第10話「二つとも、お届け先です」
紙袋は、一つだった。
いつもの茶色い袋。
中には、いつものバーガーが一個。
古い用紙の複写が、持ち手に挟まれている。
ぱむちゃんは触らず、机の前に立った。
◇
秩序ちゃんが二枚の確認票を置く。
《受領候補A》
《PANDEMONIUM BURGER/現在店舗・配送口》
《受領候補B》
《旧第三制作室跡/現・西六番街共同倉庫》
「どちらも現在、到達可能です」
住所。
存在。
受領地点。
必要な条件。
二枚とも、同じ数の丸が付いた。
「測れる条件は、両方とも適合します」
ぱむ。
◇
真意ちゃんが古い用紙を見る。
「差出人はUNKNOWN」
指を一つずらす。
「本来の届け先もUNKNOWN」
もう一つ。
「この二地点が、当時の指定先だった証拠もない」
ぱむ。
「今、受領できる候補だという観測だけはある」
真意ちゃんは用紙から手を離した。
◇
二諦ちゃんは、二枚の票の間に線を引いた。
「Aを成立させれば、Bは今の形では残りません」
「Bも同じです」
線の中央へ、一本だけ縦線を引く。
「同時完了する枝は、確認できません」
ぱむちゃんが左右を見る。
「二つとも有効です。でも、二つともにはできません」
◇
彷徨ちゃんが配送口を開く。
右へ続く道。
共同倉庫へつながる。
「こっち」
いったん閉じる。
もう一度開く。
左。
現在店舗の受領地点へ戻る。
「こっちも」
至誠ちゃんが時刻を確認する。
「どちらも今なら間に合います!」
右手は上げない。
世達ちゃんは二枚の受領記録をクリップに挟んだ。
「受領後に、成立した方だけ記録します」
日付欄は二枚とも空白だった。
◇
秩序ちゃんが確認票を返す。
「A、受領可能」
一枚目。
「B、受領可能」
二枚目。
真意ちゃんは古い用紙を透明袋へ戻した。
二諦ちゃんは中央の線からペンを離す。
至誠ちゃんの右手は下がったまま。
世達ちゃんはクリップを閉じた。
ぱむちゃんが紙袋へ手を伸ばす。
持ち上げる。
いつもの重さだった。
ぱむ。
◇
配送口の前。
彷徨ちゃんが扉に触れず、脇へ退いた。
ぱむちゃんは紙袋を持ったまま立つ。
机には、丸の数が同じ二枚の確認票。
その横に、日付のない二枚の受領記録。
ぱむちゃんは振り返る。
誰の手も上がらない。
紙袋の持ち手が、丸い手の中で少しだけ折れた。
ぱむ。
ぱむちゃんは配送口へ向き直った。




