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婚約破棄された崖っぷち女騎手、第三王子に拾われ不吉な『黒いユニコーン』と伝説の専属騎手になる  作者: 目白シキ


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私は、この人に恋をしている

すると、後ろの方からオークのような魔物の声が聞こえた。

それと同時に、鋭い剣先の音が聞こえ、オークの野太い悲鳴が洞窟内に響き渡る。


私は死を覚悟して思わず目をぎゅっとつぶった。


しかし、私の顔のすぐ横を鋭い剣先の音がかすめた。


見上げると、魔法灯に照らされた、フレデリック殿下その人だった。


「殿下…!」


不安や恐怖が安堵に変わった瞬間、自分でも考える間もなく殿下に抱き着いてしまった。

殿下は、黙って私を抱き返し、


「こんなところまで探しに来るとは思わなかった。正直、驚いたよ。」


そして、耳元で続ける。


「…でも、来てくれて嬉しい。ありがとう。リア。怖い思いをさせてすまない。」


フレデリック殿下の安堵もこちらに伝わってきて、暫く私たちは抱きしめ合っていた。


帰り道、私とフレデリック殿下とブラックヴェッセルは並び歩きながら、王宮に戻る。


多少の疲労感もあるが、二人きりで話せる時間があまり無かったため、自然と歩調がゆっくりになり、心地よい時間だった。


「僕があの穴に足を滑らせて落ちた後、暫く僕を探すような音がしていたが、僕の声はどこにも届かなくて、いつの間にか探す音はどこかへ行ってしまった。」


フレデリック殿下はぽつり、ぽつりと森に取り残されたときの事を語り出す。

私とブラックヴェッセルは、彼の言葉に静かに耳を傾けていた。


「そして、洞窟の中はあの暗さだから、最初は声を上げたり目印になりそうな魔法を使ったりしたけれど、オークを呼び寄せるだけだったから、なるべくじっとするようにしていた。それから、何日経過したのか…、何度か朝日が昇り、陽が落ちて、夜に包まれる。そんな時間を一人で過ごして、もうダメだ!と思ったときに、遠くからブラックヴェッセルの蹄の音が聞こえた。」


殿下は私の目を真っすぐに見つめた。


「だから、本当にリアが来てくれて驚いたし、嬉しかった。キミとブラックヴェッセルなら絶対に僕を見つけてくれると思ったから…。思い出したんだ。幼い頃兄上と遊んでいた時、かくれんぼで兄上が先に帰ってしまって一人取り残されたことがある。その際母上が真っ先に僕を探しに来てくれた時のことを。」


だから、とフレデリック殿下は続ける。


「キミが助けに来たときに、そのことを思い出してしまったよ。」


と言うと、ふふっと笑った。

そう言われ、微笑まれると胸がドキッとした。


「本当にありがとう。」


殿下がそっと、私の掌に指を滑り込ませた。


私は、自分の気持ちに気づいてしまったのだ。

私は、きっとこの人に恋をしている。


その後、殿下と何を話していたのかはよく覚えていない。


来るときは不安でいっぱいだった妖精の森も、帰り道はなんだか幻想的な美しい森に感じた。

あとはもう、自らの胸の高鳴りの音だけが残っていた。


フレデリック殿下に送ってもらい、宿舎に帰った後、ベッドの上でボーっと考え事をしていた。


宿舎に居た騎手たちはみんな私のことを噂したり、ざわついたりしていたが、全て耳の穴を抜けていって大して気にも留めている暇はなかった。

何人かに話しかけられた気がしたが、全てスルーしてしまった。


殿下のことが好きだ。

いつの間にか、心のどこかでそんな思いがあったが、気づかないふりをしていた。


殿下を好きになっても、私は殿下と一緒になることはできない。


「ごめん、やっぱりキミと一緒になるのは無理だ。キミを妻として見ることはできない。」


かつての恋人に言われた言葉を思い出す。

私が騎手としてやっていくためには、子供を望むことはできない。

更に相手が王子となると、世継ぎの話が出てくるだろう。普通の男性とは訳が違う。


そんな思いがぐるぐる頭の中を巡っていた。

いや、そんな心配をしなくても良い。


そもそもフレデリック殿下に片思いしているだけだ。変な妄想や心配をするのが間違いかもしれない。


冷静になれ、と自分に言い聞かせながら枕に顔を埋めた。

枕を埋めながら、冷静になっていく頭で今日の出来事を振り返ってみた。


「幼い頃兄上と遊んでいた時、かくれんぼで兄上が先に帰ってしまって一人取り残されたんだ。」


その言葉だけが、妙に私の心の中で引っかかっていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

ぜひページ一番下にある【☆☆☆☆☆】の評価(星)と、【ブックマーク】での応援を何卒よろしくお願いいたします!

恋心を自覚したリアですが、王子の世継ぎ問題や過去のトラウマが彼女の心を苦しめますが、今後その呪縛から逃れることができるのか…。

次回は金曜日の更新予定です!お楽しみに!

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