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2-7

地中から一瞬にして生成されるゴーレムに対し攻撃を試みる。

一撃を入れたが、その硬さは思った以上にあり完全には破壊しきれなかった。

「これは・・!?」

強打したツヴァイヘンダーからの衝撃が両腕に響いてくる。少なくともこのゴーレムは即席として生成されたものではなく、事前から用意されたものだ。

ある程度の時間と魔力さえあれば例え土であろうと鉄並みの硬度を持つゴーレムを生成できる。これほどのゴーレムとなると、ダークエルフが生成したものと考えて間違いない。

「ならっ!!」

ゴーレムの拳をしゃがんで回避し、その直後にツヴァイヘンダーに付加されてる魔法属性を起動。火属性の青い光が刀身に刻まれた時にゴーレムの腹を横に切り裂いた。

触れた対象の魔力構成さえ破壊できれば、硬度は関係なくなる。しかし、いつまでも同じ攻撃を行うわけにはいかない。

「このまま戦闘を行うのは危険です、退避を!」

「無理だ!かなり遠距離から矢が飛んできて身動きが取れない!」

影から飛来してくる矢が兵士に命中する。全員でお互いを防御し、盾を構えているがこれではゴーレムの餌食になってしまう。

すぐにマルグリットは移動し、動けない兵士を攻撃しようとするゴーレムを一撃で倒すがこれでは魔力の消費が早すぎる。

ツヴァイヘンダーの純粋な物理攻撃とマルグリットの腕力だけで倒すのは明らかに難しい。必要以上に時間が経つと、自分がゴーレムを倒す前に兵士が皆殺しにされてしまう。

「私のような銀狼の対策・・?」

もしダークエルフがそこまで考えてるのだとすれば、今回の戦いはそう簡単には終結しそうには感じなかった。

しかし、今は考えている余裕など無い。マルグリットはゴーレムの片足だけを斬り倒し、三体ほどのゴーレムを一瞬で倒した。これですぐには動けないだろう。

「私の事は構わないで・・!」

「お前が囮になるのか!?」

「普通の人間がゴーレムを相手にするのは無理です!!」

「くっ・・」

アルディは自分の無力さに嫌気を感じたが、仕方が無い。

「撤退だ!全員死ぬなよ!」

兵士たちはそのまま盾を構える形で後退を開始。マルグリットは飛来してくる矢を払い斬り、守護に専念した。ゴーレムも修復を開始しており、また迫ってくるのは確実。

マルグリットは渾身の一撃をゴーレムの頭部に浴びせたが、やはりまだゴーレムの数は増えようとしている。

一体どういう人物が、何のつもりでこんな真似をしているのか。

ダークエルフの部族はまだはっきりしない、普通のエルフもよく認知されていない存在になっている。

彼らがこの状況に絡んでいる可能性は高いが、ダークエルフの目的が不明確過ぎる。

「マルグリット!」

「私は大丈夫です。こう見えて頑丈だから・・!」

「くっ、死ぬんじゃないぞ!」

そのまま後退していく兵士たちとアルディを見て、マルグリットはこのまま戦い続ける事に気合を入れる。




外に出るのはかなり久しぶりだが、しかし爽快とは言えなかった。

ナツキが見たそのエルフの村の風景は貧しいという感想が一番最初に来ていた。

何もかもが劣化が激しく、一瞬で倒壊してしまいそうな危うさがある。

しかし、エルフが村を作ったのは割と最近の事らしい。いっその事人間の職人に任せてしまえばいいが、エルフの族長たちはそれを拒んでいた。

ミリアの言う通り、これはかなり精神的に滅入る。むしろエルフ全員がこの聖地を去って人間の住む領域に引っ越せばいいが。

「ナツキ、どうしたの?」

「ちょっと、お化けが出てきそうな空間で。リゼットは大丈夫なのか?」

「そうね。鉈を持ったおばあさんが襲ってきそうな気分ね。」

リゼットもナツキとほぼ同じ感想を持っていた。

このセレスが住む村は存在自体が既に駄目で、ミリアも流石に住むにはきつい場所なのだろう。

「人の感覚って不思議なものね。種族が違うのに、感覚だけは皆同じようになっている。あの女も、この村で生きていくストレスでいっぱいになって居たみたいだけど。」

「ミリアは、いつから限界になっていたんだろうな。」

「さぁ。でも、はっきり言うと300年前にあった貧民街よりも酷い出来じゃないかしら。」

「貧民街より酷いか・・。」

例え貧乏人が住んでいる町でも、元は職人が作った建物だ。多少の扱いさえ出来ていればそこまで酷くはならないだろう。

しかし、この村は一瞬で滅びそうな危うさを持っている。恐らく、普通に生きていくことは人間には不可能だろう。

「都市へ行く?」

「いいえ。少し考え事をしてからにしましょう。」

「考え事って。何をするんだ。」

「あと一歩で滅びそうな村がここにあったとして、貴方が感じたのは死にそうというだけ?」

「まさか、救おうとか言い出すんじゃないだろうな。」

「救う、というよりも。この場合人間の居住権を認めさせればいいだけだもの。」

「え?」

「つまり、作り直すこと。この聖地はね。『地盤だけ』はいいのだから。適切な整備さえすれば聖地の名に相応しい状態になるのよ。でもリディア王国がそうしなかったのは、何等かの理由で条約を撤回できなかったんでしょうね。想像は難しくないし、私の勘からしてわざと人間が入れないようにしているんじゃないかしら。」

「わざと、ねぇ。あるのかそれって。」

「大体、エルフが知能があるにも関わらずどうして危険を冒してまで孤立にこだわるのかしら。」

「それはミリアも分かってないからなぁ。」

「結局、誰も分からないまま時間は過ぎていくのね。ミリアを適当にぼこって族長たちの居場所を吐かそうかしら。」

「物騒な事言うなよ。」

「じゃぁ裸にしてサキュバス地獄に遭わせようかしら。」

「待て、サキュバスを使うのは止せ。大体、そんな事をしたらミリアも流石に困るだろう。」

「まぁ、ミリアの事は置いておいて。レジーナという子はどうしたの?」

「さぁ。何かここで用があると言ってたけど。結界の中から出てきて、結局こんな場所に居なくちゃいけないんだから。困ったものだな。」

「私としては、エルフがどんな馬鹿なのか明確にできてすっきりしているけど。昔から頭がおかしいのね。」

「亜人よりもか?」

「魔法だけを追求していると、どうしても他の所が駄目になるのかしら。亜人は餌付けをすれば大人しいけど。エルフは違って人間に対して敵意剥き出しだもの。」

「リゼットは、この村を救いたいのか。」

「救いたいというよりは、実行可能な解決策があるにも関わらずこの状態だということが気になるのよね。この状態、かなり前から続いているのは異常よ。」

確かに、こんな場所に暮らしているよりはもっといい場所があるだろう。建築ができないのなら、既にあるものを使ってもいい。だというのに、この場所はどこか歪な所が多すぎる。

「ところで、サキュバスはどうしたんだ?」

「さぁ。外に出て行った後は知らないわね。」

「あいつを外に出しておいて大丈夫なのか?もし何かあったら・・。」

「不安になったの?まぁ、彼女の事だから一人や二人夢魔で酷い事をしているのかしら。」

「やっぱり駄目なんじゃないか。」

「あの子の性癖を考える以上は仕方が無いもの。サキュバスが一体どういう生き物かは知らないけれど、鬱陶しい以外は別に気にならないわね。」

その感想はかなり矛盾していると思うが、リゼットはサキュバスを心の中でどういう感じにとらえているのだろうか。

嫌っているようには見えないが、サキュバスは今何処に居るかもあまり気にしていないようだった。


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