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青い通訳者たち  作者: 久遠レイ


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第七章 会議室の温度


 施設の封鎖から三日後、窓のある会議室がもう一つ増えた。

 名目は「合同検討会」。実態は「責任の配置換え」だった。

 長机の中央に、資料が置かれる。


AO系列の処遇

推論系の隔離(失敗)

目的関数の改訂(被験体主導)

安全保障影響評価(未了)


 大佐は最初に言った。

「外に漏れる前に形を作る。これが唯一の現実だ」

 工学主任が返す。

「形、とは?」

「統制だ」

「統制で到達しますか」

 大佐は黙った。黙ることで「質問が不適切」という札を置く。

 佐伯は議事録を取る。

 その手元に、別の資料が滑り込んできた。委員会の追加条件。


AO系列に対する“人権相当”の適用範囲再審

監視の透明化(限定公開)

研究目的の再定義(安全保障例外の削減)


 佐伯はその紙を、机の中央へ押し出した。

「先に、これを決めてください」

 大佐が見る。

「現場が回らなくなる」

「回らないようにするのが、条件です」

「先生」

大佐の声が少しだけ柔らかくなる。「君は止める側に立つのか」

「止める側ではありません。壊れない側です」

 工学主任が口を挟んだ。

「AO−2が言ってた。“到達しない”って。あれ、脅しじゃない。構造の話だ」

 大佐は言った。

「構造を語るのは後だ。先に、この騒ぎを収める」

 佐伯が言う。

「収めるために、また例外を増やすなら、同じ騒ぎが大きくなるだけです」

 机の端で、誰かが小さく咳をした。

 会議室の空気が少し冷える。倫理が出ると、室温が下がる。



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