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東の涯てのオールド・テスタメント  作者: 隣之 芝生


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第14話 鎮東大将軍ロボ ピストンたける 発進

第2章 現代編

『そうそう、これこれ』


 なんだろう。

 思念波っていうのかな。

 見つけたっていう気持ちが送られてきた。


 建(たける)は溜息を吐いた。

 良かったのか?

 いや、良くない。

 みんな、大きい病院で診てもらった方がいい。


 そっと左右のクローラのレバーを倒す。

 微速前進。

 「ピストンたける」は重心が高い。

 トップヘビーっていうやつ。


 全高3.8m

 重量6.39t

 高さは大体、そんなものだろうと思うけど、重さの方は嘘だと思う。

 

 父ちゃんと叔父さんが拘ってたスペック。

 これ棺桶って呼ばれる奴じゃない?

 そんなもの作って息子を乗せるなよ。

 

 小学生の建でも分かる。

 地面が傾いている所に入ったらダメ。

 絶対、倒れる。

 無駄に広い廃材置き場のガラクタの山の隙間を縫うように平らな場所を選んで進む。


「急げ、建。勾玉エンジンのパワーは無限大だ」


 歩いて付いて来る父ちゃんがウルサイ。

 何が勾玉エンジンだよ。

 ただの焼玉エンジンだろ。

 どう贔屓目に見積もっても30馬力がイイとこなのに、なんで動くんだよ、この重機。

 なんで油圧シリンダーにまで回す余力があるんだよ。


「安心しろ、タケちゃん。ピストンたけるは無敵だ」


 反対側から歩いて付いて来てる叔父ちゃんもウルサイ。

 嘘つけ、お前らが思い描いてるのは使い捨ての量産機だろ。

 馬鹿兄弟のネーミングセンスには1ミリも期待してなかったけど、僕の名前を混ぜるな。


『ククク、鎮東大将軍ロボ ピストンたける、オマエの性能を見せてもらおう』


 宇宙人も思念波でウルサイ。

 ブラックホールに吸い込まれて消えて欲しい。


 「ピストンたける」は無敵の巨大ロボなんかじゃない。

 ただの違法改造重機だ。

 3.8mぐらいで巨大って言うな、恥ずかしい。


 バックホーを土台にして、ポン付けの樽みたいな胴体の上にガラス張りの運転席がある。

 胴体の左右に無理やり取り付けたアーム。

 

 右のアームには、グラップルとかバクラーとか呼ばれる小型のカニのハサミみたいなのが付いている。

 鉄筋コンクリートを砕くことができるけど、補助的なもの。

 大型の重機が砕いたあとに細かい破砕作業をするやつ。

 

 左のアームには、アースオーガって呼ばれる杭打機。

 名前はカッコイイけど、やっぱり補助的なもの。

 杭打ち専門の重機みたいな打突力はなくて、植樹するための穴を地面に空けるぐらいの能力。


 そして、操作が複雑すぎる。

 アームの上下、左右、挟む、打つのジョイスティックが全部、別。

 クローラーの操作レバーも左右で別。


 胴体の旋回のレバーもある。

 アクセルとブレーキもある。

 アームを振ると倒れるからアウトリガーを出して車体を固定するのも忘れてはいけない。


 建は小学生なのに。

 無免許運転なのに。


 やっと前方に巨大ロボが見えてきた。

 丸っこい、ずんぐりむっくりの巨体。

 クローラーじゃなくて足がついてる。


 おかしいな。

 ニュース映像で見た時はオフィス街のビル群と肩を並べるようなサイズ感だったのに。

 今はこっちに合わせてくれてる感じの大きさ。


 二足歩行ロボは歩かない。

 動かずに観察してる。

 アームが届く距離まで近づいてから、アウトリガーを張り出し終えるまで2分ぐらいかかったけれど、まだ見てる。


 レバーが多すぎて、何度も間違えて、出したり、引っ込めたり、更に5分ぐらいかかったのだけれど「ピストンたける」の前で宇宙人の巨大ロボが武者震いをした。


『祝福と呪いを検知』


 オイ、宇宙人。

 ただでさえ迷惑なのに、気味の悪いこと言うなよ。


 目の前の巨大ロボが、ずんぐりむっくりのシルエットに似合わない華麗なステップでパンチやキックを繰り出してくる。


 死んだと思った。

 死んでなかった。

 遊ばれてるのか?


 ガンガン殴られて、ゲシゲシ蹴られているんだけど、なんともない。

 当たっているんだけど、どうということもない。

 寸止め?


 いや、当たってる。

 ボロボロになっていく宇宙人の巨大ロボの手足。


 演出?

 宇宙人、その技術力をもっと有効利用しろよ。


 どうにかカニのハサミを届かせたら、吸い込むみたいに腕を挟むことができて、時間をかけて、杭打ちを胸に当てたら、大きな穴が空いて、倒れて動かなくなった。


『フハハハハ。さすがだ、鎮東大将軍ロボ ピストンたける。来週も期待してるぞ』


 来週ってなんだよ。

 また来るつもりなの?

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