第24話「配送網を小さくします」
壁いっぱいだった配送表が、半分になった。
秩序ちゃんが一本ずつ線を消す。
「常時接続をやめます」
《近距離 地元便》
《遠距離 三日ごと》
《緊急 代替なしのみ》
《受領後相談 別受付》
《ぱむ対応 本人判断》
ぱむちゃんが最後の欄を見る。
ぱむ。
「規定で出動させません」
◇
坂上団地。
薬局宅配員が、昨日の手書き地図を新しい担当へ渡した。
「パン屋裏の坂。雨の日は滑る」
「階段、何段?」
「数えてない」
「数えといてよ」
「今日あんたが数えて」
老人が上から顔を出す。
「七十二!」
二人が見上げた。
「知ってるんですか」
「毎日上がってるからね」
老人は薬の袋を受け取った。
◇
黄砂海。
便は毎日から三日に一度になった。
観測塔の職員が新しい表を壁へ貼る。
「手紙、今日出しても明後日か」
「前は昼に出せば夕方だったのにね」
箱の中に、小さな封筒が一つ。
《誕生日 明日》
職員は時計を見る。
依頼票を一枚取る。
《緊急》の欄まで書いて、止まった。
線を引いて消す。
通常便の箱へ封筒を入れた。
「来年は早く出すよ」
◇
翌々日。
封筒が届く。
受取人は笑った。
「昨日だったよ」
「ごめん」
「知ってる」
封筒を開ける。
中には、観測塔から見える黄砂海の写真。
裏に一行。
《今年も同じ塔にいます》
受取人は写真を冷蔵庫へ貼った。
日付は、誕生日の翌日だった。
◇
店では、世達ちゃんが古い受付票を束ねていた。
「現在の運用と一致しない記録を、現役の受付から外します」
《ぱむちゃん希望》
《いつでも配送》
《代替不要》
《受領後も最後まで》
一枚ずつ、別の箱へ移る。
《旧運用記録》
秩序ちゃんが蓋を閉じる。
「消去ではありません。現在の規定と分けます」
ぱむ!
◇
閉店前。
厨房でベルが鳴った。
バーガーが一つ完成する。
普通の紙袋。
《配達先 角を二つ曲がった先》
ぱむちゃんが近づく。
札を見る。
半分になった配送表を見る。
紙袋を持つ。
ぱむ!
自動ドアが開いた。
ぱむちゃんは歩いて出ていった。
◇
世達ちゃんが《旧運用記録》の箱を持ち上げる。
底から、一枚の紙が落ちた。
古い不在票。
日付の欄は、店に残る配送記録より古い。
宛先は擦れて読めない。
世達ちゃんが拾う。
「……これは、現在の記録ではありませんね」
自動ドアの向こうでは、ぱむちゃんの足音が小さくなる。
世達ちゃんは不在票を箱へ戻さなかった。
机の上に置いた。




