第107話 世直しのため聖女として担がれました・前編
時は戻り現在。
大司教を含めた神官たちは全員死亡した。精霊に対して行ったのが報いを受ける。言い換えれば善行を積んでいれば、死にはしないのだ。
(思った以上に悪事に加担していたのね……。上層部だけかと思ったけれど、教会は全体的に腐っているのかも)
先ほどの映像とテオの声はハート皇国全土に配信されており、混乱が起こるのは火を見るよりも明らかだ。ここで聖教会を一気に叩くため、私たちは帝都に向かう。
「ここからは時間との勝負だな」
「ええ、風の精霊に力を借りましょう」
私は『風の精霊』と言ったせいか、火山の噴火のような凄まじい咆哮が大地を、空を震撼させた。
「おや。私以外にも我が主人の素晴らしさに気づいた大精霊はいたようです」
「大精霊!?」
気持ちにそんなすごい精霊がまだ眠っていた──いえ封印されていたなんて、知らなかった。
「二大精霊が封じられて、精霊を眷族扱いしていたら、大地が長年不足になるにも当然ですわ」
「そうだな……。その可能性をどうして俺たち亜人も気づかなかったのか。儀式や豊穣の感謝は今でも続いているが、その役割は教会に取られてしまった。それこそがあの者たちの狙いだっただろうに……!」
(信じていた……信じすぎて、疑うことを恐れてて、安易な解決方法でなんとかしようとしたから、過去の時間軸ではダイヤ王国を滅ぼすという結論に至ったのだろうか)
冷たい風が吹き荒れる中、それは嵐にも似た激しさと怒りがあった。
凄まじい風が吹き荒れる中、テオが結界を張ってくれたので、吹き飛ばされずに済んだ。
空から姿を現したのは、幾つもの鎖に繋がれた空色の美しいドラゴンだった。
「ド、ドラゴン!? 風の大精霊が空の上にいたというのか!?」
「みたいですね……」
想像以上に巨大で、でも魔獣とは違って威圧感はない。
『私も連れて行って。もう縛られた空の檻は嫌だ。どこにも行けず、朽ち果てるまで約束した領地を守れず、声が届かないのは嫌だ』
声を聞いただけで、魂が震えて涙が溢れ落ちそうになった。
独りぼっちで周りが敵なのか味方なのか分からないまま、ずっとたくさんの時間軸を繰り返してきた。
何もできず、決められたシナリオの上を歩くことが苦しくて、辛くて、投げ出しそうになった気持ちが浮かび上がる。
それに比べて、風の大精霊はすごい。鎖を引きちぎってでも、今を変えようとしたこの子に敬意を──。
「あなたは強い子なのね。あなたの風はたくさんの種をずっと遠くまで運ぶ。思いも……アル・ウードの音色さえ」
『その楽器……好き』
「じゃあ、あなたの名前はリュート。あなたの好きな楽器の別の名前で、私たちの国では『芯が折れない』と『強き意志』の意味があるの」
『今日から私はリュート……! ああ、リュートが私の名前になった!』
あれほどまで頑丈だった鎖は、あっという間に灰となって崩れ落ちた。
***
お父様お母様お兄様。
昔ドラゴンに乗って空を飛びたいと言ったのを覚えていますか?
幼い頃だった夢が今、叶いました。
通常なら馬を走らせて一週間以上はかかる距離なのだが、運よく六大精霊の一角、風の大精霊と再会を果たす。ドラゴンもこの地の空に封じられており、私が契約を行うことで解除した。
風の大精霊の現身はドラゴンであり、彼の背に乗り一、二時間で帝都上空に到着する。飛んでいる時の風圧や重力は、魔法と精霊の加護で無効化されていて、肉体的負担は感じていないのだが、やや馬車酔い気味になった。
(もう、絶対全速力で、急いで欲しいなんて……言わない……)
「はははっ、大精霊の力とはこれほどのものか!」
(テンションが高い……)
アレクシス殿下は、揺れに対して耐性があるのか楽しげである。さすが亜人、環境適応能力が凄まじい。私はただの人間で、運動神経もさして得意でもないからか、未だに気分が悪い。
風の大精霊の姿を民衆たちは朧気に視認できるが、私やテオたち、アレクシス殿下、その部下も光の屈折を利用して見えなくしている。
これも突然現れたほうが衝撃的だからという。雰囲気作りなどの演出は大事だ。
「…………」
私が聖女の真似事をすることが決まってから、ずっとお父様の言葉が頭から離れない。
『魔物が活発化して世界が闇に覆われた時、異界からの転移者が世界を照らす』
『転移者は必ずしも善ではない。魔物は人に取り憑き、孤独な心は『原初の魔女』の器に選ばれ、徐々に精神崩壊を起こし『原初の魔女』が復活した時、世界は滅ぶ。それを救うのは善行を積んだ聖女のみ』
今思ったのは『転生者が世界を照らす』という文面からイコール『聖女』となっていたが、この照らすといのは光の大精霊との契約を結ぶことを示唆していたとしたら、大事なのは『転移者』ではなく、『世界を照らす存在』だ。そして文面に『転生者が必ずしも善でではない』ともあった。しかし最終的に『世界を救うのは善行を積んだ聖女』とあるだけで、よく考えれば『転生者』とは明言してない。
(その時の役割に合う者が『聖女』と呼ばれている? その『聖女』も元々の名称は違っていた、あるいは象徴としての意味合いが強かったとしたら……)
「なあ(ソフィ、大丈夫か)」
「フェイ様、大丈夫ですよ。……まさか約一万メートル上空を飛ぶなんて」
目が覚めた黒猫は、私の肩に乗って心配してくれている。
どうやら猫の姿でも、あの揺れが平気なようだ。まったくもって自分の脆弱ぶりに凹んでしまう。ドラゴンの背に乗っているアレクシス殿下の部下も問題なさそうだ。
(帝都についてすぐに私の出番じゃなくて本当に良かったわ。この状況で唄を歌うなんて無理。もう少し休んで呼吸を整えないと……)
ここは癒やしが必要だと、黒猫のフェイ様に伝えて沢山モフモフさせてもらった。フェイ様ご自身だとちょっとドキドキしたけれど、でもやっぱり落ち着く。
「フェイ様……モフモフ最高です」
「なうう(ソフィ、元に戻ったら……倍返しするからな)」
(早くダイヤ国に戻ってフェイ様に抱きしめて欲しいけれど、これはこれで……至福)
\コミカライズ連載中/
『やり直し悪役女王は溺愛に惑う
〜婚約破棄したいのに、王子の愛が止まりません〜』
#此林ミサ ・ #あさぎかな
21話まで配信中
#ggirls #めちゃコミ
『サレ令嬢とサレ王子の華麗なる復讐劇』
#スドウショウ #あさぎかな
「Colorful! vol.124」コミカライズ連載を開始しました⸜(●˙꒳˙●)⸝
各配信サイトでも配信予定です!
【短編】愛しい人、貴方と結婚できません。
投稿しました!
https://ncode.syosetu.com/n8957mw/ #narou #narouN8957MW
【短編】
そんなに幼馴染が大事なら、私も好きにしますわ https://ncode.syosetu.com/n6811mw/
#narou #narouN6811MW
どっちもランクインしました




