第22話 鉄の鼓動、オイルの血糊
帰宅すると馬鹿兄弟が「鎮東大将軍ロボ ピストンたける」の改造の仕上げにかかっていた。
違法改造重機の肩に細長い鉄の筒が取り付けられている。
背中には大小不揃いのボイラーを沢山、背負っている。
ボイラーっていうか、風呂釜だな、アレ。
社屋の裏の廃材置き場から拾ってきたのだろう。
細長い鉄の筒と筒に突っ込まれている鉄の杭も、そうなんだろう。
なんでも都合よく出て来る廃材置き場。
「「パイルバンカーだ」」
馬鹿兄弟が揃って叫ぶ。
石炭を使えっていう母ちゃんからの伝言を聞いて、火薬は手に入らないから蒸気式でいくかと盛り上がっていた父ちゃんと叔父さん。
「鉄の塊と鉄の塊がぶつかり合うんだ」
父ちゃんが叫ぶ。
「ブチ抜かれて噴き出すオイルの血しぶき」
叔父さんが叫ぶ。
大小不揃いの風呂釜から蒸気を鉄の筒へ送るパイプが一つにまとまっていく集合管の美しさ。
認めたくないけど、こういう職人技は尊敬してしまう。
「杭を射出するには圧が足りないんじゃないの?」
「良い着眼点だ」
僕の疑問に父ちゃんが、もったいぶって頷く。
「タケちゃん、デコピンの原理だよ」
叔父さんが嬉しそうに解説する。
筒の中の鉄の杭はロックピンで固定。
高まり続ける蒸気圧。
「ピストンたける」が体当たりのように敵のロボに突進して、ぶつかる杭の先端。
衝撃で折れるロックピンと限界まで高まった蒸気圧に押し出される杭。
ロックピンの強度計算とか、風呂釜ボイラー側の耐圧剛性とか、いろいろ言いたいことはあったのだけれど、多分、都合良く、なんとかなってしまうのだろう。
「蒸気圧が高まるまでの間、敵のロボの攻撃を受け止めなくてはならない」
父ちゃんが根性論を語りだした。
「そうだ。そして敵の攻撃を受けきった後、1回しか使えぬ必殺技を繰り出して勝利するのだ」
叔父さんが必殺技の美学を語りだした。
「そうよ。誘って受けて、その上で攻めて、分からせてやるのよ」
叔母さんが乱入してきた。
会話が成立しているように聞こえるのがイヤだ。
「試し打ちとかしないの?」
「石炭をポチったが、お届け予定日は週末だ。ホームセンターで木炭を買おうかと思ったが、ちょっと違う気がしてな」
廃材置き場を掘り返せば出て来そうな気もするけど。
きっと母ちゃんへの秋波だな。
「一度きりの必殺技なのだ。ぶっつけ本番が当然だろう」
叔父さんに返す言葉を考えていたら、叔母さんが動き出した。
パイルバンカーの砲身にペンキで数字を書いている。
機体番号かな。
114514
もうヤダ、この親族。




