第7話 いや、レベちだわ
「なんだよ、叔父貴」
きっちり親戚づきあいを終えて、俺の跡目は速勝彦にって宣言した翌日、大叔父がやって来た。
どこぞの娘を攫ってくる目処でもつけて来たのかと思って追い返そうとしたら、都からの御触書ってのが来たって言う。
相変わらず、跡目争いの内輪揉めばっかりしてる天津神一族だが、やっと決着が付いたらしくて、今代の大王が、これからはオレのやり方でいくから皆よく聞けっつってバラ撒いてるらしい。
俺は字が読めねーから大叔父に読み上げてもらった。
「一つ、神聖な場所で大便をしないこと」
いや、まあ、祠とか墓に参ってる最中に急に腹が痛くなることだってあるわな。
間に合わなくて、その場でって奴もいるかもな。
気を付けろってことだよな。
「一つ、父と娘、母と息子で結婚しないこと」
お、おう。
相続婚ってのは、昔からのしきたりだからな。
兄が死んだら弟が兄嫁を妻に迎えたって話はよく聞くよ。
財産分与で揉めないため、政略結婚の繋がりを切らないためだ。
親爺が死んだ時に息子が母親を妻に迎えるって場合もあるけど形式的なもんだからな。
形式に拘らずに仲良くしろってことだよな……な?
「一つ、牛と結婚しないこと」
えっ。
「一つ、馬と結婚しないこと」
えっ。
「一つ、犬と結婚しないこと」
えっ。
「……なあ、叔父貴。俺のこと揶揄ってる?」
「わしゃ、まだまだ長生きしたい。オマエを怒らせるようなリスキーなことはせん。書いてあるとおりを読んだ」
そうか。
マジか。
やっぱ、ヤベーわ。
レベルが違う。
天津神のライフスタイルは俺の理解を超えてる。
御先祖様、よく逃げきれたもんだわ。
「なあ、叔父貴。ウチも蚕飼って、絹作ってたよな」
「技術は劣化しとるから都のモンに比べりゃ見劣りするぞ」
そうか、弱いな。
じゃあ、やっぱ生口だな。
「なあ、叔父貴。手紙書いてくんね? 私は貴方の子分です。絶対に逆らいませんって感じで」
俺は、東西南北から適当に何人か引きずって来て、出せるだけの絹布と麻布を背負わせて、人と物の詰め合わせセットの貢物を都に送り出した。




