↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
81/100

第20話「焼けば戻せます?」


 駅前集積所の扉を開ける。


 坂上団地の階段があった。


 パン屋の店員が薬の箱を持って入る。


「坂上、行ってきます」


 扉が閉じる。


 三分後。


 同じ扉が開いた。


 黄砂海の風が吹いた。


 店員が戻ってきた。


 薬の箱を抱えたまま。


「……坂上、どこですか」


「閉めろ」


 瑠志ちゃんが扉を押さえる。


 床へ白い印を置く。


「ここから先、荷物を入れるな」


 店員は薬を床へ置いた。


 自転車の鍵を握ったままだった。


 ◇


 午後便を止めた。


 駅前にはパン、薬、工場部品が残った。


 店主が店から走ってくる。


「うちの子は?」


「ここです」


 店員が手を上げる。


「坂上には行けてません」


「帰ってきたならいい」


「給料は?」


「出す」


「午後便、止まってますけど」


「出すって」


 店員は鍵を壁へ戻した。


 《午後》の札が揺れた。


 ◇


 配送表では、昨日まで別々だった線が重なっていた。


 駅前。


 坂上。


 黄砂海。


 病棟。


 出口のない商店街。


 世達ちゃんが二枚の受領記録を分けて置く。


「駅前から坂上は、昨日まで成立しています」


 もう一枚。


「今日、同じ入口から黄砂海へ出ています」


 ぱむ。


「同じ線として扱いません」


 ◇


 流焔ちゃんが配送表の端を持つ。


「これ、焼けば戻せます?」


 世達ちゃんが顔を上げる。


「紙だけなら再発行できます」


「紙じゃねえよ。変に繋がった方」


 流焔ちゃんは指先に火を出した。


「全部切って、必要なのだけ繋ぎ直す」


 ぱむちゃんは駅前の床を見る。


 薬の箱。


 パンの箱。


 工場部品。


 壁には自転車の鍵が二本。


《店主》


《午後》


 ぱむちゃんは配送表を流焔ちゃんの手から取った。


 ぱむ。


「焼かねえ?」


 ぱむ。


「了解」


 火が消えた。


 ◇


 悲醒ちゃんが扉の前に立つ。


「全部は戻しません。一つずつ閉じます」


 病棟の廊下が一瞬見える。


「これは駅前から切ります」


 瑠志ちゃんが白線を一本増やす。


「開いた先を確認するまで、人も荷物も越えるな」


 ◇


 夕方。


 坂上便だけ再開した。


 入口を開く。


 団地の階段。


 店員は動かない。


 店主が先に空箱を置く。


 扉を閉じる。


 もう一度開く。


 団地の階段。


「二回」


 店員が言う。


 瑠志ちゃんが首を振る。


「もう一回」


 三回目。


 同じ階段。


 店員が薬を持つ。


「行ってきます」


 ◇


 夜。


 薬は届いた。


 パンも届いた。


 工場部品は翌朝へ回った。


 黄砂海便は停止。


 病棟への線は切った。


 出口のない商店街は彷徨ちゃんの確認待ち。


 店員は一時間半の残業になった。


 店主が勤怠表へ書く。


《残業 九十分》


《午後便手当 支給》


 その横で、世達ちゃんが配送表へ印をつける。


《残す》


《切る》


《確認待ち》


 流焔ちゃんが表を見る。


「焦げてねえな」


 ぱむ!


 店員が自転車の鍵を二本、また壁へ掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。