第17話「断れば自由?」
一日目。
ぱむちゃんは配送札を取らなかった。
朝、十七枚。
昼、二十三枚。
至誠ちゃんが近距離を持つ。
彷徨ちゃんが出口の読めない札を持つ。
通常便の箱も出ていく。
ぱむちゃんは厨房で紙袋を折った。
◇
夕方。
坂上団地の老人が薬を受け取る。
「今日は夕方なんだね」
「通常便です」
「分かった」
薬は切れていない。
老人は病院へ電話した。
「来週にします」
予約票の丸を自分で書き直した。
◇
町工場。
二号機が二時間止まった。
工場長は翌日の工程を一本消した。
「昨日も止まったな」
「予備、増やします?」
「一個のまま。止める方が安い」
消した工程の担当者が別の機械へ移る。
◇
二日目。
ぱむちゃんはまた取らなかった。
パン屋から電話。
『団地、今日の便ある?』
「通常便は明朝です」
『じゃあ明日で』
店主は売れ残ったパンを二つ袋へ入れた。
一つは翌朝の箱へ。
一つは値引き棚へ。
◇
病棟。
必要品を隣棟から借りた。
返却分が一箱足りない。
「明日の処置、午後へ動かせます」
「患者さんに確認して」
電話。
『午後なら娘が来られません』
看護師が止まる。
「では別の在庫を探します」
二十分後。
別階から一箱来た。
処置は動かなかった。
◇
三日目。
配送箱は十二枚だった。
少なくなっている。
ぱむちゃんが覗く。
札の脇に、別の紙が増えていた。
《受付停止 二》
《日程変更 四》
《代替調達 三》
残った三枚。
一枚は、時計店。
《明日で可》
一枚は、黄砂海。
《摩天ちゃん確認中》
最後。
《小型冷却剤》
《受取先 移動診療所》
《必要 本日十八時》
《通常経路 翌日》
《代替調達 なし》
ぱむちゃんは持つ。
置く。
厨房へ戻る。
◇
十六時四十分。
移動診療所から電話。
『冷却剤、まだ手配先ありませんか』
世達ちゃんが確認する。
「現在ありません」
『分かりました。十七時半まで待ちます』
電話が切れる。
ぱむちゃんは厨房から聞いていた。
◇
十七時十二分。
札はまだ同じ場所にある。
至誠ちゃんが戻ってきた。
札を見る。
「私では十八時に間に合いません!」
ぱむちゃんを見る。
指は上げない。
ぱむちゃんは札を持つ。
また置く。
配送口を離れる。
◇
十七時二十分。
ぱむちゃんが戻った。
紙袋を持っていた。
札を入れる。
ぱむ。
誰も渡していなかった。
◇
十七時二十一分。
移動診療所。
「届いた!」
看護師が箱を抱えて奥へ走る。
扉の向こうで、保冷容器が開く音。
ぱむちゃんは受付に残った。
壁の予定表。
十八時。
《訪問 河原》
線は消されていない。
ぱむちゃんは戻った。
◇
夜。
三日分の札が机に並ぶ。
届いたもの。
遅れたもの。
別の誰かが運んだもの。
取りやめたもの。
ぱむちゃんが運んだのは一枚だけ。
世達ちゃんは、その一枚を別の山にはしなかった。
全部、完了と変更の束へ入れる。
配送箱の横には、紙が一枚貼られた。
《ぱむちゃん対応を前提にしないでください》
下に小さく。
《必要な場合は、利用可能な経路を確認します》
ぱむちゃんは読む。
その横に、自分で一枚置いた。
《ぱむ いった》
三日前の札。
《ぱむ いかなかった》
二枚は、同じ完了の束へ入った。




