第2話「届かなくなった場所」
黄砂海への便は、今日もなかった。
壁の予定表。
《次便 二日後》
ぱむちゃんは空の箱を見る。
ぱむ。
◇
昼。
観測塔から通信が入った。
「ぱむちゃん、いる?」
画面に、前に部品を受け取った職員が映る。
ぱむ!
「やっぱりいた」
机の上に、小さな紙袋。
《黄砂糖菓子》
《PANDEMONIUM宛》
「新しいの出たんだよ。前なら今日送れた」
職員が袋を持ち上げる。
「次の便、二日後」
ぱむ。
「賞味期限、明日」
ぱむちゃんが配送口を見る。
壁には第四部で小さくした表がある。
《緊急 代替なしのみ》
画面の向こうで職員が笑う。
「来たら渡せるけど」
ぱむちゃんは配送口へ一歩進む。
止まる。
画面へ戻る。
ぱむ。
「そっか」
職員は袋を開けた。
一個食べる。
「うまい」
もう一個取る。
「見てる?」
ぱむ!
後ろから別の職員が手を伸ばした。
「俺の分」
「まだ映ってる」
「いいだろ」
三人目も来た。
紙袋は画面の向こうで軽くなっていった。
◇
夕方。
黄砂海から気象データが送られる。
《通常便》
《到着 二日後》
観測塔では解析予定を書き換えていた。
「水曜を金曜へ」
「金曜、点検」
「じゃあ土曜」
「俺休み」
「月曜」
ホワイトボードの文字が三回消された。
最後に《月曜 解析》が残った。
◇
二日後。
黄砂海便が来た。
気象データ。
交換工具。
手紙。
乾燥した保存食。
小さな封筒が一枚。
ぱむちゃんが開く。
写真だった。
観測塔の三人が、黄砂糖菓子を持っている。
一人は口に二個入れていた。
裏側。
《次は日持ちするやつにする》
その下に別の字。
《こいつが半分食った》
さらに矢印が一本。
写真の、二個くわえた職員を指している。
ぱむちゃんは写真と画面を見比べる。
ぱむ!
◇
写真は店の棚へ置かれた。
その横には、黄砂海から届いた乾燥保存食。
その日の閉店前。
クルーの一人が写真を手に取った。
「これ、何食べてるの?」
ぱむちゃんが写真を指す。
ぱむ!
「おいしかった?」
ぱむちゃんは画面越しに見ただけだった。
写真をもう一度指す。
ぱむ。
写真は棚へ戻った。
黄砂糖菓子の場所だけ、空いていた。




