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お酒と言えば……お漬物ですね!

フィリベールに招待客のリストアップなどをお願いした私は、その足で領民たちが作業している畑に来ていた。


畑は丁度大根の収穫時期ということもあり、皆がせっせと収穫している。


大根の大きさも確認させてもらったが、申し分ないほどの大きさだ。


「「「りょうしゅさまー!!」」」


収穫を手伝っていた子供たちが私に気がついたようで、こちらに向かって手を振ってきたので振り返す。


皆の方に向かって歩いていくと、この辺りを取り仕切ってくれているダイダンさんが近づいてくる。


「お嬢、久しぶりじゃねぇですか!」


以前会ったときはトンベリーのせいもあって今にも死にそうな顔をしていたが、今は生き生きとしている。


畑が元に戻ったということもあるのだろう。


「ダイダンさんも! 元気そうでよかったわ! 大根もすごくきれいに成長しているわね。」


「ありがとうごぜぇやす! これもお嬢のおかげですよ。」


「それで……今日は大根を見に来ただけじゃねぇんですよね。何か用があるんじゃねぇですか。」


ダイダンさんの言葉に、これから何をしてほしいかを伝えていくことにした。


「ダイダンさん。たくさん収穫してもらって申し訳ないのだけど、大根はね……一〜二週間しか持たないのよ。」


「そこで、長期保存も可能な漬物というのを作りたいと思っているの!」


「もしよければダイダンさんの奥さんたちに作っていってもらえないかと思ったんだけど……可能かしら。」


この世界にあるのは氷室くらいで、冷凍庫や冷蔵庫は存在しない。


そのため野菜などを長期保存するのはなかなか難しい。


「かまいませんよ。野菜が少しでも長持ちするんであればそれに越したことはありませんしね。」


「それにお嬢ならきっとおいしくしてくれるんでしょう!」


そういうとダイダンさんは奥さんを連れてきた。


見たところ、他の仲間たちの奥さんも手伝ってくれるようだ。


因みにダイダンさんの奥さんの名前はコンリルさんと言うらしい。


二人合わせて大根とは……沢庵づくりにもってこいの名前だ。


それから私は何を作るのかを説明していく。


「これから作ってもらうのは沢庵っていうの。」


「沢庵にするとね、長期保存が可能で一〜二ヶ月くらい持つようになるの。」


「そしてご飯のお供にとてもよく合うのよ!」


「それと今回は梅干しも一緒に作ってもらうわ。」


沢庵はまず紐に吊るして干す時間が必要だ。


そのために、まずは大根の頭の部分を切り落としていく。


「葉っぱの部分はお味噌汁などに入れて食べてもおいしいから、別の料理に使ってね。」


「切り落としたら、一本一本をひもで結んでいきます。今回は藁を使って結んでいきましょう。」


藁を編んで紐状にすると、大根に結んでいった。


「左右に紐をつけたら吊るしていくわ。」


「結構重たいから二人でやっていった方がいいかもしれないわね。」


「全て吊るしたら三週間くらい干しておくの。」


大根を干すときは大きさにもよるが、長く干せば干すほど保存期間が長くなると言われている。


三週間干したら、樽の中に大根を入れていく。


この時に砂糖と塩、それに米ぬかと昆布を交互に入れていくのがポイントだ。


「きれいに全てを入れきったら、大きめの石で重りをのせるの。」


「大体三週間くらいで食べられるようになるわ!」


私は今話した内容を分かりやすいようメモにして皆に配った。


「またできたころに見に来るから、大根ができたら同じように作ってもらえるかしら。」


「それと……梅干しなんだけど。」


黄色く熟してきている梅を持ってくると、不思議そうな顔で皆が見ている。


確かに山の方では梅を見かけるけど、それ自体を見るのは初めてなのだろう。


まずは梅をきれいに洗ってヘタを取っていく。


きっとみんなで行えばすぐ終わるはずだ。


「沢庵とそこまで作り方は変わらないのよ。」


「樽の中に梅と塩を交互に入れていくの。」


「その前に樽に焼酎をかけてほしいんだけど、今回はこれを使って頂戴。」


まだ焼酎が出来上がっているわけではないが、一応時間もたっているし、少しは効果があるだろうということで少しだけ拝借してきたものだ。


樽に梅と塩を入れ終わったら、最後に蜂蜜を入れてから重しを乗せて暗いところで保管をする。


「少しずつ梅から水分が出てくるから、出てきたタイミングから二日おきくらいに一度樽をゆすって中を混ぜてあげてね。」


「重労働だから、無理そうなら男の人に頼んでも良いと思うわ。」


漬け込み始めてから二週間くらいすると、水分で樽が満たされるようになるはずだ。


そしたら最後は天日干しをしていく。


「最後が少し大変なんだけど、三日間くらい天日干しをしてほしいの。」


「陽が落ちてきたら室内に入れて……を繰り返してもらうわ。」


「一応それ用に小さな小屋も作ってもらったから、そこに移動してくれるかしら。」


ざっと説明してしまったが、一応メモを見れば一通りの内容は分かるようになっているはず。


勿論初めのうちは時間を見ながら一緒に行っていく予定だ。


「コンリルさん。私もなるべく時間があるときは見に来るようにしたいのだけど、この作業のリーダーを任せても構わないかしら。」


コンリルさんにお願いをすると、胸をトンと軽く打ってから「任せな!」と言ってくれた。


見た感じ、姉御っていうオーラが出ているけど、ダイダンさん同様かなり慕われているらしい。


皆のことも指揮を執ってくれているし、これなら安心して任せられるだろう。


「では、お願いいたします。」


「また、一週間後くらいに様子を見に来ますね!」


「沢庵と梅干しができたら、みんなで試食いたしましょう!」


そう伝えると、皆に手を振って私はこの場を去った。


***


「いやぁ、今度の領主さまは変わっているね。」


「お前さんが言っていた通り、人がよさそうな嬢ちゃんでよかったよ。」


旦那に呼ばれて畑に行くと、畑にいたのは似ても似つかない格好をしたお嬢さんだった。


畑仕事を女性が手伝うこともなくはないが、大体が男の仕事となっていて、女性は家の仕事をメインに行うことがほとんどだ。


できるとしたら裁縫や料理位なものか……。


手伝いたくても旦那のことを手伝うことができない……そんな歯がゆい気持ちをここ数年ずっと抱えてきた。


不作の時期なんか、特にそうだ。


旦那は落ち込み……収入も減って生きていくのがやっとな生活。


生活に余裕がないから喧嘩したくなくても喧嘩ばかりしてしまう。


そんなことが続いたある日。


領主が変わった。


そして領主が変わってからというもの、悪い方向にばかり進んでいた状態が、逆にどんどんいい方向へと変わっていったのだ。


そして今年の収穫時期。


旦那はいつも以上の収穫だと喜んでいたのを覚えている。


私もいくつか野菜を見せてもらったが、それはそれは立派なものばかりで、今まで苦しんでいたことを知っていたからか涙が止まらなかった。


それから数日して、私たちに頼みたい仕事があると言ってきたときには驚いたものだ。


なんでも漬物というのを漬けていくらしい。


初めだからと大根の漬物と梅干しとやらの作り方を聞いて、一緒に作っていく。


時間はかかるが、その分保存期間も長くなるらしい。


そして最近は流行の米とも相性が抜群なんだとか。


時間が経つにつれて、少しずつ中身の重さが変わってきて心配だったが、これが丁度いい状態ということだった。


そしてそれからまた一ヶ月の時が過ぎ――


ついに大根の漬物と梅干しが出来上がったのだ。


農場にいる嬢ちゃんにもなんだか慣れちまって、いつの間にか主婦の会話を楽しんでいる。


子供が五人いると聞いた時にゃ驚いたもんさ。


「コンリルさん。これはコンリルさんが一番に食べてくださいね!」


そう言って私に沢庵と梅干しを渡してくる嬢ちゃん。


他の皆も私が食べるのをじっと見ていた。


私は恐る恐る口に入れた。


「う……うまいな。」


「少ししょっぱいが、またそれがいい。」


「梅干しは逆に酸っぱいはずなんだが、蜂蜜の効果で甘さがあってとてもおいしい。」


「これならご飯が進むといった理由がよくわかるよ。」


「わぁぁぁ! よかったです!」


「初めてなので少し不安だったんですが……コンリルさん達が頑張って作ってくださったお陰ですね!」


「これからもよろしくお願いいたします。」


領主様に褒められるなんて思ってもいなかったが、すごく嬉しかった。


「あぁ。これからも漬物づくりは私たちに任せな。」


私はこの時の嬢ちゃんの笑顔をきっと忘れることはないだろう。


嬢ちゃんだけじゃない。


皆が幸せそうに食べる姿を……

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