第8話 そういうつもりじゃないんです
「はあ、やっぱり甘い汁だよなあ」
ついつい独り言が口から出る。
俺がバックレても揉め事が起きないようにするためには、火草刈の言うこと聞いてれば、良い夢見れるって形をつくっとかねえとマズい。
美味いもん飲み食いできて、オシャレな服を着て、キラキラしたアクセサリーをジャラジャラさせて。
都合良く、そんなものが湧いて出て来るわけじゃねえから、どっかから分捕ってくるしかねえ。
けど、俺は人見知りだ。
赤の他人には、からっきし弱い。
叔父貴の言う通り、縁を結ぶしかねえのか?
東西南北の更に外側の国津神と縁を結んで、ぶん殴って、貯めこんでるものを吐き出させて。
でも、そしたら新しく縁を結んだ奴らにも、良い夢見させてやんないといけねえから。
じゃあ、更に外側の国津神と縁を結んで……。
キリがねーわ。
ウンウン、唸ってたら叔父貴が来た。
縁組の話か?
聞くだけ、聞いてみようかと思ったら違った。
「坊、都から返書じゃ」
「詰め合わせセット、無事に届いたんだな。なんて書いてあんの?」
「分からん。というか自信が無い」
叔父貴にも読めない字で書いてあんの?
歌?
昔の出来事にちなんだ言葉遊びが織り込まれてて、後から、どうとでも手のひら返しできるように、好意にも皮肉にも受け取れるようになってる貴族の嗜みだって?
どうせ、叔父貴しか読めないんだから、叔父貴の解釈でいいよ、教えて。
『イッサカルの氏族の末裔から貢物が届いたと聞いて、食事中に箸をへし折るぐらい驚いた。
草っ原で焼け死んだものと思ってたけど、しぶとく生き残ってるなんて、オマエらの血族の逞しさを再認識した。
早速、貢物を検分したけど絹布も麻布もボロくて貧乏暮らししてるんだなと可哀そうに思った。
それから生口を見て、ちょっとモヤモヤした。
大声で話しかけないといけなかったり、何言ってるのか分からなくて何度も聞き返さなきゃいけなかったり。
なんだよ、舐めてんのかと思ってシバいたんたけど、どの生口も従順で逃げる気を起こさない。
これは生口の躾の仕方なんだと分かって考え込んだ。
もしかして、もしかしてだけど、俺の耳と口も、こんな風にしてやるって仄めかしてるの?
そんなことないよね。
俺の考え過ぎだよね。
オマエらの薄っぺらい財布から一生懸命、搾り出した貢物なんだよね。
今、全国津々浦々の生意気な奴らを俺の息子がシメて回ってるところ。
そのうち、そこへも立ち寄ると思う。
俺の息子の言うことよく聞いて、顔見せに帰ってこいや』
なあ、叔父貴、もうちょっと明るい未来を感じられる解釈はないの?
お坊ちゃまがおいでになるなんて。
俺らは首から上だけ、都への里帰りを許された感じなんじゃない?
そういうつもりじゃなかったんですけど。




