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神様になりたかった  作者: 諏訪絢斗


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14/17

不思議なこともあるものだ

続けていくと要らない描写ばっかりで最初はやっぱ面白くないなと感じてしまう

 あれから一ヶ月のことである。今日は試験結果発表の日。正門の前にある2つのボードに合格番号が書かれている。右が魔法試験、左が戦闘試験である。

「あいつデケェな…どうなってんだあの筋肉」

 左の戦闘試験のボード前に立つ大きな体、言うなれば筋肉の塊。

 周りの人間も彼を見ては友人と顔を合わせて、ヒソヒソと話しているようである。そのなかの一つに信じられない話が混ざっていた。

「なぁ、知ってるか?あいつ試験官の武器折ったらしいぞ。どうなってんだか、同じ人間とは思えないよなぁ」

(は?ビーグルのあの鉄塊とも言うべき剣を折った?あの剣を?どうなっているんだ?)

 そう疑問に思った時には既に身体が動いていた。

「なぁあんた、ビーグルの剣を折ったって噂は本当かい?」

 気になったことは止められない。これも仕方がないことである。だって明らかにおかしいだろう。正しく人間業じゃない。いくら魔術で身体強化したからといってそんなことができるとは思えない。

「ああ…あれか。すごく硬かった。あれほど硬い武器を俺は知らない。都会ってのは凄いんだな」

 間違いないコイツいかれている。頭のネジが外れてんのか?

「そうか…それと少しどいてくれないか?俺もこっちで受けたんだ、確認しなくちゃな」

「何番?」

「217だよ」

 それを聞いて彼は口角が上がった。

「君だったのか、ビーグルさんが言ってた人って」

「あ?」

 ビーグルさんが言ってた人?つまりコイツは俺のあとに試験を受けたのか。いや、当たり前か、俺のときはあの武器が壊れてなかったしな。

「どういうことだ?」

 一応聞いておく。新しい情報も手にはいるかもしれないからな。

「いや?あんたなら間違いなく合格だよ。ビーグルさんがさ、言ってたんだ、今年はヤベーのが2人もいやがるって」

「なるほどな。1人目はお前ってか?」

「そういうことになるね。探さなくても合格だよあんたは」

 探さねーと面倒だろうが馬鹿なのか?コイツは。そう思ったが飲み込むことにした。こいつの身体を見れば分かる、力こそパワーのこの見た目からは誤解もしようがない。

「そうか…名前は」

「俺?俺はね、ヘラクレース・レムレース」

 ヘラクレースか…俺の頭がこいつを勝手にギリシャの大英雄、ヘラクレスみたいだと言っているみたいだ。

「俺はリュート・クラウンだ。仲良くやろう、よろしく頼む」

「おお!友達だ!俺さ田舎から一人で上京してきて不安だったんだ!なんかあったら教えてくれよ!」

 いちいちリアクションの大きいやつだが、不快感はない。こいつは単純で、清らかな心を持っているのだろう。

「リュート!」

 もう一人うるさい奴がいた。

「私たち合格したよー!」

 こっちに突進してくる。

「ガハッ!」

 腹に頭がクリーンヒットだ。鳩尾に全力疾走の頭突きを食らえば人間、痛いじゃすまないだろうと理解できると思う。

「アリス!お前はなぜいつもそうなんだ!人を労れバカ野郎!」

 流石にこれには不服の表情を見せるアリス。何だ?何をするんだ?

「野郎じゃないもん私!」

 今、さっきまでの怒りはとんだ。こいつはとんだ大馬鹿者だ、うつけ者だと再認識させられた。

「はぁ…そんなことはどうでもいいんだよ」

 それをニコニコと見つめているヘラクレース。この笑顔もその巨体からは、何処か威圧的に感じてしまう。

「今日からは寮生活になるわけだが、その部屋割りは見てきたのか?見てないなら女子寮前に早く行け!撤去されるぞ」

 ハッとした顔をする。

「アリス…お前忘れてたんだろ…」

 顔を真っ赤にしてアリスは何も言わずに去っていった。まるで嵐のようなやつだ。

「お前は?俺も男子寮の部屋割りを見なくちゃあならないんだが、一緒に行くか?」

「俺も寮生だから行かなくちゃなんないよね」

「当たりめぇだ、行くぞ」


「えーっと、あ!有ったよ、俺とリュート君おんなじ部屋だってさ」

 俺はヘラクレースと同じ部屋らしい。こいつがデカくて見えないが、嘘をつく奴でもないというのは分かっている。それにしてもあれと同じ部屋はだいぶ狭いのではなかろうか?

「部屋に向かうか。荷物は運び込まれてんだろ?」

「みたいだね」

 荷物は、前の試験日にいくつか預けてある。本物のバカは荷物のすべてを預けてしまうこともあるらしい。

 広々としたエントランスがあり、階段で上に上がる仕組みらしい。2人で階段を登っていく。

 ふと後ろから声をかけられる。

「ねぇ何階だっけ?」

「3階」

「何号室?」

 ヘラクレースに鍵についたナンバープレートを見せる。そこには306と書かれていた。

「なぁヘラってさ剣魔祭出るの?」

「ヘラ?」

「渾名だよ。そこは気にするな」

「剣魔祭って?」

「知らないのか?あぁそうか、田舎もんだったな。簡単に言えば、剣でも拳でも魔法でも魔術でも何でもござれな決闘だよ」

「俺はいいや」

 よかった。こいつと当たればこっちも本気を出さなきゃならなくなる。うっかり殺してしまうことも…は、ないな。

「お前がどんなもんか見たかったんだけどな」

「人に見せれるような戦い方じゃないから」

 謙遜も行き過ぎればなんとやら、ヘラクレースの才能を羨ましく思う奴らからすれば、この台詞は殺したくなるほどに妬ましいことだろう。

「あまり謙遜するな、敵を作るぞ」

「リュート君は敵になんないでしょ?」

「リュートでいい。なんかお前から君付けされるとむず痒くなる」

 そうこう話しているうちに部屋の前に着く。鍵を開け、部屋にはいるとそこには大きなトランクがあった。

「どっちが俺のだ?お、ネームプレートあんじゃん。こっちが俺のか」

 すぐにトランクを開けると筆記用具やノート、そして制服が入っている。

「あれ?リュートって武器入れてないの?」

 ヘラクレースがそう聞いてくる。そうか…知らないのか、俺の魔法。

「俺さ、闇魔法だから影に武器しまってんの」

「なるほどね。戦闘に使えないことはないけど、闇魔法って攻撃系の魔法がないもんな。だから剣技で試験受けたんだ」

「そゆこと。あぁ…それとあと一つ」

 指を鳴らすと何もないところからリリスが出てくる。この間聞いたところ隠密スキルらしいのだが、俺とそう年が変わらないのにここまでの練度は流石と言わざるを得ない。

「うわぁ!だれ!?」

 そしてヘラクレースの驚きも仕方のないことだ。

「こいつは俺の護衛リリスだ。一応紹介しておく」

「その子の寝る場所は?」

 考えていなかった。どうするべきか…なんかないのか?

「その話についてですが実は試験合格済みです。リュート様と同じ学年、同じクラスになります。理事長からの許可はいただいております」

「で?寝る場所は?」

 キョトンとした顔をするリリスは何でもないかのように言う。

「ここで寝ますが?護衛枠での合格ですので」

 …さて寝る場所を考えるのは振り出しに戻ったわけだ。それならば仕方がない。

「リリスは俺と同衾だ。いいな?それとヘラ、リリスは夜寝るときに隠密スキルを解くから急に人が出てくるのにびっくりするなよ。夜中トイレに行きたくなったときとかは特にな」

「分かったよ。いいのか?女の子と同衾で」

「いいよこいつには色んなところを見られてるし、家のメイドだこれぐらいなんともないだろうよ」

 裸から女装姿まで見られていて、恥ずかしいものはもう何もない。

「入学式に行くぞ。早く」

 これから始まる入学式に出なくては、学生として。しょうがない入学式から1週間は学校も始まらないし、明日になってからアズモのところに行くとしようか。

 入学式は、行事専用の大きな建物で行われる。行事館とかまんまな名前なんだってよ。

 俺は名付けのベルのセンスを疑いながらもその場に向かった。


 私語は許されないこの空間で自分の番号通りの席につく。周りに知り合いがいないアウェー感というのはいたたまれないものである。

「えー皆さん入学おめでとうございます。

 本校では魔法だけでなく、武術、剣術といったように様々な実践的な戦い方というものが学べる、つまりは世に出てすぐに戦えるといったような教育をしています。

 よって魔力があるかないかというのは意味のない議論であることはまず理解していただこうと思います。

 魔力差別や平民差別といったものは、見かけ次第、処罰の対象となりますのでそこのところもよくご理解していただきたい」

 この学校の教育理論を初っ端から飛ばしていく教師に驚くもそういう学校にしろとベルいったのは俺だったと思い出す。

 普段は怠惰なベルフェゴールだが俺からの命令は何の文句も言わずに成し遂げてくれる。実際できるのにやっていないベルにとっては俺からの命令は朝飯前であろう。

「それでは次は理事長のお話です」

 司会の先生はステージから降り、誰もいなくなったマイクの前にベルフェゴールが現れる。

 ベルフェゴールの能力の一つ、怠惰と言う名に恥じず瞬間移動である。行ったことのあるところならば一キロ以内なら何処にでも行けるという便利な能力(スキル)なのだ。

 周りがざわめく。スキルは基本補助系なのだが、実際ここまで洗礼されたスキルというのは現代では珍しいのだ。

 昔の戦乱の時代ならばこういったスキルは珍しくもなかったが、平和な世では単体で強力なスキルよりも強力な魔法を補助する役割を持つものが多い。

 強力な魔法が少なかった昔には強力なスキルがなければ生き残れないものであるために仕方がなかった、というものである。

「えー皆さん学校生活頑張ってください。以上です」

 派手に出てきた割にはこれまた彼らしい適当な挨拶である。顔に威厳のある老人という見た目でありながら気怠げな若者のような男だと感じる人もいるのではないか?

 理事長さんはいつの間にかステージから消え、眉間にしわを刻んだ司会の先生がマイクの前に立つ。

「ではこれで入学式を終わります。

 授業が始まるのは1週間後からなので、楽しみすぎるあまり早く来てしまうことのないように。

 1週間の間に登校してきても魔術研究の変人たちしかいないので忘れないように」

 休みの日にも学校に来る変人たちに捕まるなよとのことらしい。それも仕方がないことだろう。

「では解散!」

 先生の解散の言葉とともに皆が行事館から出ていき、友人たちと談笑している。

 俺の周りにいつものメンバーが集まってくる。そこには新しくヘラが加わったのだが…ん?もう3人新しいやつがいる。

「フラムじゃないか…珍しいな」

「いや、友人が無事入学できたのなら互いに喜びあうのが普通だろう」

「お前…素直になれたんだな。しばらく見ないうちに成長して」

 ううっと泣いてみせる、感動の涙だ。

 実は左右のやつは名前を覚えていないのはここだけの話である。

「なんで泣く!そんなにおかしいか!?」

 そう嘯く。本当は自分が素直ではないことは分かっているのだろう。

「まぁ…おかしいですよね」

 細いほうが喋る。おい横の小太りよ、こういうのはお前が喋るとこだぞ。なんで小太りはこの見た目で無口クール路線を独走しているのだ?

「お前まで…」

 フラムはがっくりと肩を落とす。

「何処か食いに行くか?」

 せっかく集まったのだし交流を深めるというのも悪くないだろうと思い立っただけなのだが…。

「何処か美味しい所ある?」

 アリスが聞いてくる。俺は考えるけどもあんまりここらへんの食事処に行かなかったものだから俺に聞かれても困ってしまうのだが。

「あるよ。トンカツのおいしいお店が!」

 トンカツ?誤翻訳じゃないのか?そう考えてしまう。どうでもいいことだが俺はトンカツが一番好きな食べ物だ(スイーツを除く)。

(トンカツの店!)

 つまり頭ごトンカツ一色になることは仕方のないことなのである。

「よし!行こう!トンカツ!」

 俺にしてはハキハキテンション高く喋ったと思う。

「おぉ…どうしたの?急に…」

 2度目のドン引きをユダから頂いた。俺は好きなことには目がない人間のため、こうも養豚場の豚でもみるような冷たい目を向けられると傷ついてしまう。

「マリーは大衆向けの店って大丈夫なんだっけ?」

 一応心配しておく。気品あるお嬢様といった佇まいのマリーを嫌う平民は少なくない。

 貴族らしい貴族が大衆向けの店に行けば、嫌がらせを受けることだってある。

「問題ありませんわ。貴方が守ってくださるでしょう?」

「まぁ、ヘラと一緒の席にいる奴に喧嘩を売る人間は居ないだろうしな」

 こんなゴリゴリマッチョに喧嘩を売るような真似をする図太いやつはそうはいないだろう。

「そうね…ヘラクレースさん?でしたっけ?」

「ああ!ヘラでいいよフランクに行こう」

「分かったわ、ヘラに喧嘩を売ってきた人っているの?」

「いないな。昔からこんなだったからかな?」

 言葉が出ない。フィジカルギフテッドというものは実在するらしい。

 同じ魔力のない俺がこんな細い身体をしているのになぜ神は平等を知らんのだ?

 神というものは不平等だよな。才能に振り分けを作っているのだから。努力するという才能すらも不均等に割り当てられる。

「バケモノめ」

 つまりこの言葉が出てきても仕方がないというものだろう。

「ここで話してちゃ邪魔だし行くか」

 それにトンカツを早く食べたいという思いが俺を急かしたように感じた。


 カツ処という店があった。

「これか?結構綺麗だな…」

 案外奥底にある隠れたお店のような雰囲気を纏っているものの綺麗にされていて心地よい。

「いらっしゃいませー!何名様でしょうか?」

 挨拶も元気がよいし、何だか日本みたいだと懐かしさを感じた。

「10人でお願いします」

「10人?」

 フラムと細い方が言葉を放ち、小太りは首をかしげる。そうか、この三人は知らないんだったなと思い出す。

「出てきていいぞ。特に何もないし」

 そうするとスゥっと現れてくる。隠密スキルってのは案外便利なのだなと思う。

「うわぁ!」

 フラムは驚く。ビビリなヤツめ、側近の2人を見習え。細いやつは興味深そうにリリスを眺め、小太りは…気絶…してる。

「とにかく迷惑になるから席に案内してもらうぞ。ヘラ、気絶してるやつを運んでくれ」

 店員さんは少し困った笑顔を浮かべている。

「この人数になりますと宴会用のお部屋になりますがよろしいでしょうか?」

「構いません」

 珍しくマリーが答える。

「ではご案内いたします」


 まずはメニューを開き何があるかを見る。

 値段は…黒豚定食が1400円程度とは安いのではないだろうか?

「じゃあ俺はこれにするよ」

 黒豚ロースカツ丼はもう名前だけで美味しいというのがわかる。

「じゃあ私も」

 セシリアは俺と同じのを選ぶ。

「私はささみかつ定食にします」

 マリーはささみかつ定食。

「私はカツカレー!」

 アリスよ…カツの店でカレーというのはナンセンスだ(暴論)。

「俺は普通のカツ」

「僕もそれで」

 フラムと細いのがそういったあとに隣で小太りが頷く。

「彼のは大盛りでお願いします」

 それを見た細いのは小太りのを大盛りにしてくれと頼んできた。なぜ理解できるのだろうか?不思議である。

「俺も黒豚ロースカツ定食の大盛りで」

 黒豚の脂を舐めているのか知らないがヘラは言う。

 たくさん食べれる人も脂の重さには勝てないのだ。なめた態度も半分から絶望に染まることもある。

「僕は…ヒレかつでお願いします」

 ユダはヒレかつ。

「では私はリュート様と同じものにいたしましょうか」

 リリスはいつも通り俺と同じ物を頼む。

「よし、頼むぞ?いいな?」

「異論ナーシ」

「すみませーん」

 奥から店員さんが出てくる。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「黒豚ロースカツ丼並を4つ、ささみカツ定食並、カツカレー並、ロースカツ丼並2つ、ロースカツ丼大盛り、黒豚ロースカツ定食大盛り、ヒレかつでお願いします」

「ご注文を繰り返します。

 黒豚ロースカツ丼並を4つ、ささみカツ定食並、カツカレー並、ロースカツ丼並2つ、ロースカツ丼大盛り、黒豚ロースカツ定食大盛り、ヒレかつ。

 以上でよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

 後は来るまで待つだけだ。この瞬間が一番楽しみなんだよなぁ。

 しかしカツとな?誤翻訳じゃなけりゃ嬉しいものだが…


「お待たせしました」

 そう言って数人の店員さんがご飯を持ってくる。

「おぉ〜美味そう」

 マジモンのカツが出てきて嬉しいものの少し茶色っぽいご飯を見て思うものがある。

「これって麦ごはん?」

 麦ごはんは嫌いじゃないし、この世界では麦に似たものがあったので再現できるとは思っていたのだが…

「凄いなこれ」

「お米というものでございます。魔王様の故郷にあった食べ物のようでバアルゼバブ様が完成させました」

「バアルがここに来ているのか!?」

「え?…えぇはい。時々ですけど気に入ってらっしゃるようで」

「そうか、なら連絡を頼みたいのだが、ベルフェゴールからこちらに来るようにとのお達しが来ていてな。頼めるか?」

 バアルと話すのにまたとない機会だ。同じペッカートゥムのメンバーたってのお願いなのだから断れるわけもないのである。

「分かりました。ベルフェゴール様からですね?」

「あぁ悪い」

 お辞儀をして店員さんは仕事を終えたと出ていく。

「さてと、食うか」

 何もなかったかのように食事を始めようとするも皆不思議に思うことがあるらしい。

「バアルゼバブ様とはどういうご関係で?それとベルフェゴール様からの伝言とは?」

 最初に口を開いたのはマリーだった。

 それに皆は各々反応するもマリーの言葉に同調しているようだ。

「ああ、理事長からの伝言は詳しくは語れないな。バアルとの関係も俺が理事長の伝言をそのまま話しただけだし…」

「その!バアルって呼び方についてです」

 あぁ、そうか…まずいな俺の癖、ミス最悪な状況で起きてしまった。

「それも言えないな。理事長から口止めを食らっている」

 これしか言えない。これを言えば皆も黙るしかない。

 長い間この国を守ってきた魔王直属の部下ペッカートゥムからの口止め、言伝役このことについて誰がこれ以上の詮索をできようか。

「分かりました。これ以上の詮索はしません」

「じゃあ食おうぜ。冷めたら勿体ないとだろ?」

 箸…これも俺がバアルに伝えていたな。バアルは何でも食べるやつだった。

 しかし、美味いものに関してはこれ以上にないほどの追求心を持っていた。

 雑食のくせに食の探求者とはどういうことなのかと思っていたものだ。

 食への探求は酸いも甘いも噛み分けてきたからこそだろう。

 だからこそ食に関してはバアルは俺を裏切ったことは一度もない。

(うまいな。脂もよい、噛めば溶けるように消えていく。麦ご飯のさっぱりした感じがこの脂を中和してくれる!)

 うまいと感動した。周りの反応をみるに同じ考えであろう。

 ヘラなんてさっき食い始めたばかりなのにもう食い終わっている…もう!?ばかな…こいつの胃はどうなっているんだ。あまりにも早すぎる…。

「おかわりいいかな?」

「いいぞ、俺の奢りだからな。貴族様からの奢りだぞ?金のことは考えるな」

「じゃあ、店員さーん!」

 こいつは結局3度おかわりした。

 マリーの箸は三分の二を食べたところで止まった。

「どうした?」

「いえ、美味しいのですが、脂が少し…お腹に」

 上品な食べ物を食べてきたであろうマリーの胃にはキツかったのだろう。

「俺が食うよ。好物だからないくらでも食える」

「では…お願いします」

 マリーから受け取ったささみカツ丼をぺろりと平らげる。

「ふぅ〜美味かったぁ」

 俺は非常に満足していた。そこに店員さんがバニラアイスを持ってきた。

「ねぇ誰のバニラアイス?」

 アリスが聞く。リリスは俺のほうを見た。

「俺のだ」

 アリスは怪訝な顔をして続ける。

「結構食べたよね?その体の何処にそんなに食べ物が入るのさ」

「スイーツは別腹だ」

 そう、スイーツは別腹なのである。これは甘いもの好きな人は皆首が取れんばかりに縦に振っているだろう。

 脂の後は口をスッキリさせたいだろう。

(アイスも美味い。甘すぎないのもいいな)

「なぁ〜ンか一番いい笑顔で腹立つわね。ね?そう思わない?」

 アリスは皆に答えを求めるように聞く。

「そうね、何だかリュートっぽくない感じするし、ポイ感じもするのが腹立つわ」

 それにセシリアが同調する。

「よっし!ごちそうさまでした」

 食い終わった俺は言いようもない幸福感に包まれていて二人の悪口は聞こえていない。

「俺、明日早いし早く帰るか。それと長い時間ここにいたら店の迷惑になるしな」

 値段は見たくもない。日本にいた頃じゃ考えられない金額だったからだ。ご飯にこんな値段!?と思ってしまう値段だったことは伝えておこう。

 ヘラの食欲はどうなっているんだ?


 俺達はどうでもいい日常話をしながら帰った。

 最近あったこと、試験後に何をしていたか、貴族の暮らし、平民の暮らしなど意見交換に近かった。

 こういう日々が幸せなのだと実感する。


 部屋に帰った後は筋トレをするヘラを横目に眠った。明日の朝に備えて、夜ご飯も食べずに朝までぐっすりと

人生で一度はバナナの皮で滑って転んでみたい

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