第13話「届かなかったもの」
翌朝。
西六番街共同倉庫の棚には、昨日の紙袋がなかった。
管理人が空箱を畳んでいる。
「食べたよ」
ぱむ!
「夜勤の三人で分けた」
壁の当番表を指す。
昨日まで空いていた《夜間受取》の欄に、管理人の名前が入っている。
「受け取れるって分かったから、今後ここ宛ての便は夜も受けることにした」
ぱむちゃんは新しい名前を見る。
「便利になるよ」
ぱむ。
昨日の一個は、もう昨日だけではなかった。
◇
PANDEMONIUM BURGERへ戻る。
配送口の前に、白い箱が置いてあった。
昨日まではなかった。
《店内受領/旧票対応》
中は空。
世達ちゃんが伝票を持ってくる。
「昨日の選択で、この受付は成立しませんでした」
ぱむちゃんが箱を見る。
「準備していた店内受領枠は廃止します」
蓋を外す。
折り畳む。
「保管場所も今日から別用途へ戻します」
ぱむ。
◇
奥の小さな棚。
透明ケースが一つ空いている。
ラベルだけ残っていた。
《未完了票/店内受領候補》
真意ちゃんがラベルを剥がす。
「昨日までは、ここに置けば受領側の記録を続けられた」
ぱむ。
「今日はできない」
剥がした跡だけ、棚の色が少し違う。
「正しかったから消えた、とは言わない」
ラベルを捨てず、記録袋へ入れる。
「選ばなかったから消えた」
◇
昼。
客席の隅で、至誠ちゃんが配送手順を直している。
《旧票発見時》
昨日までは二本あった線。
《外部再配達》
《店内受領》
店内受領の線に一本、横線が引かれた。
消しゴムでは消さない。
横に書く。
《今回の旧票では閉鎖》
ぱむちゃんが見る。
「残します!」
至誠ちゃんは紙を押さえる。
「できなかったことも、記録です!」
ぱむ。
◇
夕方。
共同倉庫から連絡が来た。
《夜間受取 一件》
昨日できた当番が、もう別の荷物を受け取っている。
同じ時刻。
店内受領箱だった白い箱は、厨房で紙ナプキンの予備箱になっていた。
ぱむちゃんが一束入れる。
蓋はない。
もう受領箱には戻らない。
◇
世達ちゃんが昨日の記録を閉じる。
《共同倉庫 受領成立》
《夜間受取運用 開始》
《店内受領候補 閉鎖》
《専用保管枠 解除》
損失額の欄は空白だった。
「金額にはできません」
ぱむ。
「でも、ゼロではありません」
◇
閉店前。
ぱむちゃんは紙ナプキンの箱を運ぶ。
昨日なら、古い用紙を受け取るために空けてあった場所。
今日は別の仕事に使われている。
ぱむちゃんは空になった棚へ手を伸ばさない。
その場所だけ、昨日より少し明るい色で四角く残っていた。




