第7話「最初の袋」
透明袋は、二つの床印の真ん中にあった。
ぱむちゃんは持たない。
受領箱を開ける。
古い控えを一枚出した。
《六二番/時計店・修理受付》
ぱむ。
◇
向かいの時計店。
大きな丸時計の下を通り、裏口へ回る。
《配達は裏口へ》
札はまだ同じ場所にあった。
修理受付の男が眼鏡を上げる。
「あ。六二番」
ぱむ!
「今日は袋ないんだな」
ぱむ。
作業台に、小さな目覚まし時計がある。
「これ、覚えてる?」
ぱむちゃんが近づく。
「前に間に合わなかった人の。別の店で直ったって話しただろ」
ぱむ。
「また持ってきてくれた。今度は急ぎじゃない」
男は裏蓋を閉じる。
十二時のベルが鳴った。
「あ、飯」
工具を置く。
目覚まし時計の横へ札を立てた。
《午後再開》
「昼休み、決めたんだ。急ぎじゃない一件なら午後に回す」
奥から弁当箱を持ってくる。
「前は食いながらやってたけどな」
◇
男が棚から畳んだ紙袋を出した。
《六二番》
「なんとなく取ってあった」
ぱむちゃんが両手で受け取る。
角だけ少し柔らかい。
「助かったのは本当だよ」
ぱむ。
「そのせいで別の時計が遅れたのも、本当」
目覚まし時計を指す。
「でも、その人はまた来た」
男は弁当箱の蓋を開ける。
「俺もまだここにいる」
ぱむちゃんは紙袋を見る。
目覚まし時計を見る。
《午後再開》を見る。
ぱむ。
◇
店へ戻る。
世達ちゃんが過去の控えを三枚並べた。
《六二番/受領済》
《坂上団地/受領済》
《町工場/受領済》
その後ろ。
《目覚まし時計/翌日修理》
《坂上便/通常経路へ移行》
《町工場/予備部品復活》
ぱむちゃんは六二番の控えをめくる。
《受領済》の下から、もう一枚出た。
《目覚まし時計/翌日修理》
坂上団地をめくる。
《通常経路へ移行》
町工場。
《予備部品復活》
ぱむちゃんは三組を横へ並べた。
◇
閉店前。
六二番の古い紙袋を畳み直す。
捨てない。
透明袋の隣へ置く。
紙袋には《六二番》。受領済み。
透明袋には《UNKNOWN》。
ぱむちゃんは六二番の袋の上へ手を置いた。
少し離れた床には、昨日付けた二つの印が残っていた。
透明袋には触れなかった。




