第12話 兄貴の破滅願望
翌日、兄貴がおかしなことを言い出した。
「クサカリ、預かってくれるかな。ちょっと行ってくるよ」
最初は強くぶつかって、後は流れでなんとなく。
そんな感じで自分の首の獲られかたを思い浮かべてた俺は混乱した。
「お爺様の代に攻めて、落とせなかったトコがあるんだけど、ソッチに先に行ってくる」
兄貴はヤケを起こしてる。
クサカリを置いて行くなんて、縁起が悪いでしょ。
「クサカリ無しでも国津神とわたりあえたら、なんか変われるような気がするんだ」
それ、絶対、駄目なやつ。
おい、「一三」、兄貴を止めろ。
「火宅」も「一三」に止めるように言えよ。
……そうか、オマエら、俺達を呪ってるんだったよな。
「僕に何かあったら、クサカリを都に送り届けてよ。火草刈は、それで許されると思うから」
兄貴が腹から声をだしただけで、俺は動けなくなった。
兄貴の姿が丘の向こうに消えて見えなくなった頃に、やっと身体が動いた。
俺は、大急ぎでウチで一番上等な絹布を引っ張り出して、直接、見ないように手探りでクサカリを包んで抱きかかえて、追いかけた。
おい、「火宅」、「一三」はどっちに行った。
教えねえと、肥溜めに飛び込むぞ。
渋々といった感じで「火宅」から反応があった。
「一三」に近づいたら、もう逆らえないと付け足しが伝わってきた。
おおよその位置。
叔父貴の与太話を思い出した。
神威十領が一つ、「殯宮」
天津神の軍勢に取り囲まれて、城に立て籠もって飢え死にした遠い親戚。
親類縁者が相手でなければタダの人の俺だが、どんなに薄くても、ちょっとでも縁があれば縋るしかねえ。
昨日、兄貴を背負って屋敷に帰る途中、蓮の花が咲いてた。
兄貴はスゴく嫌がってた。
心が弱ってる今の兄貴が絶対に見たら駄目なやつ。
踏ん張れ、俺。
「火宅」から、ほんの少しだけ火の粉が舞う。
ちょっとだけ、走るのが早くなる。
兄貴は多分、走ったりしない。
なんなら、途中の木陰で休憩して、そのまま眠っちゃったりするはず。
いや、わかんねえ。
ヤケを起こしてる時は妙な行動力を発揮するもんだ。
畜生。
殯宮、与太話であってくれ。
糞ッタレ。
馬に乗ってくりゃあ良かった。
族滅したんだろ?
独りぼっちで、まだ生きてんのか?
親類縁者で殺し合うのが日常風景つっても、呪われた者同士ぐらい仲良くしたいってのによ。




