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2-9

助けたダークエルフの少女をベッドの上に寝かせる。今は誰も居ないから、村の中にある部屋に寝かせても大丈夫だろうと、マルグリットは椅子に座って休んでいた。

セレスの村長が居る場所はもっと先だけど、今すぐ行くには他のエルフから道を聞かなくては。

しかし、問題はセレス側のエルフと会った時だった。今は基本的に連絡手段が限られていると。

「本当なら、もっと早く連絡したいんだけど。セレス内部の情報統制が出来上がって居て。君みたいな子が居るのはわりと危ないんだよね。」

フィーネアというエルフの少女は、マルグリットに会って彼女からの話を聞いてすぐに協力関係になっていた。

気絶しているダークエルフの少女の介護を手伝い、他のエルフに見つからない場所に案内してくれた。

「どうして、他のエルフが居ないの?」

「皆、狩りの遠征にいっている・・というのは建前で。タルタロスとの戦闘のために集められたの。人が少ないのに、男の人が集められたせいで今は女子供しか居ない。多少男手が足りなくても問題ないと言われたけど、問題は力仕事とかじゃなくて私たちを守る手段が限られているから。ヘラが山頂で地脈や精霊から魔力を吸い上げるせいで、私たちの力も弱まってきている。」

「貴方たちの魔力は、内部の魔力機構だけではないの?」

いいえ、とフィーネアは首を振った。

「私たちエルフが、この地を聖地と呼ぶ理由は私たちの能力を底上げしてくれる精霊たちが居るからよ。これは、本当は黙秘事項なんだけれど。精霊たちへの信仰を意味する、聖地信仰。その信仰が守られ続けている限り、私たちは本当であれば人間のような文明を持たなくても生きていける。これは驕りでも怠慢でもなくて、純粋にエルフが自然を破壊せずに生きていく一種の潔さから成り立っていた。その気になれば、亜人のように狩りをしなくても私たちは太陽と月の光だけで一か月凌ぐことも出来るエルフが居た。」

「は、初耳・・。」

言葉通りに解釈すれば、一部のエルフは太陽と月から得られる魔力だけで一か月何も食べずに生きていけるのだろうか。

「私たちはそういった、超人的な・・というのは変だけど。そう、神に等しい一種の生命に至るために魔力機構の研究をしていて。何人かは本格的に不老不死へ至ろうとしていた。でも、その道にいたるには険しく誰もが頓挫。私みたいに隠れて人間や亜人と交流するようなエルフは、裏切り者と言われ破門の対象になるのよね。」

「裏切り・・?何も悪い事していないし、何も酷い事はしてないじゃない。」

「いいえ、良い事でも結局破門の対象になるのよ。自然の富を使わず魔力だけで生きていこうとするエルフは、ある意味他の種族と比べて非現実的な思考法をしているの。元々私たちは同じ種族から辿ってきた、魔力によって肉体の中を変化させられてきた存在なのだから。そう、例え小魚が生きるために必要な水を汚したくないからといって、その水を使わないわけにはいかない。魔法だけで身を清め、そして体内にある栄養を保つのがどれだけ苦痛か貴方には分かる?」

「あ、あの。えっと、」

「セレスやタルタロス。その他の部族のエルフたちの中には、そういった半不老不死の存在になろうとして失敗してきた人たちが居る。聖地信仰の最終目的を達成させられるために私たちは生きていたけれど、その夢はヘラという魔鳥によって砕かれました。貴方が聞きたい事は一応全部言ってみたつもりだけど。どうかしら?」

何が何だか分からず、マルグリットは頭が焼けそうだった。

体力だけは自信あるが、言語能力に難ありのためどうしてもフィーネアのような人とは相性が悪すぎる。

「えっと。貴方って、どういう人、なの?」

「私は上の人から待機命令をくらっていて、暇をしているエルフの錬金術師。それだけだけど、何か他に質問はある?」

「えっと。わ、私が聞いたことを言うけど。セレスはヘラによって聖地の魔力を吸い上げられた事を理由に、私たちと協力しているけど。タルタロスとの闘いでどうしても分からない事があるの。」

「何?」

「人間や亜人含め、私たちリディア王国側はエルフが内部抗争をする理由が分からないの。貴方たちは『ほぼ同じ』エルフなのに、まるで昔の小国の人間たちのように争い続けている。今もその争いが始められていて、私の上官はエルフを何処か悪い人たちのように考えてる。」

「そう。確かに貴方からしてみれば、エルフはかなりおかしい事をしているわね。でも、実はおかしくもない。人間とそう大差ないのだから、人間並みに悪い人も多い。それで、その聖地管理の権力を何とか抑え込もうとするエルフが、セルフやタルタロスのリーダーに居たらどうする?」

「つまり、最初からエルフは一つじゃないの?」

「まず、どうしてエルフが一つの民族ではなく、大昔の人間のように部族として分かれているのかを説明しないといけないわね。私たちは、基本的に魔力だけで生存する事を目標とした聖地信仰を持っていた。そして、その聖地信仰を守るために私たちエルフは生活していた。けれど、その聖地信仰に関しては解釈によってさまざまな違いが出てきてしまう。禁則事項を破る事になるけど、いいかしら?」

「私に聞かれても困るんだけど。それで、貴方が危ない目にあったら・・。」

「貴方に拷問されましたって言えばいいんじゃないかしら。」

「一応・・聞いてみる。」

「エルフは最初は確かに一つだったのかもしれないけど、でもやっぱりエルフにも違いは出てきてしまう。精霊に対する解釈の違いの古典的な言論の争いの一つに、火属性だけを除外して水、土、風属性をエルフの主な魔法教科とする。ただ、この考えには問題があって、エルフには基本的に多少なりとも全属性は使えるし、聖地の中には火属性の精霊もかなりの数はあった。更にエルフは属性ごとに信仰の対象を厳密化しようとした人は居るけれど、あまりの意味の無さにその古典的な信仰は数百年前に廃れてしまう。そして出来上がったのが、コルネリウスというエルフが考えた聖地信仰。全属性の精霊を信仰し、魔法によってのみ生きるエルフを最大の目標とする。聖地の力を利用して私たちエルフはより独立した環境を作り上げようとした。本当なら、エルフの国家を誕生させる事は可能だったの。」

「エルフの・・国家?」

「でもそれは無理だった。リディア王国の魔女、リゼットによってエルフたちは暫定支配され、聖地の中でしか生活を許されなかった。リゼットは私たちのような能力のある存在を一か所にとどめておく目的があったらしいけど。」

「リゼット・・聞いたことあるけど、その魔女は裏切りの援助を密告されて幽閉されたんだよね。」

「えぇ。リゼットは幽閉された後、消息を絶った。何が起きたのかは不明だけれど、彼女のおかげでエルフも動けなかった。」

「おかしいよそれ、いくら聖地でも、こんな僻地で幽閉されていたなんて・・。」

「私たちエルフの正式名称を言ってみなさいよ。」

「ノーディのエルフ・・?」

「ノーディはね。300年前の単語が変形して地名になっているけど、囚人って意味があるの。私たちはリゼットとコルネリウスにより集団的に聖地の精霊と契約させられたせいで、他の国のエルフと違った道筋を辿る。多分、外国側で生きているエルフのほうがよっぽどマシな生活をしているんでしょうね。」

フィーネアはそう言って笑う。その笑みが一体何なのか、マルグリットは緊張に支配されてしまった。


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