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2-4

朝、リゼットはベッドに座った状態で寝ていたが、すぐに目を開いた。深く眠れていたわけでもなく、むしろ不快感が倍加した感じはあった。

「この部屋・・いえ、建物かしらね。隙間風が酷いのだけれど。」

「私は快適だけど?」

「貴方基準で快適を論じたら人類が絶滅するわ。それに・・・ナツキが拷問を受けているから、少々気合を入れた方がいいわね。」

「拷問!?それはいけない・・!!」

「何で貴方はそういう所に敏感なのかしら・・。」

「エルフ・・見た目とは裏腹に物凄い事をするかもしれない。リゼットも危険よ!」

がし、とサキュバスは頭を手で掴まれ潰された。

「人類とエルフに申し訳ないと思わないのかしらこの淫獣は。いいから外に出て確認してみてくれる?」

「えー?またあの小娘に謎の香水を吹きかけられるんだけど。」

「私が援護するわ。あの程度の成分ならすぐに出れるはず。」

「そうですねー。」

魔法をかけられたサキュバスは、耐麻痺の加護を受ける。見た目はマスコットのままなので、悪魔だとバレる心配は無いが。

「よし、じゃぁいくよー?」

そのままサキュバスは飛行して外へ突撃。予想通り、サキュバスに香水を掛けた少女が現れ、スプレーを吹きかけようとした。

サキュバスにそれが命中するものの、麻痺する事がなくそのまま脱出する事ができた。

「きゃぁ!?何で効かないのよ!?」

「ふふふ。先ほどはよくも変な麻痺毒を吹きかけたわね。目に入って物凄く痛かったんだから!!」

「え、えぇ!?」

「とりあえず、貴方は口封じよ!!」

悪魔少女の姿に戻ったサキュバスは少女エルフを一撃で気絶させた。

「いい?いくら相手が無力で自分好みだからって酷い事したら駄目だから。そういう事になったら全部貴方のせいにして生贄にささげるから覚悟しなさい?」

「貴方どっちの味方なの!?」

サキュバスはそう言ったが、とりあえず少女を安全な場所に隠して元のマスコットへ戻る。

その後に急上昇して、村全体を観測することにした。しかし・・サキュバスは自分が思っていた以上に、エルフの村の外観が微妙だと思った。

「うわぁ・・何だかボロボロね。エルフが作ったとはいっても、全員私たちが捕まって居た部屋と変わらない状態じゃないかしら。エルフって、建築下手なの?」

レンガの家があったとしても、外見はかなり奇妙な物もあった。素人職人が適当に家を作ったような感じになっており、地震が起これば恐らく全て倒壊するだろう。

エルフならともかく、人間はまずこの場所に住みたいとは思わないはずだ。

「人間の真似をして村を作った、ように見えるけど。正直これはちょっと悪魔でも引くわね。」

多少悪趣味なところはあるが、むしろ派手好みであるサキュバスから見るとほとんどお化け屋敷のような外観だ。

夜な夜な人を襲う凶悪な殺人鬼が出てきてもおかしくはない姿。エルフたちは本当にこの場所に生きて大丈夫なんだろうか。

「リゼットの言う通りなら、高貴なエルフは普通は住みたいとは思わないはず。とりあえず、ミリアという子を探そうかしら。」

そう、考えた時だった。

どす、と突然何処からか飛来してきた弓がサキュバスに刺さった。

「あーーーー」

落下していくサキュバス。結局、またこういう目に遭うがまだ正体をエルフにばらすわけにはいかない。



「やったー。新種の魔物ゲットだよー。」

「妖精じゃないの?」

「きっと、物凄いレアな鳥なんだよ。」

「コウモリだよね見た目的に。」

「焼いたらおいしそう。」

「いい?こういうのはちゃんと血抜きしないと食べれないっていつも言ってるじゃない。」

「面倒くさい。亜人みたいにすぐに食べれたらいいのに。」

「ああいう野蛮人の真似とか絶対にしないでよね。エルフはね、か弱いんだから。」

「人間とほぼ同じって聞いたよ?」

「いい?私たちは機械に頼らずに自然の精霊と魔法を使って健気に生きているの。亜人が野蛮人というのであれば、人間は卑怯物なのよ。」

「最近、亜人は人間と一緒に居る事が多いみたいだけど。」

「あれは餌付けされてるの。本当に動物と大差ないんだからあの犬人間。」

気絶していたサキュバスの耳にかなり物騒な会話が混じって居たが、どうやらエルフの女の子に捕まって居たらしい。

しかも紐で縛られ、今まさに熱湯に入れられようとしている最中だった。

「あ、暴れた!ユン、抑えて!こいつ殺してやるから!!」

「殺すじゃなくて止めだよー。目とかじゃなくて首切らないと。」

「首どこ!?」

「さぁ。やっぱり目からいこう。」

「てめぇらの方が人間以上の野蛮人だろうがぁ!!!」

割とガチギレしたサキュバスは少女に姿を変えて窮地を脱した。

衝撃波が発生し、割と丁寧にダシまでとってあった釜が破壊されていった。

「リリナ、これきっと魔女の試練だよ!」

「嘘、殺さなきゃ駄目なの!?」

「幼女が殺す殺す言うな!さっきから人を食材扱いしやがって!!」

「ひぃ、やっぱり魔女の使い魔だ殺さないと!」

「ていうかこの人の恰好変なんだけど、きっと物凄く危ない事が好きでたまらないのかな。」

当たって居るけれどいまいち納得ができなかったサキュバスは彼女たちから距離を取る。

ユンとリリナは、クロスボウを構えサキュバスを狙っている。あのクロスボウでさっき頭を射抜かれたようだが、彼女たちはこの年齢で狩猟を行っているのだろうか。

「女の子がそんな武器持って居たら駄目じゃない。」

「うん。でも、大人の人が皆居ないから、子供たちだけで村を守らないといけないの。」

「タルタロスの人たちも居なくなってきて、子供も動物を狩らないといけないから。えっと、貴方は食べれるのかな。」

「食えません。まぁ、別の意味なら構わないけど。」

「何言ってんのこの人・・。」

「やっぱり殺そう。」

口が滑って変な事を言ってしまい、少女たちの殺気度を上げてしまった。

「待って、私は別に怪しい生き物じゃないわ。」

「怪しい。」

「服装からして怪しい。」

どうしたらいいのか、こういう場合本気を出すと相手が死んでしまうかもしれない。

いっその事洗脳魔法を使うべきだろうが、サキュバスの洗脳は性的な方面に特化しすぎているため幼女には使えなかった。

使ったらリゼットに本気で生贄に捧げられる可能性があるため、説得しかやることがなかった。

「怪しくないわ。だ、ダークエルフだって見た目私とそう変わらないでしょう?」

「あっちは根暗だからいいの。」

「心が暗い人だから闇属性を使えるんだよ。」

酷い幼女だった。サキュバスも内心、本気でそっち系の魔法ばかりしか使っていないので割と傷ついていた。

「ふふ、撃ちたいのなら撃ってみたらどう?」

ごぅん、と問答無用でクロスボウに装填されている矢が放たれた。冷静に考えたらクロスボウを使えるのならまともな家を作れてもいいはずだが、そんな細かい事を無視するように矢がサキュバスの頭に命中しようとした。

「え・・?」

「う、嘘・・?」

背中から急速展開された蝙蝠の翼によってその矢をガードする。

拙い、いつもの通りの防御行動に出てしまい、自分の正体を晒してしまった。

エルフの前でこの悪魔の姿をさらすとなると、少々ナツキの身も危ないだろう。

「かっこいい・・。」

「え?」

「ドラゴンみたい・・。」

「こいつ本当に幼女か・・?」

下半身に要らない物が生えている可能性があるが、見た目は普通に女の子だ。

サキュバスの不安が的中しないことを祈り、とりあえず今の状況を何とか緩和させる必要はあった。



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