第15話 上位存在との遭遇
202X年。
地球はヤバい宇宙人に目を付けられた。
ブラブラしていた宇宙人に電波を拾われて、お気に召されてしまったらしい。
本当のところ、宇宙人か何かは分からないのだけれど、圧倒的技術格差があって人類の理解できる枠の外にある上位存在。
暫定的地球外生命体?
生命でもないかもしれない。
地球の各地に宇宙人の侵略兵器、巨大ロボが現われた。
迎撃する各国の最新兵器群。
全て無力化された。
地球人のプライドは傷ついたけれど具体的な被害は少なかった。
無力化された地球人の誇る最新兵器は操作系を奪われて、強制的に基地に戻され、格納庫から射出することを許されなかった。
そして、何か破壊されたり、吸い上げられたりということはなかった。
奴隷にされることも、食べられることも、苗床にされることもなかったのだ。
株価が乱高下したり、物価が高騰したり、一時的な混乱はあったけれど次第に落ち着いていった。
ただ、迷惑だった。
『違う』
そういうメッセージが送られてきて、それから映像・通信系が毎日30分、ジャックされるようになった。
テレビもネット動画も、有線放送さえも見始めてから最初の30分、かならず白黒の巨大ロボットアニメが流れて、スキップも早送りも出来なかった。
ラジオも、ラジオドラマが放送された。
映画館やDVD、ビデオテープまで割り込まれた。
新聞、雑誌などの活字媒体、漫画雑誌、単行本化されたものまで30分一話分を読まないと、本来、見たかったものが楽しめない念の入り様だった。
小説、コミック、アニメのメディアミックス。
全世界、視聴率強制100%。
そこまでするなら実写化も出来るだろうに。
手を出さないのは何か嫌な想い出でもあるのだろうか。
誰かが言った。
これは「布教活動だ」と。
ほとんどの人は最初の30分をあきらめた。
怒って抵抗する人は、それなりに居た。
自分で撮って、書いて、描いて、出来上がったら30分1話分が挿し込まれた。
喜ぶ人が、ちょっとだけ居た。
「これマスターテープが廃棄されてて、もう見れないと思ってたヤツだったんだ!」
飛び跳ねて喜ぶ変人も居た。
建の父ちゃんと叔父さんだった。
「「できらぁっ!」」
(有)若竹土建を経営する父ちゃんと(有)弥栄鉄工を経営する叔父ちゃんは違法改造重機の製造に取り掛かった。
馬鹿兄弟の有限会社はすぐに倒産した。
株価の乱高下と物価高騰に関係なく倒産した。
余計な救いの手を差し伸べたのは(有)藻宮印刷を経営する叔母さんだった。
印刷業自体は斜陽産業なのだけれど、叔母さんは「薄い本」でボロ儲けしている人だった。
もちろん、小学生の建は「薄い本」が何なのかは知らない。
知らないということにしている。
ジャンルは違えど、兄と弟のロマンに理解のあった叔母さんは違法改造重機が完成するぐらいの資金を出してしまった。
別に、そこまでは構わなかった。
父と叔母と叔父で勝手に盛り上がっている分には問題なかった。
違法改造重機のパイロットは建だった。
「「巨大ロボのパイロットは少年に決まってるだろ」」
馬鹿兄弟が叫んだ。
「いや、早くても14歳、中学生からでしょ。小学生でもギリ、許されるのはロボと友達になって応援する体裁をとって遠くから指示するとか、ラジコンみたいな遠隔操作でしょ」
不本意ながら、誠に不本意ながら、建は父ちゃんの「英才教育」のおかげで少しだけ意思疎通ができる。
「「建には夢が無いんだね」」
馬鹿兄弟が、したり顔で憐れんでくる。
可哀そうなのは、お前らの頭だ。
建は児童相談所に電話した。
何度かけても話し中だった。
悲しいことだ。
世は荒んでいる。
せめてもの希望は、こんなガラクタ、相手にされないだろうという予想だった。
元(有)若竹土建の社屋の裏の無駄に広い廃材置き場で違法改造重機の操縦訓練をさせられた。
私有地内で乗るだけなら大丈夫だろうと思っていた。
甘かった。
宇宙人が(有)藻宮印刷あてに果たし状を送ってきたのだ。
倒産した(有)若竹土建と(有)弥栄鉄工に送ってこないあたり、妙に細かい宇宙人だった。




