第23話「届けます」
朝の配送表。
《代替不能 三》
一枚目。
《黄砂海 観測機器部品》
《地元便 翌朝》
《停止見込み 深夜》
二枚目。
《坂上団地 薬》
《薬局宅配 十五時》
《在庫 翌朝まで》
三枚目。
《移動診療所 冷却剤》
《必要時刻 十一時二十分》
《通常経路 翌日》
《代替調達 なし》
《遅延時 保存中の薬剤を使用不可》
時計は十時五十二分。
ぱむちゃんは三枚目を抜いた。
◇
至誠ちゃんが横に立つ。
「通常経路では間に合いません!」
ぱむ。
「私の経路でも十二時です!」
至誠ちゃんは指を上げなかった。
「行きますか!」
ぱむちゃんは時計を見る。
紙袋を取る。
ぱむ!
◇
十一時一分。
移動診療所。
車両のエンジンがかかっていた。
看護師が入口から走る。
「冷却剤!」
ぱむ!
袋を渡す。
保冷箱が開く。
薬剤が移される。
「これで出られる」
看護師が蓋を閉じる。
運転席から声。
「あと八分!」
「今行く!」
看護師は受領印を押して車へ戻った。
十一時九分。
診療所が出発する。
ぱむちゃんは手を振った。
ぱむ。
◇
十五時二十六分。
坂上団地。
昨日と同じ薬局宅配員が階段を上がった。
「今日は昨日より早いです」
老人が扉を開ける。
「六分だけ?」
「裏の坂、雨じゃなければもう少し速いです」
宅配票の裏には、昨日の手書き地図。
《パン屋裏 坂道》
老人が受領印を押す。
「明日はもっと早い?」
「明日は別の人です」
「そっか」
「地図は残します」
◇
黄砂海。
地元の運び手が夜間便へ箱を積んだ。
もう一人が風速計を見る。
「二十二時半なら抜ける」
「強風料金な」
「依頼主、了承済み」
二人で箱を固定する。
◇
閉店前。
黄砂海から通知。
《二十二時三十七分 受領》
観測機器の停止見込みは、二十三時十分だった。
その下に坂上団地。
《十五時二十六分 受領》
そして移動診療所。
《十一時一分 受領》
世達ちゃんが三枚とも《完了》へ移す。
ぱむちゃんは移動診療所の札だけ、自分の前へ引いた。
裏返す。
《ぱむ》
一文字書く。
昨日の坂上団地の札には、その字がない。
今日の坂上団地にもない。
黄砂海にもない。
ぱむちゃんは三枚を重ねなかった。
一枚ずつ、完了の束へ戻した。
厨房でベルが鳴った。
次の紙袋ができた。
ぱむちゃんは顔を上げた。




