第19話「分けて運びます」
駅前の空き店舗に、パン屋の自転車が二台並んだ。
片方には店主。
もう片方には、昨日までレジにいた店員。
「午後便、時給ついてますよね」
「ついてる」
「雨の日は?」
「……手当つける」
「先に言ってください」
店主が紙へ書き足した。
《雨天手当》
ぱむちゃんは入口から見ていた。
ぱむ!
◇
最初の荷物が通常便で駅前へ来た。
パン。
薬。
町工場の小箱。
店員が宛先ごとに分ける。
「坂上、二つ」
「工場は俺」
「店は?」
「昼まで閉める」
「売上落ちますよ」
「配送やるって決めたの俺だろ」
二台が別々に出た。
◇
坂上団地。
老人がくるみパンを受け取る。
「今日は早いね」
「駅前までまとめて来るようになったんです」
店員が薬の袋も出す。
「これは薬局からです」
「パン屋が薬も?」
「駅前からここまでだけ」
老人は二つを別々に受け取った。
「じゃあ、明日もあんた?」
「明日は店主です。私は店」
「そうか」
老人はパンを一個だけ棚へ置く。
もう一個を皿へ出した。
◇
町工場。
工場長が棚を空けていた。
「二個は置かない」
作業員が聞く。
「また一個だけ?」
「一個で止められる。もう一個分の金は駅前便に出す」
棚に予備が一個。
机には配送費の請求書。
工場長が両方を見る。
「前より高いな」
「ぱむちゃん無料でしたからね」
「無料を基準にした俺が悪い」
請求書へ判を押した。
◇
黄砂海側。
通常便の車が、風の弱い地点で止まる。
摩天ちゃんが先に道を見て戻った。
「ここから地元便で行ける。次の風まで二時間ある」
地元の運び手が箱を抱える。
「ぱむ便なら今着くんだろ?」
「着く」
「じゃあ、なんで俺が三時間かける」
摩天ちゃんは荷札を指した。
「次もお前が運べるようにするためだ」
運び手は箱を見る。
「次も俺?」
「嫌なら別の奴を探す」
「……料金、風の日は上げるぞ」
「依頼主と決めろ」
箱を抱え直す。
◇
一週間。
駅前の床に荷物の跡が増えた。
パン屋の店員は、午後便の日だけ昼食を三十分早めた。
工場長は配送費を工程原価へ入れた。
坂上の老人は、薬の到着時刻ではなく病院の予約日に合わせて注文するようになった。
黄砂海の運び手は二人になった。
雨の日、パン屋の店員の給与袋には本当に手当が入った。
◇
閉店前。
世達ちゃんが配送表を更新する。
《代替なし 三》
以前は十七あった。
ぱむちゃんが持てば今すぐ終わる荷物が、駅前に四つ残っている。
店主がシャッターを下ろしながら言った。
「明日の朝、持つよ」
ぱむちゃんは四つを見る。
手を出さない。
店員が自転車の鍵を二本、壁へ掛けた。
片方の札に《店主》。
もう片方に《午後》。
その下に、小さな紙。
《雨天手当あり》
ぱむちゃんはその紙を指で押さえた。
ぱむ!




