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東の涯てのオールド・テスタメント  作者: 隣之 芝生


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第23話 絶叫系主人公パイロットの系譜

 週末に次週予告のとおり、敵の巨大ロボがやってきた。

 2体も。


 1体は腕が6本ついている。

 パンチの連打が持ち味の見た目。


 1体はU字型磁石ですっていう見た目。

 胴体の真ん中に、でっかいドリルが付いている。

 磁石で吸い寄せてドリルで勝負って感じ。


「「ズルいぞ!」」


 馬鹿兄弟が叫ぶ。

 そうだね。

 2対1とは思ってなかった。


「「次はドリルを付けようと思ってたのに!」」


 そっちかよ。


 放送禁止用語で敵のロボを野次ってる馬鹿兄弟を無視して、敵のロボが同士討ちを始めた。


「「おお、そう来たか」」


 馬鹿兄弟が手のひら返しで敵のロボを応援しはじめた。


「ドリルは強いぞ」

「まさしく。しかし、ドリルに殴り勝ってこそ真の強者」


 父ちゃんの「英才教育」のおかげで僕にも分かった。

 あの演出は良い。

 悪の組織が製造したロボ2体が正義ロボへ挑戦する権利をめぐって争うやつ。


 勝ち残った敵のロボの強さを見せつけられて、正義ロボは勝てるんだろうかというドキドキ感。

 でも、回を重ねるうちに気づいちゃうんだ。

 協力して2体で攻めに行ったらいいんじゃねって。


 だけど、疑問を感じさせておいて、開きかけた口を閉じさせられる。

 後半から2体が強さを誇示した後、合体して攻めてくるんだ。

 敵のロボは強すぎて、正義ロボはボロボロにされて、主人公パイロットは痛みに絶叫するんだ。


 今は争ってるからいいけど、そのうち合体してくるのかな。

 それは困る。

 何か手を打たないと。


 そんなことを考えている内に同士討ちの決着がついた。

 やっぱり、ドリルが勝った。

 さんざん殴られてボコボコに凹んだ磁石ドリルロボがファイティングポーズをとって近づいてくる。


「待て待て、俺達は5分と5分の勝負しかしないぞ。帰って修理しろ」

「そうだが……それでも立ち向かって来るというのなら、受けて立つのがロマンではないか?」


 珍しく馬鹿兄弟の意見が割れているように聞こえるが、根っこは同じだと思う。


「もう邪魔だから、どいて」


 アームを操作して、父ちゃんと叔父さんを、そっと後ろにさがらせる。

 この砲身付き違法改造重機を手足のように動かせる。

 宇宙に行っても活躍できそうな気がする。


 磁石ドリルロボが殴ってくる。

 クローラーを左右別々に操作して、ピボットターン、スピンターン。

 華麗に避けて、避けきれないパンチはアームでパリイ。


 そうこうしているうちに、ボコボコに凹んでいた磁石ドリルロボの姿が元に戻っていく。

 自動修復機能付きなんだね。

 対等になったみたいだからケリを付けようか。


 磁石ドリルロボが必殺技ですというようなポーズをとる。

 吸い寄せられる違法改造重機。

 廃材置き場の他の鉄屑はピクりとも動かない。


 指向性を持った磁力。

 技術力の無駄使い。

 ぶつかり合う。


 ドリルよりも杭の方がリーチが長い。

 飛び出す鉄杭。

 立ち込める蒸気。


 廃材の山に磔にされた磁石ドリルロボ。


『さすがだ。「鎮東大将軍ロボ ピストンたける」来週は……』

「ねえ、イヒカお姉さん」


 宇宙人のお楽しみを途中で遮って申し訳なかったのだけれど、絶叫系主人公は嫌だ。


「神殺しの夢って見させてくれるの?」

『……ええ、アタシは都合のイイ女だから任せて頂戴。政界、財界、官僚、報道、学術、芸能を陰から支配する鉄の六角錐がアナタを支援するわ』


 翌週、(有)藻宮印刷と元(有)若竹土建・(有)弥栄鉄工は、裏社会から世界を支配する秘密結社のフロント企業、イヒカル・ホールディングスとして合併再生した。

第2章 完

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