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婚約破棄された崖っぷち女騎手、第三王子に拾われ不吉な『黒いユニコーン』と伝説の専属騎手になる  作者: 目白シキ


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夜の誓いとマントの下の素顔

私は、フレデリック殿下と宿舎に戻るまで、「ヴィクトリアとの見合い」という言葉がずっと尾を引いていた。


フレデリック殿下は、「殿下が宿舎に来ると騒ぎになる」という私の話を覚えていたのか、わざわざ黒いマントに身を包みながら私を送ってくれた。


しかし、見合いの話を聞いた後だと、なんとなく殿下と一緒に歩くのが辛かった。

せっかく殿下にシルヴァーレイスを助けてもらったのに、無言になってしまい、殿下にも申し訳ない気持ちがこみ上げてきて、口火を切る。


「殿下、今日は本当にありがとうございました。本当に助かるなんて・・・夢みたいです。」


「嘘だ。」


殿下はピシャリと言い放った。


「本当は、シルヴァーレイスが競走馬として復帰することが騎手としてのキミの望みだろう? そこまでは助けられなくて、僕は無力だ。」


それに、と殿下は続ける。


「僕は、ヴィクトリアが『若葉杯』でキミとシルヴァーレイスに何をしたのか全部分かってる。キミの抗議がもみ消されたことも。」


黒いマントの陰から、殿下の冷たい目が覗く。


「まだ、僕からキミへの恩返しは途中さ。僕はキミに卑怯な真似をするやつを許せるわけがない。」


殿下は、私の掌を両手で握る。

そのときに、殿下のマントの一部がバサリと落ちて、美しい金髪が夜の光に照らされる。


「もっと、僕に期待してくれ。リア。僕がキミに期待したように。キミの隣は誰にも譲らないし、僕の隣も誰にも渡すつもりはない。」


私が呆気に取られていると、殿下がニコリと微笑む。


「だから、今日はゆっくり休んでくれ。シビュラが持ち出してきた見合い話も、上手くかわしてみせるから。」


たまに見せる殿下の底知れなさに驚きながらも、どこかその言葉に安心する気持ちがあった。

殿下が見合い話を断ったとしても、自分に白羽の矢が立つことはないのに。


私は燻る想いを胸に、宿舎に戻ると、早速シビュラの差し金なのか、すっかりヴィクトリアとフレデリック殿下の見合いの話で持ちきりになっていた。


「あの一番イケメンと言われているフレデリック殿下と見合い!? やったわね、ヴィクトリア!」


ヴィクトリアは、その話題の輪の中心に優雅に座っていた。


「まあ、近衛騎士に連なる貴族のわたくしが、選ばれるのは当然のことよね。専属騎手になっただけで舞い上がっているおばさんとは違って、わたくしは女として殿下に魅入られていたってことですわ。」


彼女が、帰ってきた私をチラリと見て、嫌味たらしく言った。


「ヴィクトリア、まだ見合いの結果は出ていないんじゃないのか? 魅入られていると判断するのは早計だ。」


私は極めて冷静に反論した。

いつまでも言われっぱなしなのは、私としても腹の虫が治まらない。

今日のシルヴァーレイスや今後の彼女の生活を思うと、余計に腹が立ってくる。


殿下を信じ、今は強気に出るしかない。


「わたくしは、あの宮廷魔導師のシビュラ様のお墨付きなのよ。田舎出身の雑草くさいアンタとは違いますの。本当は、アンタは王族の専属騎手へのスカウトはおろか、この由緒正しき宿舎の敷居すら跨ぐのは許されないのに。」


彼女の言うとおりだ。

本当は、貴族や騎士、代々ユニコーン競馬の騎手ではない限り、この国営の宿舎にすら入れず、騎手にもなれないのが現実だった。

しかし、私はシルヴァーレイスと共に勉強し、訓練し、人並み以上に努力してきたつもりだ。


「それはそうだ。だが、現に私は国に認められここにいる。血筋や後ろ盾に縋らなければ勝てないお前と違って、私は自分の腕一つでここまで這い上がってきた!」


宿舎に来る途中の殿下の言葉も背中を押したのか、いつになく私は強気に出ていた。

彼女の取り巻きも、私の圧に気圧されてなのか、いかにも自分のことを言われたかのようにオロオロしていた。


「騒がしいと思ったら、ヴィクトリア。リア。二人とも夜遅くに大人げないからやめなさい!」


ヴィクトリアが手を出しそうな勢いが出てきたところで、宿舎に帰ってきたハンナ先輩がその場を制した。


「ふん、命拾いしたわね。せいぜいわたくしがフレデリック殿下の妻になるところを指を咥えて見ていなさい。そしたら、こんな泥臭い職業。すぐにやめてやるわ!」


ヴィクトリアがそう吐き捨て、部屋に戻っていく。


「…泥臭い職業、か。」


彼女の足音が遠ざかるのを聞きながら、私の心の奥底で静かな怒りの炎が灯るのを感じた。


シルヴァーレイスがあんなに傷ついても走ろうとしていた舞台を。

私やブラックヴェッセルが人生を懸けている誇り高き国技を、あいつは鼻で笑い、玉の輿の道具として切り捨てたのだ。


「絶対に、負けられない。」


恋のライバルとしてではない。

一人の騎手として、私はヴィクトリアをこの手で完膚なきまでに叩き潰すと心に誓った。


疲れから椅子にへたり込みながらも、私の心はかつてないほどに熱く研ぎ澄まされていた。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます

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次回水曜日更新予定です。お楽しみに!

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