第20話「焼けば戻せます?」
駅前集積所の扉を開ける。
坂上団地の階段があった。
パン屋の店員が薬の箱を持って入る。
「坂上、行ってきます」
扉が閉じる。
三分後。
同じ扉が開いた。
黄砂海の風が吹いた。
店員が戻ってきた。
薬の箱を抱えたまま。
「……坂上、どこですか」
「閉めろ」
瑠志ちゃんが扉を押さえる。
床へ白い印を置く。
「ここから先、荷物を入れるな」
店員は薬を床へ置いた。
自転車の鍵を握ったままだった。
◇
午後便を止めた。
駅前にはパン、薬、工場部品が残った。
店主が店から走ってくる。
「うちの子は?」
「ここです」
店員が手を上げる。
「坂上には行けてません」
「帰ってきたならいい」
「給料は?」
「出す」
「午後便、止まってますけど」
「出すって」
店員は鍵を壁へ戻した。
《午後》の札が揺れた。
◇
配送表では、昨日まで別々だった線が重なっていた。
駅前。
坂上。
黄砂海。
病棟。
出口のない商店街。
世達ちゃんが二枚の受領記録を分けて置く。
「駅前から坂上は、昨日まで成立しています」
もう一枚。
「今日、同じ入口から黄砂海へ出ています」
ぱむ。
「同じ線として扱いません」
◇
流焔ちゃんが配送表の端を持つ。
「これ、焼けば戻せます?」
世達ちゃんが顔を上げる。
「紙だけなら再発行できます」
「紙じゃねえよ。変に繋がった方」
流焔ちゃんは指先に火を出した。
「全部切って、必要なのだけ繋ぎ直す」
ぱむちゃんは駅前の床を見る。
薬の箱。
パンの箱。
工場部品。
壁には自転車の鍵が二本。
《店主》
《午後》
ぱむちゃんは配送表を流焔ちゃんの手から取った。
ぱむ。
「焼かねえ?」
ぱむ。
「了解」
火が消えた。
◇
悲醒ちゃんが扉の前に立つ。
「全部は戻しません。一つずつ閉じます」
病棟の廊下が一瞬見える。
「これは駅前から切ります」
瑠志ちゃんが白線を一本増やす。
「開いた先を確認するまで、人も荷物も越えるな」
◇
夕方。
坂上便だけ再開した。
入口を開く。
団地の階段。
店員は動かない。
店主が先に空箱を置く。
扉を閉じる。
もう一度開く。
団地の階段。
「二回」
店員が言う。
瑠志ちゃんが首を振る。
「もう一回」
三回目。
同じ階段。
店員が薬を持つ。
「行ってきます」
◇
夜。
薬は届いた。
パンも届いた。
工場部品は翌朝へ回った。
黄砂海便は停止。
病棟への線は切った。
出口のない商店街は彷徨ちゃんの確認待ち。
店員は一時間半の残業になった。
店主が勤怠表へ書く。
《残業 九十分》
《午後便手当 支給》
その横で、世達ちゃんが配送表へ印をつける。
《残す》
《切る》
《確認待ち》
流焔ちゃんが表を見る。
「焦げてねえな」
ぱむ!
店員が自転車の鍵を二本、また壁へ掛けた。




