、『師匠』に『友人』ねぇ……」
と、レベッカは2人に対して怪しいものを見るかのような視線を向けて、
「ず、随分と歳の離れた『友人』を持ってるんだな、春風」
と、エリックもタラリと汗を流しながら言った。
そして、それは他の人達も同様で、皆、凛咲とミネルヴァを見て若干警戒していたので、
(あ、あれぇ? なんか俺、おかしなことでも言ったかな?)
と、春風が不安になっていると、
「おいおい春風ぁ……」
と、いきなりミネルヴァが春風の肩に腕を回したので、
「ちょ、ミネルヴァさん!?」
と、それに春風がギョッとなっていると、
「『友人』っていうのは違うんじゃないかな? 私と君との関係は、そんな言葉じゃ片付けられないものだろ?」
と、ミネルヴァは春風の頷をクイッと動かしながらそう尋ねてきたので、それを見たレナとアデレードは、
「「あ!」」
と、ギョッと目を大きく見開き、
「「「「きゃあ!」」」」
ステラとルーシー、フィオナ、更には何故かいつの間にかいたウェンディが顔を赤くしながらそう叫び、
「あらあら……」
「ほほう」
と、ミラとナンシーは感心するかのような表情でそう声をもらしたので、
「み、ミネルヴァさん! みんなの前で恥ずかしいですよ……!」
と、春風は「ま、まずい!」と言わんばかりの焦った表情を浮かべながら、ミネルヴァに向かってそう言うと、
「ちょっとミネルヴァ!」
と、いきなり凛咲が春風をミネルヴァから強引に引き剥がし、その後すぐに春風を抱き締めながら、
「私のハニーを困らせないでよ!」
と、ミネルヴァに向かってそう怒鳴った。
すると、
『は、ハニー?』
と、レナをはじめとしたエルード勢がそう疑問を口にしたので、
「ちょ、ちょっと師匠!」
と、レナ達の言葉に春風は驚くと、
「いつも言ってますけど、その『ハニー』って呼ぶのやめてくださいよ! 俺、男なのにぃ!」
と、本気で恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら凛咲に向かってそう怒鳴ったが、
「えぇ!? いいじゃない! だって春風、可愛いから『ダーリン』じゃなくって『ハニー』の方がピッタリなんだもん!」
と、凛咲は頬を膨らませながらそう言い返して、それを聞いたレナ達が「え?」と声をもらすと、一斉に春風に視線を向けて、
『あ、確かにそうかも……』
と、皆、納得の表情を浮かべた。
そんなレナ達に、
「こ、こらぁ! 納得しないでください! 何度も言いますけど、俺、男! 男なんですから!」
と、春風は更に焦った表情を浮かべながらそう抗議していると、
「あ、あのぉ、兄貴……」
と、ディックが恐る恐る「はい」と手を上げたので、
「ど、どうしたのディック?」
と、春風もディックに向かって恐る恐る尋ねると、
「その……兄貴の『師匠』ってことは、その人も『魔術』を使えるの?」
と、ディックはチラッと凛咲を見ながらそう尋ね返した。
その質問に対して、
「う! そ、それは……」
と、春風がダラダラと汗を流しながら答え難そうにしていると、
「ん? 私?」
と、凛咲はポカンとした表情でそう呟き、その後「うーん……」と考え込むと、
「いや。私がハニーに教えてるのは、簡単な『武術』と、『冒険』かな」
と、ディックに向かってそう答えた。
その答えを聞いて、
「ぼ?」
『冒険?』
と、ディックだけでなくレナ達までもが「え?」と首を傾げていると、
「そ、冒険。私、こう見えても職業『冒険家』なんだよねぇ。だから、今言ったようにハニーには簡単な武術の他に、『冒険に関する知識』と、『冒険に対する心構え』を教えているの」
と、凛咲は胸を張りながらそう答えた。
その答えを聞いて、ディックが「そ、そうなんですか」と返事したが、
『……』
ディック以外は皆、「怪しい。怪しすぎる」と言わんばかりに目を細くしていたので、
(や、やばい。困ったなぁ、なんて説明すればいいんだ?)
と、春風はどうすればいいのかわからずオロオロし出した。
その時だ。
「……なぁ、春風」
と、ヴァレリーがそう口を開いたので、
「な、なんですかヴァレリーさん?」
と、春風が恐る恐るそう返事すると、
「もうここまできたら、話してもいいんじゃないのか?」
と、ヴァレリーは「観念しな」と言わんばかりの表情でそう答えたので、
「うぅ! そ、それは……」
と、春風はその答えに狼狽えていると、
「春風……」
と、いつの間にか隣に近づいていたレナが小声でそう声をかけてきたので、
「な、何、レナ?」
と、春風も小声でそう返事すると、
「大丈夫、全部じゃなくても、自分自身のことをある程度話せばいいんじゃないかな?」
と、レナがそう提案してきたので、それを聞いた春風は「そ、それは……」と困った表情を浮かべたが、チラッと自身の周囲にいる人達を見ると、みんな話を聞く姿勢になっていたので、
(うう。まぁ、ある程度なら……)
と、春風は心の中で観念したかのようにそう呟くと、「ふぅ」とひと息入れて、
「実はその……数日前に……」
と、レベッカ達に向かって話を始めた。




