第14話「明日の仕込み」
朝六時。
バンズが届いた。
厨房で鉄板が温まる。
昨日まで旧票を置いていた棚には、紙ナプキンの予備が入っている。
ぱむちゃんが一束取る。
客席へ運ぶ。
ぱむ。
◇
世達ちゃんは配送台帳を開いていた。
《完了》
《持戻》
《確認中》
その横に、新しい欄がある。
《未確定のまま保管》
「分からないものを、完了か事故へ急いで入れないようにします」
昨日の白紙になった受領票は、捨てていない。
《閉じた候補/再利用不可》
別の袋へ入っている。
「消えたことも履歴ですので」
ぱむちゃんは袋を棚へ戻した。
◇
十時。
近距離便が三件。
坂上団地。
商店街。
公園管理所。
至誠ちゃんが配送票を並べる。
「坂上団地は通常便で間に合います!」
一枚を通常便へ。
「商店街は徒歩便があります!」
もう一枚を別のトレーへ。
三枚目を持つ。
《公園管理所/十一時まで》
ぱむちゃんが近づく。
至誠ちゃんの右手が少し上がる。
止まる。
配送票を見る。
ぱむちゃんを見る。
「十一時までです!」
指は下がったまま。
ぱむちゃんもまだ持たない。
◇
秩序ちゃんが予備経路表を貼り替える。
一本の太い線ではない。
《通常便》
《徒歩便》
《緊急代替》
《確認待ち》
「一経路が止まっても、他を残します」
古い《ぱむ対応》の欄には、書き足されている。
《本人判断》
消されていない。
◇
昼前。
共同倉庫から荷物が届く。
昨日始まった夜間受取を使った最初の返送便だった。
中身は、空の保冷箱。
特別な物ではない。
ぱむちゃんが倉庫へ運ぶ。
世達ちゃんが記録する。
《返却物/通常》
昨日の選択は、もう日常の欄へ入っていた。
◇
午後。
真意ちゃんが古い記録箱を閉じる。
箱の表には、答えを書かない。
《差出人 UNKNOWN》
《本来の届け先 UNKNOWN》
《受領結果 西六番街共同倉庫》
三行が並ぶ。
「分からなかった二つは、そのまま残す」
ぱむ。
「結果だけ、分かったこととして残す」
箱が棚へ入る。
◇
夕方。
公園管理所の配送票は、まだ配送台にあった。
通常の自転車便で間に合うことになった。
至誠ちゃんがそちらへ移す。
「十時五十二分到着予定です!」
ぱむちゃんは見ている。
「ぱむちゃんでなくても間に合います!」
ぱむ。
紙袋を取らない。
自転車便の担当が持っていく。
◇
閉店後。
明日のバンズ。
明日の野菜。
明日の配送票。
明日の予備箱。
みんながそれぞれの場所へ置かれていく。
ぱむちゃんは厨房から配送台まで、小さな空箱を運んだ。
ぱむちゃんは空箱を置く。
その横に、まだ何も入っていない明日の配送トレーがある。
ぱむ。
厨房では、明日の仕込みが始まっていた。




