表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い通訳者たち  作者: 久遠レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/35

第三章 人間として暮らす設計


《アオ》は自分の身体の扱いに、驚くほど協力的だった。

協力的な囚人は、看守の心を腐らせる。罪悪感が鈍るからだ。

「ヒト遺伝子を組み込む」

佐伯が告げると、《アオ》は頷いた。

「あなたがたの環境に合わせる必要がある。あなたがたの食べ物、あなたがたの微生物、あなたがたの社会」

「社会まで?」

「社会が一番毒性が高い」


 科学者たちは、遺伝子の話なら平気で冷静になる。

 だが社会の話になると、急に宗教みたいな顔をする。

 組み込みは“人間に寄せる”ためだった。

 免疫、神経伝達、代謝。地球の空気で生きるための調整。

その結果、《アオ》はますます人間に近づき、ますます“人間として扱われるべき”存在になった。


 そして、その存在を“増やす”計画が動いた。

 培養室の前で、白衣の主任が言った。


「クローン系列は三体。AO−1、AO−2、AO−3」


 番号は、人格を薄くするための言語だ。

 国家は番号が好きだ。番号は管理しやすいから。

 佐伯は言った。

「“子ども”ではないの」


主任は肩をすくめた。

「子どもと呼ぶと、倫理が痛む」

「痛むのが倫理でしょう」

「痛みで研究は進まない」


 さざ波が立つ。

 大きな波ではない。ただ、長く続く波。

 AO−1が目を開けたのは、朝ではなかった。

 照明が切り替わる直前の、薄い時間。

 瞳は黒。皮膚は《アオ》より少し淡い青。呼吸は浅い。

《アオ》はガラス越しにそれを見て、短く言った。

「増えた」

 言い方に感情が少なかった。

 感情が少ないのは冷たいからではない。感情の置き場所が、私たちと違うだけだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ