双子の名前。
「取り敢えず、この子達のことをどうするか考えなくてはならないわね……」
腕の中で抱っこをしていると、落ち着いたのか眠り始めた双子ちゃん。
ゆっくりベッドに降ろし、これからどうするのかを考える。
私の子供では無いのだから、オディロンを探し出して突き返すのも一つだけど、このままオディロンの所へ返せば、この子達は生きられない可能性が高いだろう。
いくら自分がお腹を痛めて産んだ子では無いと言っても、そんな見殺しにするようなことは出来ない。
それに、生まれてきたこの子達に何の罪もないのだから。
罪があるとすれば、この子達を私に押し付けたオディロンと、その愛人のレイナである。
「エルダ。まずはこの子達のミルクと、オムツ。それに、何枚か服も欲しいわね。買い物に行ける人はいるかしら? あと、お父様とお母様に連絡したいから手紙の準備もお願い。」
エルダは目を見開く。
まるで私の言葉が信じられないような……そんな感じだ。
「私だって人情くらい持っているわ! まだこれからの事は決め兼ねているけど、何をするにも時間が必要なの。だから……エルダには迷惑をかけてしまうかもしれないけど……その……色々助けてください。」
子供の件にしても領地の件にしても、この家の当主であるオディロンがいないにしても、家に財産がないのだとしても、一朝一夕で解決できるものなんて何も無い。
「いえ。お嬢様ならそう言うと仰っていましたよ。昔から放っておけない性格でしたからね。野良猫や野良犬、人を拾ってきたこともありましたか。」
目尻を下げながらホッとした様子を見せるエルダ。
昔はよく色々なものを拾っては怒られたことを思い出す。
人を拾ってきた……というのは語弊だけど……。
終戦して、領地も国も表向きは落ち着いているように見えるけど、裏までまだまだ手は回っていないところも多くある。
裏側に住む子が倒れていたのを見た時、私は昔の自分を重ねてしまった。
お腹の空いて倒れていた子供が、自分の子供の時にそっくりだったのだ。
そう思ったら、家に連れて帰ってきてしまっていた。
お母様たちに頼み込んで、家の従者として育ててくれたのには感謝しかない。
と、同時に昔の自分が少しだけ救われた……そんな気がした。
「昔の話よ。昔のね……。」
「ふふ。本当に素直じゃないんですから。では私はこれからお嬢様に頼まれたことを片付けてまいりますので。その子たちをお願いしますね。」
エルダは双子ちゃんの頭を軽く撫でると、会釈をして部屋から出ていく。
子供が寝ていることもあり、エルダが居なくなると部屋の中がシーンと静まり返った。
その所為だろうか。
今になってオディロンとレイナに対してフツフツと怒りが沸いてくる。
「それにしても本当に腹が立つわ! 自分たちが産んだ子を押しつけて。一体何を考えているのかしら!」
思っている以上に大きな声が出てしまったことに吃驚し、自分の声で赤ちゃんが起きてしまっていないか確認した。
どうやらこの双子ちゃんは肝が据わっているらしい。
私の声にも動じることなく、スヤスヤと寝ている。
それに、袋の中に入っていてもオディロンが居なくなるまで泣き声すら出さなかったのだ。
人の機微に気づきやすい子達なのか、赤ちゃんながらに何かしら分かっていたのかもしれない。
今は泣いてはいけない……と……。
私は双子ちゃんの頭を優しく撫でながら、今後の方針を決めた。
「ここまで来たら、この子たちを立派に育てて、オディロンとその愛人をけちょんけちょんにしてやるんだから待ってなさい!! 九十八歳まで生き抜いたババアの根性舐めるんじゃないわよ!!」
言葉に出したことで、フッと気持ちが軽くなった。
オディロンたちに対する怒りは一旦置いておいて、まずはこの子達が過ごせるように準備をしなくてはならない。
その為にも、先ずはこの子達の名前から考えることにした。
「名前……は袋の中にも入っていなかったし、決まってないってことよね。」
二人とも男の子だし、少し前向きな名前がいいような気がする。
どんな困難にも立ち向かう、そんな子に育って欲しい。
「そうね、この金髪の子はカイトスにしましょう。」
昔、暇があるとよくプラネタリウムに行っていたことを思い出す。
確かそこで、カイトスという星には“逆境に負けない”という意味があると読んだ気がした。
顔はよく似ている双子だが、髪の色はそれぞれ違った。
カイトスと名付けた子は金髪。
オディロンが金髪だから、その色を受け継いだのだろう。
そして、もう一人の子はピンクブロンドの髪色をしている。
レイナがもしかしたらピンク系の髪色をしているのかもしれないが、レイナに会ったことがないため、憶測にしか過ぎない。
「こっちの子は……アルナイルにしましょう。」
アルナイル。
自分への可能性を信じて突き進む。
とてもいい名前だと思う。
私は双子ちゃんの柔らかい髪を撫でてから、エルダが戻ってくるのを待った。
***
「旦那様。ジェラルディーナお嬢様からお手紙が届いております。」
「ジェラルディーナから?」
マルクから手紙を受け取り、手紙の封を開けて読み始めた。
ーーーー
お父様へ
急なお手紙申し訳ございません。
急ぎ、お願いがあってこの手紙を書いています……
ーーーー
結婚したばかりのジェラルディーナからお願いなんて、何があったのか……。
手紙を読み続けていけば行く程、そこには信じ難い内容が記載されていた。
「はぁ……。マルク。急だが、ジェラルディーナに会いにいく用事が出来た。フレイチェも一緒の方がいいだろう……」
手紙を読む限り、女性同士しかわからないこともあるはずだ。
野菜の苗がほしい……これについては何となくわかる。
領地の状態があまり良くないのだろう。
まぁ、野菜の苗があるだけで上手くいくとは思えないが……。
その辺はジェラルディーナの事だ。
何か考えがあるのだろう。
昔から発想力だけは豊かだからな……。
苗については百歩譲っていいとして……問題は、子供を育てることになった……ということについてだ。
まだ結婚したばかりのジェラルディーナが、子供を育てることになった?
何が起きてそうなったのか……見当がつかない……。
「はぁ……。これは会ってから話を聞くしかないが……面倒なことに巻き込まれていなければいいんだがな。」
翌日、私達は急いでジェラルディーナの所へ向かった。




